ドリーム小説

物心つく前からにいさんはぼくの特別だった。

ぼくや父さん、母さんとは違うかみの色や、キラキラ光るきん色の目がとてもキレイでだれとも違うんだと思ってた。

こわいもの見たさ、というか、にいさんの強さはこわさのうらがえしだ。

だけど、にいさんはぼくには優しくて、強くて、キレイで。

すごくすごく、あこがれた。


父さんが前に言っていた。

は人を屈服させ従わせる強さがあるけど、それを使わないアンバランスさが人を惹き付けてる』

たしかににいさんの周りにはたくさんの人がいるけど、にいさんはいつも一人だ。

にいさんの隣に立つのはぼくだけでいい。

にいさんが中学へ行ってからぼくといっしょの時間がへった。

おかげでものすごくつまらないよ。



読んでた本もおわりそうになった時、父さんが嬉しそうな顔してへやに入ってきた。

のん気そうな顔・・・。

どうせまたくだらないことに違いない。




「恭弥、散歩に行かないかい?」

「やだ」

「・・・本当に君は以外には興味がないんだね」




そんなあたり前なこと聞かないでくれる?

にいさんは特別で、そのほかはつまらないからだよ。

やっぱりくだらなかった、とまた本のページをめくると父さんが口を開いた。




「そう。残念だな。ついでにに会いに行こうかと思ってたんだけど」

「いく」




ぼくは本をパタンととじて、にげられないように父さんの手をつかんだ。

読みかけのページがわからなくなったけど気にしない。

どうせひまつぶしにまたはじめから読むのならいっしょだしね。

父さんはクスクスと笑ってげんかんにむかって歩きだした。

・・・・何かムカつく。

気にいらなかったので、父さんの足をふんでおいた。

ふみ返されそうになったから、もういちどふんでおいた。

やっぱりムカつく。




「風の噂で聞いたんだけどね、が学ラン着てるそうだよ」

「がくらん・・・」

「ようするにがこの町で一番強いっていう証かな。制服だけに並盛を征服したわけだね」




・・・ツッコんだら負けだ。

くだらないのは前から知ってたし、こんなのは放っておくべきだよ。

そんなことより、

にいさんが強いのはあたり前で絶対でわかりきってたことだけど、この町のだれもがそれをみとめた。

がくらんってすごいものなんだね。

はやくにいさんに会いたくなった。

やっぱりにいさんは特別だ。




「恭弥、目がキラキラしてるよ」

「うるさい」

「歩くのが速くなったけど、そんなにに会いたいのかい?困った子だね」




ケラケラとぼくを見て笑うから、父さんのひざをおもいっきりけっ飛ばした。

カクンとひざを曲げた父さんにまんぞくしてたら、何かにつまづいてこけそうになった。

よく見たら父さんの足だった。

ほんとうにムカつく。




「我が家の家訓。やられたらやり返す。お返しは二倍返しって言うのは当然の義務だよ」




・・・・・ホントにムカつく。








***








にいさんに会いに行く途中、ぼくたちは並盛商店街の前をとおった。

ガヤガヤといつも以上にうるさい。

何があったのかと見てみれば、いつの間にか父さんがクリーニング屋の人に声をかけてた。




「ひ、雲雀さん!!これは、今お宅の君が来てて、あちこちタイムセールしてるんだと・・・」

「へぇ。来てるんだ。相変わらず人気者だね」




父さんにおびえてる店の人にお礼を言ってぼくたちは先にすすんだ。

この先ににいさんがいる。

ますますうるさくなってきた時、父さんが言った。




「わぉ。、長ラン着てるよ」

「え?」




楽しそうな父さんを見てから、前を見るとそこににいさんがいた。

にいさんは長くてくろい服のすそをはためかせて、たくさんの人を割るように歩いていた。

ぼくはにいさんのその姿をわすれないと思う。

すごく、ものすごくカッコよかった。




「ぼくのくろ・・・」

「あぁ、恭弥とお揃いの色だったね」




前ににいさんはぼくにはくろが似合うと言った。

今のにいさんもくろ。

ぼくはうれしくなって思わず走り出したけど、すぐに止まることになる。




「そんな物で人を叩けば怪我をするだろう?」




にいさんは突然走り出してうるさい子供の間に入りこんで、そう言った。

泣き出した子をだきしめて、もう一人のあたまをなでるにいさんを見て顔がゆがむ。

やさしいにいさんの声はぼくにはむけられてなくて、あたたかい手はぼくにはさわってなくて。

気が付けばぼくはにいさんの足にしがみ付いていた。




にいさんの弟はぼくだけなのにっ」




言ってみてわかった。

ぼく、あの子たちにやいてるんだ。

それに気付いてはずかしくなってきた時に、おかしなかみをした男がにいさんに言った。




「先ほどの兄弟にさんを取られたと思ってるみたいですね」

「・・・きみ、だれ?かみころすよ」




何なの?

いきなり出てきてツゲグチなんて。

ぼくが男にそう言えばにいさんが、おどろいたように目をまたたいた。

たぶん、ぼくがにいさんのおしえてくれた言葉をつかったことがうれしかったんだと思う。

ぼくはにいさんをもっとよろこばそうと、カッコいいでしょ、と笑えば、

にいさんは照れたように顔をそむけてうなづいてくれた。

いつも、あんまり顔に出ないにいさんだから、何だかすごくうれしい。

すると急ににいさんがぼくをだき上げた。




「さっきの兄弟の喧嘩を見ていて、少し羨ましかっただけだ。俺と恭弥はあんな風に喧嘩出来ないからな」




けんかしたかったの?と聞けば、にいさんは困ったように笑った。

ぼくがにいさんとけんかなんて考えられないけど、にいさんはけんかがしたかったんだ。

そっか・・・。

にいさんがのぞむなら、ぼくがかなえてあげる。

うん。いいよ。けんかしよう。

とりあえず、帰ったらにいさんになぐりかかってみよう。


* ひとやすみ *
・やっぱり哀れな主人公。笑
 恭弥くんは兄さん至上主義なので喧嘩したい発言なんぞした日には本気で殴られます。
 咬み殺す発言をカッコいいなどと頷いた日にはここぞとばかりに連呼されます。笑
 そんな兄弟を生温い目で見守る大人げない父。彼が一番謎キャラです・・・。           (09/08/21)