ドリーム小説
俺がその話を耳にしたのは偶然だった。
ストレーガ・ロッソの予言は百発百中だというが、その女がキャバッローネにいるとは。
ボンゴレの同盟ファミリーでも有力なキャバッローネで思い出すのはあの白バラだ。
は人の上に立つに相応しい容貌をしていたし、奴の力は隠してもその動作の端々から垣間見えた。
あの恐怖をいずれ俺が従えるのだ。
見劣りするようなカスにはなってたまるか。
俺は気が付けば、キャバッローネへの使者を任されたという男に声を掛けていた。
「ザンザス様・・・?!」
「俺も連れて行け。キャバッローネに用がある」
返事も聞かずに車に乗り込むと慌てて男も乗り込んで車は発進した。
俺は何している。
別に用などないというのに。
流れるように進む景色をぼんやりと見ながら、諦めたように認めた。
俺はもう一度、に会ってみたかったのだ。
窓に映った自分の顔がどことなく嬉しそうにしているのを見て俺は鼻で自身を笑った。
「あの、ザンザス様。用があるなら九代目に面会を頼みましょうか?」
「・・・・必要ない。用があるのはだ」
「・・・?あぁ、の事ですか」
「?」
聞き慣れないその言葉を繰り返すよう聞き返せば、すぐに答えが返ってきた。
氷のように冷たく美しいその容姿と力ある金の瞳、絶対的な王者の風格と慧敏な様を称えて
多くの奴がをそう呼んでいるらしい。
か。
確かにに相応しい名だ。
ほんの少しだけ機嫌が良くなった俺は再び外に視線をやり、目的地に向うまでの時間を潰した。
***
「なぜキャバッローネが出迎えに来る」
「ザンザスが来てるって聞いたからな」
使者と屋敷で別れると、なぜか俺の前にキャバッローネのボスが現れた。
使者が用事があるのはあの女だから、俺は暇だと抜かしたキャバッローネが本物か疑いたくもなる。
これが本当にあのの父親なのか・・・?
こんな馬鹿には関わるだけ無駄だ。
俺は奴に背を向けて歩き出した。
「ザンザス、の部屋はこっちだぞ?」
「・・・・・」
・・・仕方ないから案内されてやる事にした。
俺の隣で何がそんなに面白いのかずっと笑っている奴は楽しそうに話している。
「は今なぁ・・・、いや、まぁ、会えば分かる」
「・・・・何がだ?」
「・・・・お前はの話だと食い付くんだな」
「・・・・・・・」
「まぁ、アイツもお前の事気に入ってたみたいだからな。お前になら話すかもしれんな」
「?」
「の考えは分からないって事だ」
案内をするだけして去って行ったキャバッローネを余所に俺は扉に視線をやる。
ここまで来たはいいが、何と理由付けようか。
用事をでっち上げて戸を叩くと、あの金色が覗いた。
そしての目の下を縁取る隈を見て俺は目を見開く。
一体何が?
「・・・話って何だ?」
「それは、もういい」
いろいろ考えた理由も何もかもが全て吹っ飛んでいた。
促されるままにソファに座り込むとその肘掛には腕を組んで軽くもたれかかった。
隣で立ったままのを見上げるようにして、俺は声を掛けた。
「、何かあったか?」
「何でもない」
困ったように笑ったは誤魔化すようにそう言ったのだろうが、何だかそれが酷く気に障った。
キャバッローネが言ってたのはこの事か・・・。
明らかに何も無いとは言えない顔をしているくせに、コイツはおそらく誰にも理由を話さないのだ。
それが何だか悔しく、腹が立って俺は立ち上がっての首根を掴んでソファに転がした。
空いてる隙間に俺もドカリと座り込むと、仰向けのが驚いたように目を瞬いていた。
起き上がろうとしたの額を押し付けて、起き上がれないようにして驚いた。
コイツ熱い・・・。
「寝てろ。嘘吐くなカスが。自分の顔見て物を言え」
「は」
「隈が酷い。寝てねぇな?」
もう一度試すように額に手をやればの表情が少し和らいだ。
俺の手よりも熱い体温だからだろうが、思わず眉根が寄る。
そんな俺を観察するように見上げるに居た堪れなくなり、俺はの目を隠した。
互いの目を見る事がなくなったからか、突然は吐き出すように話し出した。
「ザンザス、お前、予言を信じるか?」
「ストレーガ・ロッソの予言か?」
その一言で全て納得がいった。
あの魔女ならばに直接手を下さずに仕掛ける事が出来るだろう。
疲れたような声で毎晩同じ悪夢を見ると言ったにおそらくあの女の呪いが掛けられてるのだろう。
とにかく会ってあの女を何とかするしかないとそう言ってみたものの、返事が返って来ない。
ゆっくりとの目に当てていた手をどけると、目蓋は閉じられ長い睫毛に金の瞳は隠れてしまっていた。
「寝たのか・・・」
規則的に上下する胸に、俺は安堵の息を吐いた。
これで少しは寝不足が緩和されるはずだ。
俺は何か掛ける物を探して部屋を歩き回ったが、何もない部屋に悩んだ。
机に置いてあった紙を被せる訳にもいかねぇだろうが。
自分の着ていたジャケットに視線を落として、すぐにそれをに掛ける。
何度もずり落ちるそれを何度も被せて、書置きを残す事にした。
その辺にあった書類を千切り、書き始めて気付く。
別に俺がこんな事しなくてもいいんじゃねぇのか?
何だか悔しくなり、切れ端を丸めてジャケットに隠すように放り込んだ。
「俺はテメェの寝顔ばかり見てる気がするな」
俺は何だかに勝ったような気がして、上機嫌で部屋を出た。
があのメモに気が付けば、よく効く薬を送ってやる。
* ひとやすみ *
・ちょっと迷った話。別にいらなかったかもしれない感じの。
私が書くとどーしても丸くなっちゃうのがねぇ。主人公の悩みを引き出せて満足の子ボス。
ジャケットに気付くまで30分とか、大事な報告書を知るかとボヤキながら千切ったんでしょうね(09/07/01)