ドリーム小説

私はいわゆるトリッパーって奴だ。

リボーンの世界で何世界目だったかなんて覚えてない。

トリップしたり、転生したり、若返ったり、もはや人間かどうかも怪しい所だ。

まだ私が普通の女の子だった頃から、予知能力という物を身に着けていた。

ここではそれと原作知識をフルに活用して予言師なんて事をして生きている。


私と彼の人生が交わったのは、ちょっと原作キャラに会いたいなーと欲を出した時だった。

古くからの友人がまさかキャバッローネのボスと結婚するとは思わなかったが、

おかげでディーノに会えると喜んで訪問した時にと出会った。


一つ言っておく。

私は自分の未来に関する事、同じように異世界からのトリッパーなどの過去は一切見る事が出来ない。

だからに会うまで、彼の存在もその未来も何も見えなかった。

出会って初めて急激に流れ込んできたの未来、そして何も見えない過去。

そこで私は彼が異世界人だと知ったのだ。


そこからは大変だった。

が神童と言われるのは転生だったら有り得ない事じゃない。

だけど、そのオーラと格は本物だった。

今までで一番しんどい一週間だったぞ、あれは。

悪夢に魘され、精神を蝕むあの歪みのプレッシャーの中、は七日も耐え抜いた。

私は死にそうだったわよ・・・。

ようやく解放された時に少し文句を言えば、意外にもは謝った。

そのオーラと地位に踏ん反り返って偉そうにしてるのかと思いきや、勘違いされやすいけどいい子なのかもしれない。

見た目通りに中身もいい子なんて初めて見たわ。










「何でそんな子に限って過酷な未来なのかしら」




突如、ビジョンとして頭に叩き込まれたの未来に私は首を振った。

おそらく才能あるあの子ならば乗り越えられるだろうが、一つ間違えば全て終わる。

大きな溜め息を吐いた所にノックが聞こえ、執事が入ってきた。




「主人、これが先日の報酬に送られてまいりました」

「何なのそれ」

「バヨネットです」




パカリと開いた箱の中の白い銃剣を見て、一瞬にしてがそれを手にしているのが視えた。

ここまで事件に巻き込まれる強運の持ち主に同情を禁じ得ない。




「また、あんたなの・・・」

「主人?」

「仕方ないわね。に会いに行くわよ」

「了解しました」




仕方ないから、私が手助けしてあげようじゃない。







***







ちょーっと茶目っ気出して、誘拐っぽく悪戯してみただけなのにには冗談が通じなかったようだ。

驚きもビビリもしないは淡々とルームミラーを睨み付けて、あっさり運転手に化けていた私に声を掛けた。




「俺に、何のようだ・・・?」

「ちょっとした挨拶じゃない。怒らないでよ、




怪訝そうに眉根を寄せたが言いたい事は予知しなくても大体分かる。




「普通に日本人して赤い服を着なければ、それが逆に変装になるのよ。

 しかし、つまんないわね。あんた全然驚いてくれないんだもの」

「・・・・すごく驚いてる」

「だから真顔で何言ってんのよ」




冷静な人に淡々と驚いてる、なんて言われて喜ぶ人間がどこにいるのよ。

少しくらい表情変えてくれてもいいじゃない。

執事をに紹介して、不満をぶつけるようにアクセルを踏み込んだ。

・・・ちくわに撃たれてしまえばよかったのに。










本拠地に着いた時、やっぱりは飄々としていたけど、疑問の視線を向けてきた。

上のあの屋敷はカモフラージュで、地下のここが私の家なのだ。

もちろん予言師用の家は別にある。




「私が居なくなったら、ここも何もかも全部あんたにあげるわ」

「笑えない冗談だ」

「無理にでも笑いなさい」




ケラケラと笑う私には何だかおかしな顔をしていた。

私、本気で言ったんだけど分かってるのかしら、この子?

それから部屋に入って、本題の箱をに押しやる。




「・・・・銃剣[バヨネット]か?」




さすがと言われるだけはあるわね。

一目で分かるとはやっぱり戦闘能力も優れているのだろう。

箱を開けたはしげしげとそれを眺めて眉間に険しい山を作った。

それもそのはず、その銃剣はいわく付きの高性能違法カスタマイズ品だ。

それでもその銃剣の未来はと共にある。




「こんな物、受け取れない」




・・・・・やっぱり、か。

才能や器を持ちながら、は大きすぎる力を振るうのを極端に避けている。

これから先の未来、これを持つことはにとって嫌な道を選び取る事になるだろう。

だけど、これを持たない未来を選べば、はきっとすごく後悔する。

同郷の仲間としては、そんなを見たくはないのだ。




「お願いだからこれを持って行って、

「俺、は・・・・」




辛い選択をさせているのは分かっているけど、私は黙って彼の手にその箱を押し付けた。

はどこか濁った金色の瞳を手の中の物に向けて、屋敷をあとにした。

執事とを乗せた車が屋敷を出て行くのを見送りながら、予知しただけではどうにもならない未来に祈る。




「どうか、の行きたい道を選べますように」


* ひとやすみ *
 ・他人視点で主人公のセリフを追うと別人になるのが不思議。笑
  お姉さん口悪いけど、中身は案外いい人。
  言葉通りならこの先また主人公に災難が降りかかるのか?        (09/07/11)