ドリーム小説

俺13歳、恭弥3歳・・・・・くらい。

一体、恭弥はいくつなんだろーな。

まるで年齢詐称のアイドルのように、我が家のアイドルの年齢も不明だ。


俺が日本に来てもう2年が過ぎました。

まだ辛うじて生きてます。

この町で雲雀の名前が通用しない場所はないと知ったのはいつの事だったか。

優しい普通の家族と言うものは幻想なのだと思い知らされた2年だった。

「日本男児たる者、強く気高くなくちゃいけないよ」と、常日頃から言い続けた父さんは

持ち前の馬鹿力で隙あらば俺を絞め殺そうとしている。

ハグだよと言いながら目をギラギラさせて近寄ってくるの怖いから止めて欲しい。

大体、俺、日本男児じゃねェし。

躾に厳しい母さんはニコニコ笑いながら殺人調理器具を振り回す。

「あら蚊が飛んでる!」と言って瞬殺する技術が凄すぎてビビる。

てか母さん、それ、ハエ叩きじゃなくてフライ返しですから。

お、何か今俺の言い回し上手くなかった?

何ていうか、ここでの生活がキャバッローネでやっていた勉強会と同じくらいの難易度なんだよね・・・。

うわーん!さすが雲雀クオリティだな!!コンチクショー!!




にいさん、それなに?」




声を掛けられて振り返れば恭弥が首を傾げていた。

そうだった。俺試着してたんだった。




「並盛中の制服だ」




実は俺、今度並盛中に入学する。

しかも新入生代表でみんなの前で喋れって言われてたり。

絶対父さんの陰謀だとしか思えない。

嫌だと言ったら、返答に「やっぱり学ランの方がいいよね」と返ってきた。

そういう意味じゃねェ!!




にいさんにちゃ色はへん」




俺、ショック・・・ッ!!!

ツナとお揃いでコスプレ気分を楽しんでたのがいけなかったんですか・・・?!

恭弥の感想にブレザーをいそいそと脱ぐと、てとてと近付いて来た恭弥が俺のズボンをぎゅうっと握った。

え、何、何で泣きそうなのお前。




「・・・・うそ。にいさんは何でもにあうよ」




俯いてる恭弥の頭を撫でて、視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。

何かよく分かんないけど、今の恭弥すごく痛そうだ。

恭弥は俺を気に入ってくれてるけど、言葉が少ないから分かりにくい。

まぁ両親曰く、恭弥は俺の前では表情豊からしいけど。




「じゃあ俺に一番似合う色は何色だ?」




俯いてた顔が俺を見て、一瞬嬉しそうにしてすぐに眉根を寄せ視線を逸らす。

あーこれ、恭弥の照れた時の癖な。




「しろ」




白って漂白剤の白かぁ?!

ウッソだー!俺のどこに白が似合う要素があるんだ?!

頭ん中真っ白って意味なら分からんでもないんだけどさー。




「恭弥は黒だな」

「くろ・・・」

「俺が白で恭弥が黒なら2人でちょうどいい」




やっぱ恭弥は学ランのイメージだからな。

俺がそう言えば珍しく恭弥が大きな目をパチクリして驚いてる。

うーん。ディーノは太陽みたいで可愛かったけど、恭弥は花って感じの可愛さだな。

俺、お前が花背負って歩いてても何にも不思議に思わないと思う。

もう一度頭を撫でてやると恭弥が目を細めて小さく笑った。

あーもう!お前時々不意打ちでそんな風に笑うから、兄ちゃんが構いたくなるんだぞー?!

ぐりぐりと頭を撫でると恭弥は頬を染めて眉根を寄せ視線を逸らした。

ははは!照れてる照れてる。







***







その夜は満月で月明かりが眩しかった。

寝る時はこれを着なさいと母さんに渡された浴衣を着て布団に転がると、すぐに眠気がやってきた。

そして俺は夢の中で久しぶりにディーノに会った。




兄さん、久しぶりだな』




夢の中のディーノはなぜか俺よりもデカかった。

つまり原作時くらいに成長した大人ディーノの姿だった。




『随分とそっちの弟を可愛がってるな』

『拗ねてるのか、ディーノ』

『ものすごく』




苦笑しながらそう言ったディーノはもう本当に大人になっていて少し寂しかった。

何だよー、カッコよくなってるじゃんかー。

髪を混ぜるように頭を掻いたディーノは鷲色の瞳を揺るがせて俺を見た。




兄さん、俺・・・、強くなれると思うか?』




俺はこの目を知っている。

ディーノのこの目は不安で不安でどうしようもない時の目だ。

俺だって伊達にディーノの兄やってなかったんだぞ。

俺はディーノの左腕を覆う刺青をチラリと見てから、目の前の大きくなった弟を見る。

そんな立派な物ぶら下げて、俺の夢にまで出てきて何言ってんだろうな、コイツ。




『どうだろうな。強さは相手がいて初めて分かるものだ。

 お前が本当に強くあればお前は強くなれるし、相手は弱くなる。お前が弱くあればお前は弱くなるし、相手は強くなる』

『・・・・そっか。俺が強くありたいと思う心が大事ってことか』




相手が強けりゃ、俺弱い。これ当然じゃね?

えーと。そんな大した事言ったつもりはなかったんだけど、・・・・まぁいっか。




『やっぱ兄さんはすごいな』

『うん。すごい。さすが兄さんだ!すごいすごい!』

『すっげー!!』

『・・・・・咬み殺すぞ』




何度もスゴイスゴイ言うなよ、恥ずかしいだろーが!

思わず恭弥のセリフ取っちゃったよ。

てか出来る事なら恭弥には一生この言葉使って欲しくない。

だって、何か条件反射っていうか、怖いし。




『はは!兄さん、』

『ん?』

『会えてよかった』

『あぁ』

『 Arrivederci , fratello 』

『 ・・・Si、Arrivederci , Dino 』




ディーノは嬉しそうに笑っていた。

俺はその笑顔に心底安心した。

俺が最後に見たディーノの顔は、悲しそうに泣いていた顔だったから。

たとえ夢でもまたあの顔が見れて嬉しかった。




目が覚めて俺はいい夢を見たと見慣れた天井を眺めて、身体が重い事に気が付いた。

起き上がってどうしてこうなってるのか数分固まって、それから首を傾げた。

てか、何で俺の上で恭弥が寝てるの・・・・?


* ひとやすみ *
・ハエは英語でフライ。笑
 今回、出張大人ディーノさん。おそらく子ディノも同じ夢を見たと言う事はないと思います。
 あるとしてもただ大好きな兄さんが夢に出て来た、くらいでしょうね。
 Arrivederci は「またね」、fratello は「兄さん」だと思って下さいね。そしてなぜか恭弥くん。笑(09/08/04)