ドリーム小説

「暴れないで下さい。殴って黙らせなければならなくなるので」




銃突きつけてんのに殴るって言うのも凄い話だよな、とか何とか逃避したくなる俺の気持ち分かるよね?

人生、波乱万丈だったけれど、こんなにスリリングな事が今まであっただろうか。

黒塗りの車の中には俺と誘拐犯、そして運転手の三人しかいなかった。

そして俺は顔を隠しもしない誘拐犯をチラリと横目で見て度肝を抜いた。

女の人!!っていうかなぜメイド服ー?!メガネ装備で萌キャラばっちりじゃん!!!

って、ちっがーう!!!



グルグルしている俺の脳ミソを冷静にさせたのは、ハンカチに隠され脇腹に突きつけられている銃だった。

落ち着け、考えろ、頭を使え。

俺を誘拐したって事は何か目的があるはずだ。

何だか生臭いのを気にしながら、俺は前を向いたまま恐々と声を漏らした。




「俺に、何のようだ・・・?」

「ちょっとした挨拶じゃない。怒らないでよ、




そう答えたのは意外にも運転手で、振り返ったその人は・・・。

うえぇぇ?!レディだよね?!何してんのアンタそこでー?!

驚きすぎて声も出なかった。

てか、何で運転してんの?!それよりあの赤い変装しなくていいの?!今、超素顔ですけど?!




「普通に日本人して赤い服を着なければ、それが逆に変装になるのよ。

 しかし、つまんないわね。あんた全然驚いてくれないんだもの」

「・・・・すごく驚いてる」

「だから真顔で何言ってんのよ」




吐き捨てるようにレディは言ったけどさ、俺、目ん玉飛び出るくらい驚いてるんだってば。

こういう時、何で誰も俺の言う事信じてくれないんだろ・・・?


とりあえず命の危険性は無いようで、息を吐いて隣のメイド服の彼女を見る。

すると突きつけられていた銃が離され、掛けられていたハンカチが剥ぎ取られた。

えぇー?!そんなのありですか?!




「ちくわ、か・・・・?」

「はい。銃に見せかけてみました」




俺、ちくわで脅されてたの・・・?

・・・・・なるほどー、通りで生臭いと思ったー。




「それ、ウチの執事。趣味はメイド服とちくわ」




趣味ちくわって何ですかー?!

うん。なんて言うか、もうこの人については、深く考えない事にした。

俺、まだ普通の人間でいたいもん・・・。






***






辿り着いた先はお屋敷。

大きいっちゃ大きいが、普通と言えば普通な感じだ。

車を止めて降り、隠し扉からエレベーターに乗って地下へ。

チンと小さな音を聞いて扉が開いた瞬間、俺は目を見開いた。

何だここは、近未来極秘施設か何かか?




「ここが私の本拠地よ。と私、執事の三人しか知らないけどね」

「そんな大事な所を何で俺に?」

「・・・本当の意味であんたが私の仲間だからよ」




ニッと笑ったレディが歩き出して、無意識に付いて行く。

何だか物寂しいセリフの意味を考えていると、レディが誤魔化すように笑う。




「私が居なくなったら、ここも何もかも全部あんたにあげるわ」

「笑えない冗談だ」

「無理にでも笑いなさい」




入った部屋は先程の情報施設のような場所ではなく、普通の部屋だった。

赤い絨毯が敷き詰められた豪奢な部屋のソファに向かい合わせで座ると、レディは黒い木箱を俺の方へやった。

どうやらこれが本題らしい。

いわゆる宝箱っぽい箱なんだけど、サイズはずっと小さくてバスケットボールくらいだ。

俺に開けろって言ってんだよな?




「この前、仕事の報酬に貰った物なのだけど、それはに渡るべき物だから」

「・・・・銃剣[バヨネット]か?」




中に入っていたのは真っ白な拳銃。

施された装飾もフォルムも何もかもがすごく綺麗だった。

銃剣とは小銃の先端に剣を付けた物だ。

まぁ、俺も授業で習ったから知ってただけなんだけど。



思わず手にとって眺め回す。

不思議としっくり来るグリップを握り締めて気が付く。

これ殆んど元の形してないっていうか、違法物じゃん!




「気付いた?それは密造された物で相当の値が張るとんでもない代物らしいわ。

 極秘で製造したマフィアもすでに壊滅してるらしくて、世界に一つの銃剣だそうよ」




何でそんな物を俺に渡すんだよー!!

銃口の下に取り付ける剣は上に付いてるし、プッシュ式の装着タイプ。

こんなセミオートのハンドガンを銃剣になんて普通はしない。

実用化なんて出来そうも無い形なのに、コンパクト化されてる銃剣に魅せられてる俺はハッとして慌てて箱に戻す。

こいつを持ったら、きっと俺は引き返せなくなる。




「こんな物、受け取れない」

「すでにその銃剣の運命はの元だと決まっているわ」

「だとしても、俺は・・・」




口籠もるようにレディから目を逸らせば、溜め息が返ってきた。

恐々とレディを見れば、どこか悲しそうにしていた。




「予言師として言うなら、これを持たないと後悔すると言うわね。

 だけど、私個人として言うなら、・・・・・・・お願いだからこれを持って行って、

「俺、は・・・・」




結局、俺は答えが見付からなかった。

箱ごと押し付けられたそれを持ったまま、レディの屋敷を去ることになった。

帰りの車の中で俺はぼんやりと、とりとめもない事を考えながら外の景色を眺めていた。

静かな車内に運転席の執事の声が響く。




「主人は困ったらいつでもあの屋敷にいらっしゃいと申しておりました」

「・・・・あぁ」




掠れた俺の返事が酷く惨めに耳に残った。

俺はただ、平和に暮らしたいだけなんだ・・・。


* ひとやすみ *
 ・ちくわのいそべ揚げって美味しいですよねーって話。(違
  前半、意味不明、後半、重い。
  好き勝手やりすぎましたが、私は楽しかったです!        (09/07/11)