ドリーム小説

俺は武器を手に入れた。

これで俺も立派なマフィアだぜ!!

・・・・それが嫌だったから武器は持ちたくなかったんだよー。


俺は銃火器を扱うのがめちゃくちゃ下手だ。

撃てばとんでもない際処に当たるし、何回撃っても穴は一つ。

おそらくこの銃を抜いたら、最後な気がする。


怖いのはマフィアの仲間入りする事じゃない。

だってまぁ、俺、すでにマフィアだし、マフィアに育てらちゃったし・・・?


本当に怖いのは、俺が人の命を奪うことを怖いと思わなくなってる事だ。

そういう教育を必死に受けちゃったのが悪いんだろうけど、俺は自分の命や大切な人を守るためなら

きっと躊躇わず引き金を引く。

守るために戦うって言えば聞こえはいいけど、結局やることは同じ。

マフィアに綺麗事なんて、他人からすれば戯言だろ。


深く溜め息を吐いた俺は白い銃剣に目をやる。

うぅ。こいつ、魅惑のボディで「私を使って」と俺を誘惑すんだよなー・・・。

手にしっくりくるし、重さもそこまで気にならない。

何より近未来型でハイスペックな所がおれを惹き付けてやまないんだよ。


俺はもう一つ溜め息を吐いて、その白を懐に入れた。

ようは俺次第。

護身用にしても銃を使わず剣を使えばいいんだし、銃口が火を噴いた時は俺が弱かったってことだ。

あーあ。

何で俺、一人で一世一代の決心しちゃってんだろ?






***






さて、今日はキャバッローネ課外活動の日であります。

父さんに押し付けられた仕事だけど、俺はこの仕事が一番好きで積極的に引き受けている。

ロマーリオから受け取った白いグローブを嵌めて、準備は万端。

そこにディーノが走ってやってきた。




兄さん、どこ行くの?」

坊ちゃんは仕事だぜ、ディーノ坊ちゃん」

「俺も行く!」




出たよ。ディーノの「俺も行く」発言。

いつも俺はこれに困ってしまうんだけど、今日の仕事ならむしろ好都合かもしれない。

俺はロマーリオに視線で合図して、ディーノの頭を撫でた。




「分かった。ディーノ、お前のキャバッローネの初任務だ」

「任せとけ!」




目を輝かせてるディーノに俺はうんうんと頷いて決戦に備える。

今日こそ憎きアイツらを一掃してやるぜ!







***







「ってこれは何なの、兄さん」

「何って、町の清掃活動だ




ウチの若い奴等を連れて俺達は地元に繰り出しました。

見出しは「町を穢すマフィアとポイ捨て成敗するぜ☆俺らは町の掃除屋キャバッローネファミリー」ってとこか?

おー。やっぱディーノは何でも似合うなー。軍手とゴミばさみが眩しいぜ!




「ディーノ坊ちゃん、似合ってますぜ!」

「あぁ」

「・・・全然嬉しくない」




ディーノが頬を膨らませて拗ねてる。

何でだー?何でも似合うのはいい男の証なのに。

もしかして箒とちり取りの方がよかったとか?




「何でこんなダサい事やってんだよ。俺達マフィアなのに」




そう呟いたディーノに俺は衝撃を受けた。

あの住民に優しい跳ね馬の口からまさかそんな言葉を聞こうとは・・・!

てか、他の若い奴等もディーノに賛同するようにぶーたれている。

そういや、初めてこの仕事をやった時もロマーリオが同じような事言ってたなー。




「何でダサいんだ?」

「・・・え?だってマフィアでこんな事やってる奴なんていないし、」




俺がそう聞くとディーノが俯いて答えるが末尾が小さくなっていく。

ようするにアレか人の目が気になるってやつだな。




「それは違うぞ、ディーノ。誰もやってないからダサいんじゃなくて、誰もやってないからカッコいいんだ」

「え?」

「俺達には町を守り、地域をよくする義務がある。住民達がいるからこそキャバッローネはやってこれたんだ。

 仲間や住民を大切に出来ない奴等とは器が違うんだと、見せつけてやればいい」

「器・・・」

「あぁ。仲間や周囲の人を大切に出来ない奴はクズだ」




そんな奴は俺が丸めてゴミ箱ポイッだ。

って言うのは後付のこじ付けなんですけどー、ゴミ拾いしてるマフィアがいたら少しは怖くなくなるじゃん?

ドンパチばっかやってるマフィアにディーノがなったら、俺が怖いだろ!

俺、怖いことするより、断然こっちの方が好きだもん。




兄さんはホントカッコいいな」

「は?」

「分かった!俺も掃除する!そんで兄さんみたいになるから!」

「「「「 俺らもしますぜ、様! 」」」」




えぇ?!な、なんなの、みんな?!

これもあの時のロマーリオと同じ反応だ。

何でか嬉しそうに頷いてるロマーリオはやっぱ意味分かんねェし、てか、俺みたいなのにならない方がいいって!

急にやる気を出し始めたファミリーに首を傾げて、俺もゴミを拾う。




「あぁ、様!今日も精が出ますね。ウチのパンでよければ持って行って下さいな」

「いつも悪いな。ここのパンが一番好きなんだ」

「まぁ!」




マジ美味いんだよここのパン!

しかも何でかいつも掃除してるとくれるんだよね、ここのおばちゃん。

すっげーいい人!




「あら様!この花でよければお屋敷に飾ってあげて下さい!」

「私達もお手伝いしますわ、様!」

「悪いな」

「「「 いいえー!! 」」」




いつも俺達を手伝ってくれる町の人達が来てくれた。

何かいつも差し入れくれるし、ホントこの町の人達はいい人ばかりだ。

ディーノ、お前、恩返ししないと罰が当たるぞ?




「兄さーん!何やってんの?!」

「貰った」

「貰った、じゃないだろ!ホントに兄さんはどこでも・・・」




え、何、俺が悪いの?

そんなに物欲しそうな顔して歩いてたのか、俺。

で、何で怒られてんだろ・・・。




兄さん、聞いてんの?!




あ。すいません。


* ひとやすみ *
 ・弟には頭が上がらない主人公。
  この兄弟、なぜだかめちゃくちゃ軍手が似合いそう・・・。笑
  あの顔で「貰った」って貢物ディーノに掲げたと思うと少し笑えます。  (09/07/13)