ドリーム小説

ゴロゴロと不穏な音が空いっぱいに鳴り響く。

今にも泣き出しそうな空模様の中、男は必死に足を動かした。

見慣れた屋敷に飛び込んで、最奥の彼の部屋をひたすら目指す。

慣れ親しんだはずの屋敷の中はピリピリとした落ち着かない雰囲気に満たされ、混乱していた。

男の存在に気付き、大勢が声を掛けてくるが今はそれ所じゃない。

礼儀も常識もかなぐり捨てて男は奥の扉を開け放った。




「九代目が攫われたとは一体、どういうことだ!!」

「家光!お前ジャッポーネに行ったんじゃ・・・」

「ボンゴレの危機に動くのが俺の仕事だ」




家光は投げ捨てるようにそう言って部屋にいた幹部達を見渡した。

・・・・数人が足りない。




「ボンゴレ内部が機能していない。中枢が麻痺してるのは何故だ?雁首揃えて何暢気に茶啜ってんだお前ら」

「ジャン達が奇襲を受けて重症で動くに動けない。俺達では怒り狂ってるファミリーを抑えるのが精一杯だ」

「情報をくれ、ここは俺が仕切る」

「あぁ?ふざけんな、テメェは外で働け、若獅子」

「!ザンザス・・・」




クルリと回った九代目の椅子にはザンザスが座り込んでいた。

かつて若獅子と呼ばれた家光はどうしてここにザンザスがいるのだと、幹部達に目を走らせる。

ザンザスは鼻で笑ってその問いに答えるように言い捨てた。




「そいつらが役に立たねぇから俺が出たまでだ。テメェんトコはボンゴレの危機を救うための機関だろうが。

 ならさっさと犯人ぶっ殺してジジイを取り戻せ。出来ねェとは言わせねェぞ、家光」

「・・・・当たり前だ。誘拐された九代目は必ず俺が連れ戻す」

「行け」




前に会った時よりも随分と威圧感のあるザンザスに家光が頷いた時だった。

突然飛び込んできた部下が慌てて声を上げた。




「失礼します!九代目を攫った犯人からの要求書が届きました。内容はキャバッローネとの同盟破棄!」

「キャバッローネへの怨恨か。だがそんな要求呑めるか!大体あれは死炎印の盟約だ。九代目にしか破棄出来ない」

「ハッ。くだらねェ」




そこにまた違う部下が飛び込んできたが、どうも顔色が悪い。

部屋に居た者が視線を向けると喚くように叫んだ。




「たった今、キャバッローネが奇襲に遭い、占拠されたと報告がありました・・・!」

「何だと?!」

「ボスの死亡は確認されておりませんが、ご子息も一緒に掴まったようで」

が?」

「いえ、それが・・・・、は事件前から行方が分かっていません」




ボンゴレ側はどんどん不利な状況に追い込まれていた。

同盟も何も、ドン・キャバッローネが奴等の手中ならば、誘拐された九代目を人質にする意味が殆んどなくなった。

一刻の猶予もない状況に家光は、ローテーブルを蹴り飛ばした。







***






油断した。

おそらくボンゴレは自分を探して大騒動になっているだろう。

ティモッテオは小さく吐いた溜め息で埃が舞って、眉根を寄せる。

どこかの廃ビルの一室であろうここは暗くて無駄に広い。

手を後ろで縛られ埃まみれの床に転がされてるのは気分がいいものではないなと思いながら犯人グループを盗み見る。

死ぬ気の炎を使えば簡単にここから抜け出せるのだが、先ほどよからぬ話を耳にしてしまった。

キャバッローネが占拠された。

確かにここを仕切っているボスが無線機でそう言っていたのだ。

ティモッテオは面倒なことになったと自分の間抜けさを嘆いた。

あのキャバッローネの事だ。

責任を感じ、ティモッテオの事を考えて、抵抗もせず占拠されたに違いない。

五千ものマフィアをこの犯人達が倒したとは到底思えなかった。

ここを仕切るリーダーらしき人物が先ほど部屋を出て行ってから数分が経つ。

屈強そうな見張りが数人いる中、ティモッテオは仲間が状況を変えてくれるのを信じ、息を殺して時を待っていた。




「まさか電話越しの共犯者がお前みたいな奴だとは思ってなかったぜ」




大きな笑い声と共に部屋に戻ってきたリーダーに皆の視線が向く。

ティモッテオを誘拐した奴等はここにいる数十人だが、キャバッローネを抑えた共犯者がいるはずだった。

そして話を聞いてる内に浮かび上がってきたのは、ティモッテオは取引材料に共犯者に引き渡され、

代わりにキャバッローネをこいつらに引き渡すという単純なくせに綿密に練られた誘拐計画だった。

軽い足音が聞こえ、部屋に姿を現した共犯者だという人物を見てティモッテオは目を見開いた。




君!」




そこに現れたのは間違いなくあので、この場に相応しくない彼にただティモッテオは驚く。

は金色の冷たい目で床に横たわるティモッテオを見下ろして、すぐに視線を逸らした。

ティモッテオは有り得ないと否定するように首を振るが、消しきれない不安をぶつけるように目の前の少年を見る。

まさか、彼は自分のファミリーを・・・?

ティモッテオの動揺にも気付かず、は手頃な瓦礫に腰を掛けて淡々とリーダーを見て言い放った。




「首尾は上々のようだな」




驚愕で目を見開く。

のその一言が全てを物語っていた。


* ひとやすみ *
 ・この急展開は何、てか何がどうなってるの?って方ばかりだと思います。
  ・・・・思いますが、少々お付き合いください!!
  合言葉は「二次創作だから!」でお願いします笑             (09/07/20)