ドリーム小説
何でこんな事になったんだろう?
頬を流れる水滴は温かいものだったけど、それが雨水なのか、血なのか、涙なのか俺には分からなかった。
ただこれが自分の選んだ未来で、望む結果だったのだと漠然と思った。
そしてその代償がキャバッローネを捨てる事なのだと今更ながら気が付いた。
理解はした。
だけど、納得出来た訳じゃない。
あの後、煙幕を張って俺を連れ出してくれたのは、レディの所の執事だった。
またいつもと違うメイド服を纏い、大雨の中、俺を引き摺って車の後部座席に押し込んだ。
血塗れの銃剣は赤く染まり、おれの手に納まっている。
抜いてしまった。
だけど疲れ果てた思考は俺に何も考えさせてくれなかった。
***
―数時間前。
レディと俺でディーノを跡継ぎにしようと作戦を練った。
何か悪い事を起こせば、俺は候補から外されるという結論に至り、決死の思いで俺はレディの屋敷を出た。
うるさい心臓を落ち着かせようと必死だったから、いつの間にか怪しげな路地に入っていた事にも気付かなかった
「おいガキ!こんな所で何してる!」
「・・・この先に用がある」
何か変なのに出会ったー!!
明らかに裏の人であろうその人に通るだけでいいんで、と願いを込めてそう言ったら驚いた顔をされた。
あぁ!あそこに見える喫茶店の角さえ曲がれれば俺、大通り通って帰れるのに!
「お前、この先に何があるのか知ってるのか?」
「・・・アポロン」
「!!・・・おいボスを呼んで来い」
え?えぇ?!何でそうなるの?!
この先にあるのは喫茶店「アポロン」じゃん!!何も間違ってねーよな、俺?!
結果から言うと、
俺、間違ってました。
そして怪しげな奴等に取引相手と間違えられてます。
どうやら「アポロン」は合言葉だったらしい。
で、俺はと言うと、死にたくないから必死に取引相手のフリをしてる訳で!
「来るのが早いな。まぁいい。すでに手筈は整えてある。そっちもキャバッローネを占拠出来たようだしな」
「!!!!」
何だって?!
俺が屋敷を飛び出してから一体何が起こってるんだ?!
動揺をひた隠し、俺はぎこちなく首を縦に動かした。
「まさか電話越しの共犯者がお前みたいな奴だとは思ってなかったぜ」
電話でやり取りしていたと言っていたソイツは楽しそうに笑って、奥の部屋に俺を案内した。
足を踏み込んだ瞬間、聞いた事のある声に視線を向けるとそこには九代目が縛られていた。
「君!」と驚いた声を上げた九代目に俺は声を呑み込んで視線を外し、ようやく理解した。
つまりこれは共同誘拐で、裏切りを防ぐためにわざわざ相手の目標を誘拐して取引するつもりなのだ。
なら俺は、皆を助けるためにこんな所でしくじれない。
「首尾は上々のようだな」
俺が犯人になったつもりでそう言ったら九代目が信じられないという目で俺を見た。
う、裏切ってないからねー?!
九代目と父さんの両方を助けるためにはコレしかなかった。
うぅ。胃がキリキリキリキリするー・・・。
「悪いが、ボンゴレは頂いていくぞ」
「キャバッローネの占拠は裏が取れた。いいだろう、だが部下を付けさせてもらう。お前が裏切らないようにな」
「好きにしろ」
子供だと思って充分に舐め切ってくれている相手にホッとしながら、俺は乱暴に九代目を立たせた。
ごめんなさいー!あとで土下座して謝りますからー!
案内されるままに車に乗り込んで、奴等の部下とやらが運転席に乗り込んだ。
俺と九代目は後部座席に乗り込んで、運転席と後部座席を遮る防音壁を出した。
反対した運転手を丸め込んで、車は出発した。
「君、君は・・」
「本当ならここで九代目を開放したいんだが」
そう言った途端に驚いた九代目に俺は泣きたくなった。
全然信じられてねェし、俺。
ついでにボンゴレに連絡しとこ。
アイツらの場所教えて押さえてもらわないと俺達すぐにバレちゃう。
「構わないよ。ファミリーを助けたいんだね。元はと言えば私がウッカリしていたせいだ」
「出来れば俺がどんな態度をとっても気にしないで欲しい。どんな事をしてもだ」
「演技と言うことだね。なら私や君の父上を殴るぐらいした方がいいよ」
えぇー?!何言っちゃってんの?!
楽しそうに目を細めた九代目に俺は眉根を寄せて「必要があれば」と小さく答えた。
やっぱボンゴレのボスにもなると凄い人だ。
***
見慣れた屋敷には見慣れない奴等が張っていた。
バレないように運転してきた奴をまたも丸め込んでその場に残し、
俺は今度は今頃ボンゴレに捕獲されてるだろう奴等に成りすまして屋敷に入った。
九代目を連れてるから一発で通される。
ふと、途中にロマーリオを見付けて俺はロマーリオに殴り掛った。
目的は俺の手伝いをしてもらうため。
因縁の相手のフリをした俺を奴等が止めたが、ロマーリオはきちんとその意味を理解してくれた。
俺が時間を稼ぐ間に外の連中を抑えろ、と。
そして連れて行かれた先には父さんとディーノ。
乱暴されたのであろうその姿に怒りが沸々と湧く。
こいつ等、絶対ただじゃおかない!!!
* ひとやすみ *
・ようやく説明が出来ます。
何か悪事を働いて継承権を白紙に戻してしまおうと計画した訳ですが、いろいろ巻き込まれたようです。
いきなり意味不明で驚いた方すいません。
ここからはヒーローの本質に戻していきたいと思います。 (09/07/22)