ドリーム小説
最近の兄さんはどこか様子がおかしい。
兄さんの表情はあまりハッキリと変わる事がないから、誰も気が付かないみたいだけどずっと一緒だった俺には分かる。
前にも眠れないほど悩んでいた事があったのに、兄さんは誰にもそういう話はしない。
こういう時、兄さんが悩みを話せる相手が居ればいいのにと思う。
出来ればそれが俺だったら嬉しいな。
そんな事を思って歩いていると、噂の兄さんがそこに立っていた。
どうやらまた仕事らしい。
最近、仕事ばっかしで俺と遊んでくれないから寂しい。
今日もまた断られるだろうケド、俺はいつものように一緒に行きたいと言った。
「分かった。ディーノ、お前のキャバッローネの初任務だ」
え?!
すっごく驚いたけど、俺はいつものように優しく頭を撫でてくれる兄さんに大きな声で「任せとけ!」と返した。
ていうか、兄さん、似合ってるけど、その軍手は何・・・?
任せろーって言ったけど、言ったけどさ。
これって・・・・。
「町の清掃活動だ」
見ればわかるよ。
だけど、何だか兄さんとゴミ袋って不釣合いすぎて受け付けない。
それに軍手が似合うって言われても褒められた気がしないし。
何で兄さんや俺がこんなダサいことしなきゃならねぇんだ?!
「何でダサいんだ?」
「・・・え?」
いつの間にか口に出して呟いていたらしく、兄さんが眉間に皺を寄せて聞いてくる。
お、こったのかなぁ、兄さん・・・。
どんどん不安になってきて俯いて理由を言う俺の声が消えそうになる。
「だってマフィアでこんな事やってる奴なんていないし、」
「それは違うぞ、ディーノ」
思わず顔を上げると兄さんはいつものあの顔で薄く笑っていた。
俺は目を瞬いて黙って続きを聞く。
「誰もやってないからダサいんじゃなくて、誰もやってないからカッコいいんだ」
「え?」
「俺達には町を守り、地域をよくする義務がある。住民達がいるからこそキャバッローネはやってこれたんだ。
仲間や住民を大切に出来ない奴等とは器が違うんだと、見せつけてやればいい」
そんな事考えたこともなかった。
誰もやらないからダサいんじゃなくて、誰もやれないからカッコいいってこと?
器の違いを見せつける・・・・。
兄さんはいつもそんな深い事を考えているのだろうか。
「仲間や周囲の人を大切に出来ない奴はクズだ」
口の端を吊り上げてそう言った兄さんは心底カッコよかった。
そっか・・・。
兄さんの分け隔てない優しさはここから来てるのか。
それを実現している兄さんはやっぱりすごい!
「兄さんはホントカッコいいな」
「は?」
「分かった!俺も掃除する!そんで兄さんみたいになるから!」
「「「「 俺らもしますぜ、様! 」」」」
俺と同じように兄さんの言葉を受け止めたファミリー達と一緒に俺はゴミ拾いを頑張った。
ロマーリオはこれを知っていたからずっと笑ってたのか。
本人に聞いてみると苦笑いされた。
「実は前に俺も坊ちゃんに同じ事を言われたのさ。一回りも歳の離れた子供にだぜ?」
「兄さんはすごいよな!俺もああなりたい」
「ディーノ坊ちゃんならなれるぜ。何せ坊ちゃんがいつもそう言ってるからな」
ロマーリオのその言葉に俺はビックリした。
片目を瞑って俺に言ったその言葉は俺への激励で。
何だかすっごく嬉しくて兄さんに飛び付きたくなった。
「あれ?兄さんは?」
「あぁ。坊ちゃんならまた・・・・ほら、あそこだ」
「
え゙」
悲しいかな見慣れた光景に俺は固まった。
あー!また兄さん、女の人を誑かしてるー!!
ロマーリオの「いい男には女が寄ってくるもんさ」と言う言葉を耳にしながら俺は兄さんの元へ走った。
前言撤回!やっぱちょっとは分け隔てて!!
「兄さーん!何やってんの?!」
「貰った」
「貰った、じゃないだろ!ホントに兄さんはどこでも・・・」
両手いっぱいの貢物を掲げた兄さんに自然と眉が寄る。
ていうか、いつも仕事して帰ってくる時、何かいっぱい物持って帰って来るのはこういうことか!!
全く、ちょっとは控えて欲しい。
兄さんがカッコいいのは分かるけど、その内兄さん女に騙されそうなんだもん。
いつものように飄々としてるけど、俺の説教もホントに聞こえてるんだかどうか。
あ、目逸らした・・・!
「
兄さん、聞いてんの?!」
* ひとやすみ *
・課外活動弟視点でした。
他人から見た主人公像はとんでもない聖人、超人に仕立て上げられてます。笑
こうしてキャバッローネの根本が出来ていきます。 (09/07/17)