ドリーム小説
ドクンドクンと心臓が波打つ音が聞こえる。
あー!もう!
俺こういうの駄目なんだって!こういう摩訶不思議系は余所でやってよー!
だけど、どんなに否定しても俺の勘が真実だと訴えていた。
・・・俺以外にも異世界人っていたんだな。
「あら、驚かないのね」
「驚いてる、すごく」
「真顔で何言ってんのよ」
レディ、基、佐々木さんはつまらなさそうにソファに持たれ込んだ。
てか、随分キャラ変わってませんか、お姉さん。
「姿と中身が釣り合ってない。、あんた転生した?」
「あぁ。佐々木さんは違うのか?」
「その名は捨てたって言ったでしょ。それ以外で呼んで頂戴。私はトリップよ、気付けばリボーンの世界」
ギロリと睨まれたので、やっぱレディと呼ぶ事に。
俺は促されるままに向かいのソファに腰を降ろした。
転生なら若返れるわね羨ましいと呟いたレディを見るが、そんなに年老いては見えない。
そんな俺の視線に気付いたのか、赤い唇を引き上げて笑った。
「これでも中身はとんでもない婆さんなのよ」
中身は言いっこなしよね、と猫のように目を細めた彼女に俺も同意した。
俺だって中身考えれば父さんと大して歳かわんねーもん・・・。
***
レディは戸籍がない事をいい事に、裏の仕事を本職としており、仕事柄付け狙われるので、
素顔を隠し、偽り、予言師をしているそうだ。
本当に予知能力はあるのでそれと、漫画の予備知識を使えば完璧な予言が完成。
そりゃ最強だよなー・・・。
「だいぶ楽になったかしら?」
「ん?」
そういや、レディを見るたびに感じた怖さがなくなってる。
何だかすごく近寄りたくなかったのにどうしてだろう?
俺の心を読んでる訳じゃないが、レディは面白そうな顔をして答えてくれた。
何せ彼女には最強の予知能力がある。
「あれはこの世界に入り込んだ異物同士が会う事で歪みが与えるプレッシャーみたいなもん。
異物同士が反発しなくなれば歪みは消える。だからもう悪夢は見ないはずよ、お互いね」
「もしかしてレディも辛かったのか?」
「そりゃもう!のオーラ半端ないんだから!あんたちょっとは人に与える影響考えた方がいいわよ?」
「・・・なんか悪い」
俺のダメダメオーラはこんなすごい人でもどうにもならないくらい酷い物らしい。
思わず謝れば、レディは俺の顔をしげしげと眺めてきた。
な、何・・?!俺何かしましたか?!
「今、、謝った、のよねぇ?」
「何か、間違ったか?」
「・・・いいえ。ふーん。何だ、そうなんだ。へー」
何か納得するように頷いているレディが物凄く気になる。
一体何がだー?!
***
「何かあれば私を頼りなさい、。同郷の誼みで手を貸してあげるわ」
再び目を隠し、真っ赤な帽子を真深く被ったレディは面白そうに笑って俺の頬にキスをした。
挨拶だと分かっていても、どうにも慣れない。
俺の心情を察しているのか、いないのか、クスリと笑った彼女はそのまま屋敷を出て行った。
ウチに居座ったのは、どうやら俺とあの話をするためだったらしい。
だったら早く言ってくれればよかったのに・・・。
そう思って俺は考え直した。
俺だったら「君、異世界人だよね?」なんて怖くて絶対聞けない・・・。
すごいインパクトを残して嵐のように去って行ったレディを思って頬に手を当てた。
ホントにすごい人だったな。
溢す様に小さく笑った時、何か変な感じがした。
「押すなよ、ロマーリオっ」
「俺じゃないぜ、坊ちゃん」
「見えねえよ」
「どこだ?」
だからさ、全部聞こえてんだってば!
お前らそこで何してんの?!
ディーノだけじゃなく、ウチのファミリーが押し合いへし合いで覗いていた。
「・・・お前ら、そこで何してる?」
俺が声を掛けると雪崩のように崩れ落ちてきたファミリーに目を細める。
その中の一人が素直に声を上げた。
「ロマーリオが様がレディにホの字だって言うもんですからッ」
ホの字・・・。また時代錯誤な。
ロマーリオを睨むと奴はヘラリと頭を掻きながら笑った。
「初キッスおめでとう、坊ちゃん」
挨拶だっての!このセクハラ親父!!
このヤロー、みんなしてニヤニヤしやがって!
心優しき野獣だって怒る時は怒るんだぞ!俺は肝っ玉小さい野獣ですけどね!
俺は考えた末に、宙を指差し大きな声を上げた。
「あ、あれは・・・・!!」
「え?どうしたの兄さん?」
「「「 え? 」」」
ディーノが俺の指差した方向を見た瞬間、靴底から隠しナイフを取り出し背後にいたロマーリオに投げ付けた。
俺だってちょっとは訓練したんだから、脅しくらいにはナイフ使えるんだぞ。
ビイィンと音を立てて壁に刺さったナイフはロマーリオの片ヒゲを剃り落としていった。
「うわ!」
「え?あれ、ロマーリオ、お前ヒゲ半分どこやったの?」
「い、今、ぼっ・・・」
だーまーれー!!!
言ったら残り半分剃る!言ったら残り半分剃る!言ったら残り半分剃る!
心の中で唱えるようにして奴を睨むと口を噤んだ。
分かればいーんだ。
俺の弟に変な事吹き込む奴は容赦しない!
って言ってもハッタリ利かせて睨むくらいしか出来ませんけどー。
首を傾げるディーノを余所に、俺は欠伸を噛み殺した。
それを見ていたらしいディーノが嬉しそうに叫ぶ。
「兄さん、眠いの?!寝れる?!」
思わず苦笑したくもなる。
眠そうにして喜ばれる事なんか生まれて初めてだぞ、俺。
心配してくれているディーノの頭を撫でて俺は歩き出した。
「少し寝る。一緒に昼寝するか?」
「え?・・・うん!!」
可愛い弟が俺を追い越して走り出した。
後ろで突っ立ってる奴らがちょっと怖くなったので、俺も黙って逃げる事にした。
うん。ちょっと、かなり、調子に乗っちゃったからね。
あとが怖ェー!!
ベッドに入ると、ディーノが嬉しそうに何か話し掛けていたが、俺眠くてすぐにブラックアウト。
もうホント、情け無い兄ちゃんでゴメン。
でもディーノ。一つだけ言っておきたい事がある。
俺の初恋、レディじゃないからな?
* ひとやすみ *
・ロマーリオのおっさん臭さが気になります。笑
まだ20代前半のハズなんですがねー・・・。
いろいろ謎なお姉さんですが、主人公の力になってくれるはず!(09/07/07)