ドリーム小説

「レディ・ディヴィナトーレ、ディヴィナトリス、レディ・ロッソ、ストレーガ、お好きなようにお呼びになって」




真っ赤な彼女は俺を見て赤い唇を歪めてそう言った。

そんな彼女はなぜかウチに居候中だ。

何でだ・・・?


あとでレディの事を調べれば、とんでもない事がいろいろ発覚した。

ゼロがいくつあるのか分からないような高額報酬で仕事する予言者で、誰も彼女の素性を知らない。

おまけに裏では情報屋として有名な人物らしく、父さんもいくつか仕事を依頼した事があるらしい。

てかそんな金あるなら帰れよ家に!


よく分からないけど、俺はレディがすんごい苦手。

笑っているのに冷え冷えとしたオーラと、人が判るはずの目は深々と被った帽子で隠されている。

すごく・・・・不気味な人だ。


なのに目が離せないのは、初めて会ったあの日。

レディに引き止められて言われた言葉が気になっているからかもしれない。




『私はアナタが怖ろしい。そしてアナタも私が怖ろしいはず。今はそうでも、アナタは私を必要とする。近い内にね』




彼女に呼び名がいくつもある理由が分かった気がした。

まるで魔術師、まるで魔女、ゾクリと背を何かが駆け上がるようなそんな予言だった。

あんまりレディが怖いから忘れようと努力したんだけどさぁ、


むしろ夢見て寝れません!!!


あれ以来、どうやら俺ビビリまくってるせいか、夢にレディが出てくる。

しかも真っ赤で悲惨な悪夢。

おまけにどんどん鮮明になってる気がして、俺、不眠四日目突入。

今なら俺、ザンザスとフォークダンス踊れる気がするぜー・・・。






***






無理です。嘘です。踊れません。

あんなくだらない事言った数時間前の俺カムバーック!!

レディに依頼しにボンゴレから使者が来た。

ついでにザンザスのオマケ付きで。

話がしたい、と突然やって来たザンザスに俺は打ちひしがれながら部屋に通した。

きっとフォークダンスとかふざけた事を言った俺をボスパワーで感じ取ったんだ・・・。

ソファに腰を降ろしたザンザスに俺は恐る恐る声を掛けた。




「・・・話って何だ?」

「それは、もういい」




え、話しに来たんじゃないの?!怒りに来たんじゃないの?!

・・・・わからん。

わからんが、どうやら怒ってはないみたいなのでちょっぴり近付いてソファの肘掛に腰を掛ける。

ザンザスから離れた位置の肘掛だから何があっても逃げれるはず。




、何かあったか?」




言える訳ないだろ、アンタが優しすぎて怖いだなんて!

まだ小さいから優しいのか、何か企んでんのか、優しいザンザスって何か怖いよ。

俺は誤魔化すように薄く笑って首を振った。




「何でもない」




そしたらザンザスの割れ眉毛が真ん中にめちゃくちゃ寄ったー!

え?ええ?えええ?何で怒ってんの?!

ザンザスがそのまま立ち上がり俺の方にやって来て手を伸ばしてきた。

怖くてギュッと目を瞑った瞬間、俺は引っ張られるように背中からソファに倒れ込んでいた。

目を開ければソファに座るザンザス、その隣に寝転ぶ俺。

起き上がろうとすれば、まさかのアイアンクロー!!!

ギャー!!!! 潰 さ れ る !! 




「寝てろ。嘘吐くなカスが。自分の顔見て物を言え」

「は」

「隈が酷い。寝てねぇな?」




険しい眉をさらに持ち上げて俺を見下ろしてくるザンザスに目を瞬く。

もしかして、俺、心配されてんの・・・?

サラリとした小さな手が額の温度を探るように当てられて思わず目を瞑る。

眠気で火照った体温にザンザスの冷たい手が気持ちいい。

目を隠されるように覆われて、一面暗闇だというのになぜか安心出来た。




「ザンザス、お前、予言を信じるか?」




俺は酷く気だるいまどろみの中、気が付けば俺の不眠の原因について話していた。

全て原因はあの予言のせいだ。




「ストレーガ・ロッソの予言か?」




赤の魔女[ストレーガ・ロッソ]か。ホントにいくつ名前があるのやら。

それよりも俺より一つ年下のくせに勘の鋭い所はさすがと言うか。

俺は溜め息と同時に肯定の言葉を漏らす。




「毎晩夢を見る。同じ悪夢ばかり。だけど、俺は予言なんか信じない」




信じない。というか信じたくない。

またあの怖い女の人に会わなきゃいけないなんて全力で遠慮したい。

絶対取って食われる!

黙っていたザンザスがどこか硬い声で声を落とす。




「予言なんか信じても信じなくてもいいが、あの女は予言を成立させるために妖しげな術を使うという。

 その夢もただの夢という保障はねぇ。女がに何言ったかは知らねぇが、会って話をつけた方がいいな」




ザンザスの声が遠くに聞こえる。

酷く重たい目蓋を重力に従って閉じてしまえば、目に当てられた手の温かさに俺は眠りに落ちていった。






***






夢の中、俺はまたあの赤い彼女と出会い、赤い夢に魘され跳び起きた。

すでに日は落ち、随分長い間寝ていたようだ。

ソファから身体を起こすと何かが滑り落ちてそれを拾う。




「ってこれ、ザンザスのジャケットじゃん・・・」




ザンザスを放ってグースカ寝てた俺にコレを掛けて行ってくれたらしい。

ポケットに何か紙切れが入っているのに気付き広げてみると、何かの切れ端で小さく文字が書き殴ってあった。




「よく効く薬を手配してやる、か」




寝不足な俺を心配してくれていたザンザスを思い出して、俺は吹き出した。

ジャケットを握り締め、俺はソファに再び横になって笑い転げた。




「はは!お前が薬って言うと危険な物にしか思えないって!」




俺はすぐに送られてくるだろう睡眠薬と、また眉間に皺を寄せてるだろうザンザスを思ってカラカラと笑い続けた。


* ひとやすみ *
 ・意味は divinatore…予言者。strega…魔女。rosso…赤。
  子ボスが優しい!自分と対等もしくは上だと思っているからこその態度でしょうね。
  眠るのが怖い時、近くに親しい人がいると安心して眠れるんですよね。      (09/07/01)