ドリーム小説
俺ってば何だかいろいろ不幸が重なって、大変な人生を歩んできた訳だけど気が付けば俺、11歳。
世の中、こんなに頑張って生きてる11歳なんて中々いないと思うよー?
だから神様、もう少し俺に優しくして下さい。
日々そう思いながら地味に暮らしてるのに、いつの間にかキャバッローネで通ってたって名前が先行してた。
俺さぁ、一度もそんな恥ずかしい名前自分から言った事ないんだけど。
何なの、この恥辱プレイ。
だから呼ぶなって言ってんだろ、このタコ!
・・・・とか、口が裂けても言えねェしなぁー。
はい。いくつになってもチキンですいません。
俺は行きつけのカフェで町の様子を眺めながら溜め息を吐いた。
まぁ、今更俺の性格を嘆いても仕方ないので、今はコーヒーを味わう。
学校帰りによく立ち寄るここのカフェのコーヒーはマジ美味い。
ついでにケーキもマジ美味い。
いつもここには一人で来る。
友達いないから、とかホントの事は言わないぞ。
仕事を持ち込む事が多いからって事にしとこう。
俺はさっき頼んだザッハトルテを待ちながら、そんなくだらない事を考えていた。
そしてそれは突然やってきた。
ボーっとテラスに座っていた俺の袖が強く引かれて、思わず振り向いた。
「お兄さん、たすけてっ」
えーと・・・。
可愛い3歳くらいの女の子が俺の腕に縋り付いていた。
周囲を気にしてるその子は泣きそうになりながら、ギューっと俺の腕を掴んで「変なおじさんに追われてるの」と言った。
常に弱者で被食者であった俺はこれまでに身に付けた危険察知能力をフルに働かせて、目だけで周りを窺う。
シグナルはレッド。
周囲にマフィアの気配あり。
不安そうに辺りを見渡している少女を俺は抱き上げて向かいの席に座らせた。
「え?!」
「落ち着け。木を隠すなら森の中だ」
兄ちゃんに任せとけー!
浅田家の空気くんとは俺のことだ。
俺はカモフラージュにメニューを開いて渡して、顔を隠させ普通にケーキを追加注文した。
テラスの近くを徘徊してる黒スーツ達にドキドキしながら、離れていく奴らに小さく息を吐く。
注文していたザッハトルテと追加のアップルパイを店員が運んできたので、メニューを取り上げると驚いていた。
どうやら今も一生懸命メニューを睨んで隠れていたつもりだったらしい。
「もう大丈夫だ。ほら、ケーキ食べろ」
「え・・あ、うん。ありがとう」
何だこの小動物・・・ッ!
めちゃ可愛いぞ!
コクリと頷いた女の子は恥ずかしそうにしながらも、小さな手でフォークを掴んだ。
俺もケーキを食べつつ、向かいで上品にケーキを食べる少女を観察する。
ディーノにもこんな時代があったよなー。
アイツの場合はもっと食べ散らかしが多かったけどな。
まぐまぐと口を動かしている少女が小首を傾げてケーキをつつく。
「ケーキって何でできてるのかしら?とってもおいしいのはなんでなの?」
「ケーキは多分、小麦粉と砂糖と・・・。まぁ俺もよく分からないが、料理は愛情って言うな」
「あいじょ?」
口に含んだザッハトルテを飲み下し、目を瞬かせてる少女にあぁと返事する。
この年頃の女の子はやっぱママゴトとか、料理とか興味あるのだろうか?
それにしても早熟な子な気がするけどな。
ディーノはもっと、こう、パーって感じで・・・。
・・・・うん。何かこれ以上考えたらアイツに悪い気がしてきたから止めよう。
「愛情ってのは人を想う気持ちだな。好きって気持ちを込めて作るのが一番だと聞いた事がある」
「すてきね!わたしもできるかしら」
パイを口の端に付けて目を輝かせてるその子に俺は小さく笑った。
大きくなったらコックさんになるとか言い出しそうだ。
「大きくなったら出来るさ」
嬉しそうに微笑んだその子の頬に付いたパイを摘んで口に入れる。
うん。ここのアップルパイも美味い。
少女はキョトリと目を瞬かせて、すぐにまたニコッと笑った。
「じゃあお兄さんにおりょうり作ってあげるわ。お兄さんのお名前は?」
「だ」
「お兄さんね」
と、一生懸命覚えようと俺の名前を呟くその光景が微笑ましい。
それを横目に見ながら俺はコーヒーを口に運ぶ。
「わたしはビアンキよ」
「
ブフゥーッ!!!」
ゴホゴホと咽ながら涙目を少女に向ける。
ビアンキってまさかまさかまさかまさか・・・・っ。
毒サソリの姉さんですかー?!
も、もしかして、俺、自分でポイズンクッキングを食うと約束しちゃったわけ・・・?
何やってんの、俺ー!!自殺志願してどうすんだよー!!
* ひとやすみ *
・ようやく出せた美少女なビアンキさん。
主人公がけっこうな年齢のため、なんと三歳!笑
こんな所で将来に関わる大きな事をビアンキに教え込んだ兄ちゃん。笑(09/07/09)