ドリーム小説

桜舞い散る四月、雨とか風とかでなくなっちゃうかなーとか思ってた俺の予想を裏切り、

桜はしぶとく木にしがみ付いていた。

俺の並中入学を祝ってくれんのか、桜よ。

ありがとなー。

だけど、その前に体育館への道教えてくれ。

式典の前に職員室来いって言われてんのに、俺、迷子。

うぅ。漫画で見た光景にハシャギまくった俺が悪いんだけどさー、てかもう入学式始まってるし!

直接体育館に行かなきゃ、ってあのデカイのが体育館かー!!

俺は慌てて駆け寄って幾つかある扉の一番小さい奴を選んだ。

そこからなら目立たず入れるだろうし、裏口っぽいから先生と合流出来るかもしれない。

俺まだスピーチの原稿もらってないんだって!

小さい扉は思った以上に重くて固く、なかなか開いてくれない。

俺が渾身の力を込めて左右に取っ手を引っ張った瞬間。



ドカーン!!!



『・・・・え、えぇと、新入生代表、雲雀君、です』




・・・・・・・・やって、しまった。

体育館全員の目線が俺に突き刺さる。

マイク越しに先生が一番後ろの扉から入ってきた俺の名前を呼ぶ。

どうやらあの扉、使用禁止の壊れた扉だったらしい。

じゃなきゃこんな目立つ場所を背に生徒が並んでないって。

俺はどうしようもない焦りを感じながら、呼ばれた通りに保護者と生徒の花道の間を通りステージに上がる。

うわーん!!沈黙が痛いよー!!




「じゃ、準備してきたスピーチを読んでね!」

「は」




え?!俺、スピーチの原稿なんて書いてないぞ?!

だって、父さんが・・・・・・。

ん?父さん・・・?

お前か、親父ー!!

保護者席で嬉しそうにビデオ廻してる父さんに怒りの視線を向け、俺は先生の無言の圧力に負けてマイクの前に立つ。

うぅ!もうどうにでもなれ、だ!!!




「普通に楽しんで普通に学べ」




うん。普通が一番だよ。

そんで、ええと、それから・・・・、あぁ、もう!!




以下略!




だって、もう無理だってー!!

普通以上に言わなきゃいけないことなんてねーもん!!

ポカンと俺を見ている幾つもの目から逃げるように俺はその場を離れた。

何ていうか、早く入学式終われー!!!








***







俺はまたも学校で浮きまくってしまった。

廊下を歩くだけで突き刺さる視線が痛い。痛すぎる。

俺、また友達出来ないかも知れない・・・・。




「おい、お前」




振り返ればそこにはリーゼント。

何だ、この怖い人!!

いや、もしかしたら顔は怖いけどいい人かもしれない。

キャバッローネにはそんな奴ゴロゴロいたし、外見で判断するのはよくないよな、うん。




「俺に何か用か?」

「お前、派手に飛び込んできた挨拶の奴だよな」




やっぱ恥ずかしいくらいにド派手だったよなー、アレ。

認めたくないけど、俺は小さく頷いてリーゼント君を見た。




「お前と遊びたい奴がいるんだが、ダチになりたいんだとよ。付いて来いよ」




 ダ チ ! !

ダシじゃなくてダチ!友達!!

俺は勝手に歩き出したリーゼント君のあとを追いながら、心の中ではおめでとうの鐘を鳴らしていた。

リーゼント君!お前やっぱいい奴だったんだな!!

もう君と僕とは友達だよ!

ルンルン気分で辿り着いた先は例のあの文字。




「応接室・・・?」




遠慮なく入って行ったリーゼント君に俺はおずおずと付いていって、中にいた学ラン集団に目を瞬いた。

まさかこの人達、みんな風紀委員・・・・?

真ん中の豪勢な椅子には、プチリーゼントの男が座っていた。




「お前ら風紀委員なのか?」

「よく分かったな。俺達は学校の風紀を乱す奴を取り締まる風紀委員だ。知っての通り一番強い奴が委員長って訳だ」

「ふーん」




相変わらず変な集団だな、風紀委員。

だけどそれと俺との関係が全然わかんねェ。

リーゼント君は友達だけど、こいつらはどう見ても友達になりたいとかそんな感じじゃなくて、むしろこれは・・・。




「俺らの許可なく勝手にあんな入学式にされちゃ困る訳だ。よってお前に制裁を・・・」




やっぱり!!

俺は話の途中で気が付いて後ずさると、不運にもその足をカーペットの端に引っ掛けて転んだ。

でも大丈夫!!こけてもすぐ体勢を立て直す訓練だってしたんだ、俺は!!

床に手を着いて、それを軸に足を回転させるように定位置に戻せば・・・ってうわ!何か足に引っ掛けた!

よく見たらそれはリーゼント君で、俺が慌てて立ち上がったら覆い被さるようにこけてたリーゼント君を

下から掬い上げるように放り投げてしまった!!

うわー!リーゼント君は俺の並中初の友達なのに!!

吹っ飛んだリーゼント君の元へ行けば、彼の手には危ない事にナイフが!!

俺はこれ以上怪我しないようにそれを取り上げて、彼の顔の傷を見た。

うわー、やっぱ切れてるし、痛そう!




「草壁委員長!!!」

「は?」




堂々と座っていたあのプチリーゼントが、怪我をしたリーゼント君に心配そうに駆け寄った。

ん?何、お前が委員長じゃなかったの?!

てか、リーゼント君、草壁って言うの?!

どこかで聞いたような名前だとか思っていた俺を余所に、風紀委員達が心配そうにリーゼント君に近寄る。

とりあえず窮地を脱したみたいなので俺はリーゼント君に手を貸そうと差し出した。

とりあえず早く保健室に連れて行ってあげなきゃ。

迷子の時に保健室は見付けたから、道案内は任せろ!




「俺に付いて来い」




保健室に行こうぜと手を差し出したら、リーゼント君と他の風紀委員達が泣きそうな顔をして俺を見上げた。

え?何?どうしたのさ?!

リーゼント君は嬉しそうに俺の手を掴んでこう言った。




「どこまでも付いて行きます、委員長!!!」




・・・・・・・・・はい?

いやいや、付いてくるのは保健室まででいいよ!

てか委員長って、何でみんなしてそんなキラキラした目で俺を見るんだよー!


* ひとやすみ *
・入学早々しでかしてます。笑
 そして知らぬ間に並中トップの座に就く。
 草壁家の家族構成を激しく捏造しております。笑
 雲雀父はもうずっとあんなんだといいよ。笑          (09/08/08)