ドリーム小説

はっきり言って誰がこんなことになると想像出来ただろうか。

俺が言うのもなんだが、あの世から舞い戻った俺が弟達と感動の再会を果たしたその後、

目を覚ましたことを知った皆が病室に雪崩れ込んできた。

・・・・・・そう、皆が。

そして、こうなった。




「あぁ!!よかったぁ!!心肺停止した時はもうダメかと・・・!」

さん!!」

坊ちゃん!!」

「ちょっと、貴方達!いくら弟だからって病床の様に何乗っかってるんです?!」

「あ、やっぱ生きてるじゃん」

「ふざけるな!患者は意識が戻ったばかりだ!全員出ていけ!」

「何なのこの群れ。咬み殺すよ」

「おい!兄さんは怪我人なんだぞ、ここで暴れるなよ!」




何ていう混沌[カオス]・・・。

てか、この広い病室に全員入りきらないってどういうこと?

端の方でバトル勃発してるのを視界に入れつつ、俺はベッドの上で顔を引き攣らせた。

あのー・・・、俺のベッドに乗ってるそこの弟達よ・・・。

俺のことを心配してくれるのは嬉しいが、あの・・・、俺の胸の上で暴れるのはよしとくれ・・・。

折れた肋骨が悲鳴を上げているんだが。

おおう。ティエラさんよ、泣きながら謝るのはいいが、俺の手はそっちには曲がらねぇよ?!

あいた!!誰だ。俺の足踏んだのは!

ねぇ、お前ら、俺の見舞いに来たの?!トドメ刺しに来たの?!


鼻を啜りながら俺は混雑してる病室を見渡した。

しかし、こうやってみるとスゲー人多いな・・・。

執事とティエラ、弟達はもちろん、ヴァリアー数人に綱吉達、クローム、ロマーリオ達に正一までいる。

その他にもわらわらと見知った顔が廊下にまで溢れているようだ。

俺がここで知り合った奴らってこんなにいたんだな・・・。

押したり引いたり、踏んだり蹴られたりで痛みを叫ぶ身体に意識を戻され、半泣きになった所で助けが来た。




「何してるんですか!ボスをまたICU送りにしたいんですか!ほら皆さん出て行って!」




白衣を着たアーサーが俺の元へやってきて、眉を吊り上げて声を張り上げた。

弟二人もティエラも俺から引き離してくれたおかげで、身体の圧迫感はなくなった。

うぅ、助かったー・・・。

アーサー、お前、最高!さすが医者だぜ!

ナースではないけど、白衣の天使には違いないな!

俺は何とか身体を起こして、座り込むとアーサーに向けて笑った。




「アーサー、お前は俺の天使だな」

「・・・はッ?!」




その瞬間、なぜか喧しかった病室が静まり返った。

ん?何、何があったの?

皆、すげー顔をして俺を見ている。

ぎこちなく振り返ったアーサーは引き攣った顔をしていた。




「・・・ボス、あ、あの、いくらボスでも、私はそのような趣味はないですから、お気持ちには、」

「?」




趣味?何を言ってるんだ、アーサーは?

視線を合わせようとしないアーサーに首を捻ったが、俺は天才的な閃きで覚った。

・・・あぁ!あれか、白衣は着てもナース服を着る趣味はないってことか!




「分かってる。お前はそのままで十分イケてるよ」

「〜〜〜ッ!!」




さすが出来る医者は白衣が似合うぜ!

よッ!世界一!

・・・と、褒めたつもりだったのだが、なぜかその本人は口をパクパクと開け閉めしている。

そして、次の瞬間・・・、




全員退避ィィィ!!

