ドリーム小説

ったく、しでかしてくれるぜ、ビアンキちゃんよー。

何もこの面倒臭ェ時に家出してくれなくてもいいじゃねーか。

ボスがくだらねェ挑発してくれたおかげで、今奴等は血眼になって弱点探してんだ。

家出中のビアンキは、奴等にとって最高の人質になる。


まぁ、ビアンキが飛び出した理由も大体分かる。

ついこの前生まれた隼人が可愛くて仕方ないのは分かるが、ビアンキにも目を向けてやれってんだ。

デレデレのボスに心中で文句を言いながら、俺は町を歩き回る。

代わりに俺がビアンキちゃんを愛してやってるって言うのに、まだ足りねェって言うのかー?

つれない美少女に愚痴りながら、彼女が消えた町並みに目をやるが、どこにも見当たらない。

チビの足じゃ、そう遠くへは行けないはずだが。


広場に面した大通りに出て、すぐに角に隠れた。

チラリと覗いた広場には明らかに堅気ではない奴等がうようよしている。




「うげぇ、こりゃビアンキが家出中な事バレてるな」




だぁから、面倒事は嫌いなんだ。

胸ポケットを軽く叩いて相棒を確認して、奴等が移動するのを待つ。

広場から離れていったのを見て俺も別の場所を探そうとした時、テラスに座るビアンキを見付けた。

チッ。通りで見付からない訳だ。

テラスでガキが二人ケーキつついてりゃ兄妹に見えるし、そんな目立つ所で悠々と座ってるとは思わないわな。

あーあーあーあー。しかも楽しそうに顔にケーキ付けちゃってまぁ。

あ゙ー!!あのガキ、ビアンキちゃんに付いてるケーキ食いやがった!!

あのガキ、絞める!!


息巻いて飛び出ようとした俺はそれ以上足が進まない事に気付いた。

いや、進まないんじゃない。

進みたくないんだ。

変な汗が背中を流れるのを感じながら、その根源を動揺しつつ見つめる。

この異様な圧迫感はあのガキから出てるのか・・・?!


ビアンキに入れ知恵し、微笑みながら周囲に常に気を配ってるガキはどう見ても一般人ではない。

黒交じりの灰色の髪に冷たい金の瞳、そういや噂に聞いた事がある。

キャバッローネにとんでもない神童がいると。

確かとか言ったが、まさか、アイツもビアンキを誘拐するつもりか?

席を立った二人に、俺は身を隠して様子を窺う事にした。







***







町中を隠れる訳でもなく、二人は手を繋いで歩いていた。

ちくしょー!お前ら、デートって俺に見せ付けてんのかー?!

やけに楽しそうなビアンキを横目に、を見る。

まるで人形のようにキレイな顔貌をしている奴は、優しそうに笑ってビアンキに手を引かれていた。

マフィアに追われていると分かっていながら、こんなに堂々と町中を歩くなんて正気の沙汰じゃねェぞ。

だが、それが逆に勝つ自信があるのだという事を物語っていて、敬服せざるを得ない。




「ありゃ、ビアンキの奴、に惚れてんな」




普段、大人しく淡々としているビアンキが、目を輝かせている。

いや、分からんでもないが、その男は止めとけ。苦労するぞ。

そんな事を思いながら角から隠れるように二人を見ていると、ショーウィンドウ越しに奴と目が合う。

おいおいおいおい・・・。

一体、いつから気付いてたんだよ、お前。


小さく息を吐いて出て行こうとした時、ウィンドウに銃を構えた男が映っているのに気が付いた。

ヤバイ、と思って二人を見れば、はこけたフリをしてビアンキを守っていた。

流石だ。伊達にと呼ばれてはないってか。

周囲が悲鳴と混乱に包まれても、奴は落ち着いて身を守るバリケードを作って様子を窺っていた。

ビアンキの事はアイツに任せて、あの物騒な奴等を何とかするか。




「頼むぜ、可愛い子ちゃん」




ピンとカプセルを弾いて飛ばすと、相棒はすぐに見えなくなった。

ふと背筋にゾクリとしたものを感じて、振り返るとから凄まじい殺気が出ていた。

化け物かよ、このガキは!




お兄さん」

「こんな小さな子供を狙うなんて」




怒るのはいいが、その凄まじい殺気にビアンキがあてられそうになっている。

雑魚よりこっちの方が危険じゃねェかよ。

俺はすぐに二人の元へ向かい、まだ無駄に発砲してくるやつらに忠告する。




「無理するなよ。お前らすでに感染済みだ」

「「うわぁ!」」




あーあー。言わんこっちゃない。

バタバタ倒れていく奴等に同情していると、小さいが凛とした声が耳を打った。




「Drシャマル・・・」

「あぁ?俺を知ってるって事は、やっぱお前こっち側の奴か。ビアンキを返してもらうぜ」




何考えてんだか知らねェが、お前にだけは嫁にやらん!

臨戦態勢でそう言った俺の心臓がいつもより速く波打つのが聞こえる。

次の瞬間、緊張感はふっ飛んだ。




いや!お兄さんの方がいい!

「何でだ、ビアンキちゃん!一緒に暮らしてる俺の方が断然いい男だろうが」

「たすけて、お兄さん!変なおじさんが」

お、おじさん?!




・・・・・・・衝撃を受けた。

おじさんだなんて、もう立ち直れない。

俺、まだ21なのに。


俺がショックでズタボロになってる間に、はビアンキを聡していた。

てか、素直に聞いちゃってるビアンキちゃんにちょっと涙が出る。

俺の立場って・・・。




って言ったな。お前、キャバッローネのだな」

「・・・息子って意味ならその通りだ」

「キレ者って噂のがガキだって聞いた時はデマだと思ったが、なるほどな」




言葉少なく淡々と答えるの未来に思わず背筋が冷たくなる。

キャバッローネはとんでもない奴を飼ってやがる。

これがひいてはボンゴレの力になるのかと俺は大きな溜め息を吐いてと別れた。




「なぁビアンキちゃん。アイツは怖いから初恋は俺にしとけ?」

ぜったいイヤ!




あっさりフラれた俺はもう一度を見ておこうと振り返ったが、すでに奴はどこにもいなかった。

いつの間に・・・。

ホント、アイツ、何者だよ・・・。


* ひとやすみ *
 ・シャマルカッコいいはずなのに、おかしいなぁ・・・。
  またも勘違い発生。先生、中身はダメダメのちんちくりんですよー。
  ビアンキちゃんよー、シャマルでおじさんなら私は何ですか・・・・?   (09/07/09)