ドリーム小説
ディーノには一体今何が起こってるのか全く理解出来なかった。
何もかも突然すぎた。
今朝、父が倒れたと話を聞き、兄のがまもなくボスを継ぐと盗み聞きし、
が青い顔でロマーリオを残して一人で出て行き、その直後ボンゴレ九世が誘拐された。
そして現在、ディーノとその父は縛られて部屋に転がされている。
突然、押し寄せてきた奴等に父はティモッテオの安否を考慮し、抵抗する事なく屋敷を明け渡したのだ。
屋敷にいる部下達もボスを押さえられ、閉じ込められている。
「お前達が用があるのは俺だろう?
九世は開放しろ!」
「ボンゴレは取引先の所だ。俺はボンゴレに用があるんだが、奴等はお前に用がある」
「・・・共犯者と取引か」
ニヤリと厭らしい顔で笑った犯人にディーノの父は悪態を吐いた。
ボンゴレとキャバッローネに恨みを持つ奴等が手を組み、互いに人質を交換して成り立つ同盟を結んでいるようだ。
父の様子にこれはすごくヤバイ状況なのだと理解したディーノは、この場に兄が居ない事に安堵した。
あれ以来、は屋敷に戻っていない。
跡を継ぐと言う話を聞き、が屋敷を出て行ってからすぐにキャバッローネは占拠されたのだ。
あとは取引だけだと雄弁に語る犯人の元にその手下が困った顔をして走り寄った。
「リーダー、取引相手が来ました。ボンゴレを連れているので間違いないはずなんですが、」
「何だ?」
「俺がガキだからだろう」
凛と部屋に聞こえた声に聞き覚えのあるディーノと父は目を見開いて、その顔を見ようと顔を上げた。
あの声を聞き間違えるはずがない。
そこに居たのはディーノの兄のだった。
「ッ!!」
「兄さん!!」
不快そうな目で二人に一瞥をくれたは酷く冷たい目をしていて、ディーノは見た事の無い兄の顔に凍りついた。
何で自分の兄が傷だらけのボンゴレと一緒にここに来たのだろう?
ディーノは困惑するままにを見上げるが、兄の金色は弟を映そうとしなかった。
何だか嫌な予感を感じていたのはディーノだけではなかったようで、父が代弁するように叫ぶ。
「!そこで何してる?!何故
九世[と一緒に・・・っ。まさか、お前ッ!」
う ら ぎ り 。
その言葉が脳裏にこびり付いて離れない。
何度も何度もを呼び続ける父の声に兄は怖いほどの殺気を向けた。
「少し黙ってくれないか、父さん」
痛いほどの威圧感にその場にいた全員が口を閉じた。
ハッとした犯人がを見て、ようやく声を絞り出した。
「おいおい。お前が仮に共犯者だとしても引渡し相手が息子だったんなら嵌められたと思うのが当然だろ?
お前が俺を泳がせ、捕まえようとしてる可能性の方がデカイからな。何せ噂に名高い殿だ」
「・・・俺は取引しに来たんだが」
「証拠は?」
まだ疑うような目で見る犯人に、は面倒臭そうに溜め息を吐いた。
そして急に連れて来たティモッテオを振り返り、派手に蹴り飛ばした。
のどこにそんな力があったのか派手に吹っ飛ばされた九代目に父が悲鳴のような声を上げる。
にもかかわらず、は懐から黒いピストルを取り出し、ボンゴレに向けた。
「俺にはお前にボンゴレを引き渡さず、ここで殺すという選択肢もあるんだが?」
「お前っ・・・、本当に鬼のようなガキだな」
一体、何が起こっているのだろう。
あの優しかった兄がボンゴレに銃を向けている。
は取引しないという選択肢と言ったが、それはつまり取引しなくても全てを手に入れる強さがあると言ったのだ。
あの冷たい金色が意味する所はおそらく家族を助けたいからではないのだろう。
ディーノはの強さの反面に隠れていたものに初めて気が付いて身を竦ませた。
「!!お前、今自分が何をしているのか分かってるのか?!」
縄が食い込むのも気にせず身を乗り出す父に視線を向けたは、クルリとボンゴレに背を向け、父の元へ向った。
見下ろすように金の視線を向けたは冷たく言い放つ。
「黙れと言ったはずだ」
ディーノは直前に何が起こるのか直感し「止めて!」と短く叫んだ。
しかし、は何も聞いていないかのように、足元の父を鋭く蹴り飛ばした。
容赦なく転がる父の腹に蹴りを数回入れたは持っていたピストルの先を下に向ける。
ディーノは殺気を撒き散らす本気の兄に向ってとにかく叫んだ。
制止を訴えて訴えて訴えた時、無情にもパンという渇いた音が部屋に響き、父の体から赤い液体が流れ出てきた。
しゃがれた声で布を引き裂いたように叫ぶディーノには背を向けた。
「兄さん!兄さん!何で何でだよ!!兄さぁん!!!」
「黙れ、このガキ!」
ガツンという音がして、が振り返ると犯人にピストルのグリップで殴られ倒れるディーノがいた。
滲む目に映ったが目を見開いている気がしたが、薄れる意識の中何度も兄を呼びながらディーノの意識は闇へ落ちた。
ブワリとどす黒いオーラに部屋が包まれた時、部屋に駆け込んできた誰かが叫んだ。
それからは酷い悪夢。
***
匿名の電話で誘拐犯を捕獲し、遅馳せながらキャバッローネに突入してきた家光は、
屋敷内の静かさに首を捻りながら確かめるように進む。
屋敷内の捜索は部下に任せ、犯人がいるであろう奥の部屋に家光は数人の部下を連れて雪崩れ込んだ。
そしてそこで見たものは惨劇。
そこかしこに点々と飛び散る赤い液体。
鼻を突くような錆び付いた臭いがこの場で起こった事を教える。
血溜りに倒れる九代目、キャバッローネ、ディーノ、入り口付近で気絶しているロマーリオ。
何より、異質だったのは血塗れで立ち尽くすの姿だった。
この場に不釣合いなほどに真っ白な銃剣を力なく握り締め、はそこに立っていた。
「ま、さか・・・これはお前が・・・」
家光の目に怒りが燈った時、急に立ち込めた煙幕に目を顰めた直後、の姿は消えていた。
すぐさまボンゴレにもたらされた命令はを捕まえる事。万が一の場合はその生死は問わず。
一体、ここで何があったのか、その問いに答える者はここにはいない。
ただ一つ言える事はこの惨状を作り出したのがだということだけだった。
* ひとやすみ *
・あぁ!主人公何しちゃってんの!!!
とんでもない事件に私も身を切る思いです・・・。
次は主人公視点で真実を。 (09/07/20)