「行きなさい、アーサー!それから、一応言っておきますが、様の言葉を本気にしてはいけませんよ!!」




青褪めたアーサーを筆頭になぜか病室にいた奴らが泡を食ったように逃げ出して行った。

え、何、この状態・・・。

呆然とする俺の周囲に残ったのは、恭弥とディーノ、執事とティエラだけだった。

説明を求めて視線を彷徨わせたら、なぜか全員が深い溜め息を吐いた。




「全くこれだから天然は手に負えないよ」

「・・・そうかぁ。ついに男にまで被害が」

「チクワ・・・、アーサーが変な道に走っちゃったらどうしよう?」

「本当に様の無差別級タラシ術には困ったものです」




え・・・?え・・・??

何かとんでもない言い掛かりを付けられてる上に、何でそんな残念な物を見るような目で俺を見て来るんだよ?!

もう一度深々と溜め息を吐く四人に不貞腐れてると、病室の開いてる窓から黄色い何かが舞い込んできた。

室内をクルクルと飛び回るそれに俺は目を瞬いた。




「ヒバード?」




ヒバードは俺の声に気付いたかのように、スーッと俺の方へ飛んできて頭の上に着地した。

ポスンと軽い衝撃がしたと思ったら、頭上からヒラヒラと一枚のカードが降ってきた。




、オテガミ、オテガミ」

「俺に?」




ヒバードが落としたカードを掴んだ俺は、差出人のないそれを読んで目を見開いた。



『君を大切に思ってる人間は多かっただろう?』



思わず俺は周囲の気配を探ってしまった。

まさか見ていたのかと驚いたけど、アイツなら何でもありかと思い直した。

生命の果てで言われたこの言葉は、あの時の俺にはいまいち意味が分からなかったが、今ならよく分かる。

自分が犠牲になれば丸く治まると思ってたけど、目覚めて目にした皆は、

俺を心配して、泣いて、騒いで、怒って、笑っていた。

いくら大馬鹿な俺でもあれは、かなり胸に来るものがあった。

あぁ、俺は間違っていたんだなぁ、って。

カードはその他にもまだ続いていた。



『君が死んだと嘘を吐いたのはちょっとした意趣返しだよ。君のせいで散々僕も働かされたからね。

 さてこれで本当に最後だ。もっと自分の存在の大きさを学んで、もっと自由に君の人生を最後まで楽しんでくれ』



嘘だったのかよ?!

マジで落ち込んだんだぞ?!

全く、本当にアイツは性質が悪い。



『追伸。この手紙は読んだ五秒後に消滅する』

「はぁ?!」




俺は思わず声を上げて、すぐさまカードを皆から離れている扉の方へと投げた。

胸の内で五、四、三、二、一、と数えて身構えたが、カードに何も起こらなかった。

首を捻っているとティエラが不思議そうにカードを拾いに行った。




「なぁに?嫌なことでも書いてあったの、?・・・ってあら?何も書いてないじゃない」

「何?」

「ほら」




手元に返ってきたカードを裏表よく見たが、どこにも何も書かれていなかった。

まさか、消滅って内容だけかよ?!

何てエコだよ・・・。




「何だかとても楽しそうな顔をしていましたが、誰からのカードだったんですか?」

「ん?これは、アイツ・・・、・・・?」




あれ?アイツってなんて名前だったっけ?

え?何でアイツ俺の前に現れたんだっけ?あれれー?




「もう誰でもいいじゃない。の大切な友達なんでしょ?」

「・・・あぁ、そうだな。すごく面倒臭くて厄介な奴だったけど優しい奴だったと思う」




何だかよく思い出せないが、俺はそれでいいやと思った。

きっとアイツはまたどこかで見てるはずだから。


* ひとやすみ *
・相変わらず兄様の不用意な発言は誤解を招きます。何て不憫・・・。病室がてんやわんやです。
 手紙に関しては一、二のポカン状態です。よく分からないけど、思い出せない状態。
 誰からの手紙かは皆さんの心にだけ留めておいてくださいませ!本当に兄様を思う人は多かった!
 さぁ、ラスト直前です!                                                     (12/10/24)