ドリーム小説

僕がを拾ってから2年が過ぎた。

公園のベンチで血塗れで倒れている子供を誰もが見て見ぬフリをして通り過ぎていく。

まぁ当然だろうね。

には強者のオーラが出ているから。

僕がに話しかけたのは本当に気まぐれだったし、僕なら手負いの猛獣を手懐けられる自信があった。

だけど実際その猛獣は瀕死の域まで衰弱していたらしい。

家族を失くし、他人に弱みを見せる所まで来ていて、ギリギリの状態だった。

こんな所で失くすには惜しいなと思った次の瞬間には、気が付けば息子に勧誘していた。

まぁ、そんな事で後悔するような僕ではないけれど、それが猛獣の策だったのなら僕達はまんまと掛かった訳だ。




の勉強を見たんだけどね、あの子大学レベルまで解いちゃったの!」

「そう。、強いし頭もいいんだね。僕の攻撃全部かわしちゃうからつまらないよ」

「あら。旦那さんの攻撃なんて受けたら大怪我しちゃうわよ」




こんな話を懲りずに毎日してるんだから僕達は世間で言う親馬鹿って奴なのだろう。

しかも、弟の恭弥もと会った時から何かを感じているようで、親の僕よりに懐いている。

人見知りというか、人嫌いの恭弥が、他人に関心を持ったのが不思議でならなかったけど、

には人を惹き付ける何かがあるから仕方のない事かもしれないね。




も並中生か。いいなぁ、僕ももう一度通いたいな」

「またそんな事言って・・・あら、恭弥どうしたの?」




恭弥が何だか面白い顔をして後ろに立っていた。

多分またを探してるんだろう。

案の定、キョトリと首を傾げて兄の居場所を聞くから答えてあげた。




なら部屋で制服合わせてるんじゃない?」

「せいふく・・・」

はねぇ、中学生になるから制服を着て学校に通うのよ」




恭弥はどこか不安そうな顔をして足早に部屋を出て行った。

が学校へ行くという事は恭弥との時間が減るという事だと賢い恭弥は感じ取ったのかもしれない。

うーん、何だか面白そうな事になってきた。

これは見守らないといけないよね。






***







は並中の制服を着て黙って部屋に立っていた。

やっぱりその制服より、学ランの方がいいよ。

恭弥は何も言わないを見上げて複雑そうな顔をしてる。




にいさん、それなに?」




そこでは初めて興味を持ったように、恭弥を見下ろした。

首を傾げている恭弥も何となくこれが諸悪の根源だと分かったのだと思う。

制服を物凄い眼で睨んでる。

やっぱり恭弥も学ランの方がいいと思うよね?




「並盛中の制服だ」




その答えを聞いて、恭弥はきゅっと口を噤んだ。

うーん、我が息子ながら、ショックを受けたような顔が一番可愛い。




にいさんにちゃ色はへん」




ふふ、拗ねてる拗ねてる。

多分、自分が並中に付いて行けず、置いていかれると思ったから意地悪のつもりで言ったんだろうな。

だけどが無言で制服を脱ぎ出したから、怒らせたと思ってオロオロし始めた。

泣きそうな顔を堪えて恭弥はのズボンを掴んだ。

あー、僕も交ざりたい。可愛いなぁ、息子達。




「・・・・うそ。にいさんは何でもにあうよ」




うん。は顔がいいから何でも似合っちゃうんだよね。

恭弥、僕には「だから嫌わないで」と言っているように聞こえるよ。

は全く表情を変えず、しゃがみ込んで恭弥の頭を撫でた。

分かりにくいけど、も恭弥の事気に入ってるんだよね。




「じゃあ俺に一番似合う色は何色だ?」




が恭弥に話し掛けた事で恭弥は嫌われてないと思ったみたいで、一瞬嬉しそうにして恥ずかしそうに目を逸らした。

嬉しいと思ったってバレてないと思ってる辺りが恭弥の可愛い所だよね。




「しろ」

「恭弥は黒だな」

「くろ・・・」

「俺が白で恭弥が黒なら2人でちょうどいい」




目をクリクリさせて驚いていた恭弥は、珍しくはにかむように小さく笑った。

よっぽどが「2人で」と言った事が嬉しかったんだね。

それを見て恭弥の頭を撫でるがもっと珍しく綺麗に微笑んだ。

あー、奥さんにもこれ見せてあげたい。

どこまで可愛いんだろうね、僕の息子達。







***






その夜、トイレに行こうと廊下を歩いていたら、恭弥がの部屋を覗いているのを見付けた。

こんな遅くに起きてるなんて、と思って声を掛けようとしたら、部屋の中からの声がした。




「・・・・ん、恭弥か?」

「あのね、にいさん・・・」

「何してる。早くこっち来い」




恭弥がおずおずと部屋に入ったのを見て、僕は何だか嬉しくなって僅かに開いてる部屋の戸を閉めてあげようとした。

その時に中から聞こえる恭弥の話声と小さな寝息に首を傾げた。

あれ・・・?

もしかして恭弥、が寝てるのに気付いてないの?




「今日ね、とおさんとかあさんがにいさんは強いって言ってた。ぼくも、ぼくもにいさんみたいに強くなれる?」




うーん。寝ている人間からはさすがに返事は返って来ないだろうけど、恭弥、君そんな事思ってたの。

恭弥はの布団に潜り込んで隣で寝ている兄を見上げている。

するとが何かをぼそぼそと呟いた。




「え?」

「お前が本当に強くあればお前は強くなれるし、相手は弱くなる。お前が弱くあればお前は弱くなるし、相手は強くなる」

「強くあれば強くなれる・・・」




え・・・・、寝言だよね・・・?

、君どんな夢見てるの・・・?しかも何だかカッコいいよ。




「にいさんはよくたたかう前に『止めておけ』って言ってるけど、あれカッコいいね。ぼくも何かないかな?」

「・・・・・咬み殺すぞ」

「え?かみころす?カッコいい?・・・そうかな」




恭弥、今のも多分寝言だよ。

それには別に頷いた訳じゃなくて、多分寝返り。

かみころすって噛み殺す、神殺す、咬み殺す、どれだろ・・・?

うわー、何か、カッコいいなぁ、それ。

嬉しそうににくっ付いて「かみころす、かみころす」って言いながら恭弥も寝てしまった。

寝ながらそんなクールな言葉を恭弥に教えるなんて、さすが僕の息子だね。


* ひとやすみ *
・主人公、ついに寝言で勘違いされる!笑
 寝惚けて恭弥を呼んだはいいけど、意識皆無。
 最強雲雀父も意外に親馬鹿。咬み殺すに喜んでどうする?!笑
 恭弥くんも兄さんには素直な様子。てか寝言に寝返りて・・・・。  (09/08/04)