ドリーム小説

はっきり言ってモスカの暴走は見てられなかった。

内部の損傷のせいか無差別に攻撃を繰り返す俺が入ったモスカ。

恭弥の足に怪我を負わせ、誰彼構わず攻撃するのは、俺の力が及ばずモスカに支配権を奪われたせいだった。

容赦なく俺の炎を奪うモスカに内部の俺は意識を保つのが精一杯で、

幻覚で作り出された俺はいつ消えてもおかしくなかった。

このままフィールド内で幻覚の俺が消えるとマズイことになる。

そう思って俺はこっそり破壊されたフィールドから逃げ出して、校舎の影へと座り込んだ。




「そのまま消えようと思ったのに、まさかティエラにつけられてるとは気付かなかったんだよな」




校舎の影に入ってしんどいのを隠さなくてよくなった途端、俺は崩れ落ちて息を切らせた。

その記憶を空から見下ろす俺は、心配そうに狼狽えるティエラに苦笑した。




『え、どうしよう!救急車?!医者?!アーサー?!』

『・・・落ち着いてくれ、ティエラ』

『だって!だ、だって、大丈夫じゃないでしょ、?!』




ティエラは泣きそうな顔をしていたけど、俺は本当に余裕がなくて何も言えなかった。

俺はどうしようもなくなったモスカを止めて欲しいとティエラに願ったが、

どうやらティエラは守ってくれなかったらしい。

モスカとは反対方向に携帯を持って走って行ったティエラを見下ろして、

俺は満足そうに掻き消えた自分の幻覚を見ていた。

あとは結果通り、モスカは綱吉に強引に止められて、俺は引き摺り出された。




「ようするに、全部俺の爪が甘かったって話だ」

「なるほど」

「!!」




独り言に返事が返ってきて、驚いて振り返るとそこにはシトがいた。

俺の記憶を見下ろしながら、宙に腰掛けるようにして足を組んで浮かんでいた。

俺も似たようなものだったが、なぜ過去の記憶を辿るように見せられたのかこれでようやく分かった。




「君は本当に愚かだね、。自分を犠牲にしたら争奪戦が終わると考えたんだ?」

「・・・結局、止められなかったが、これで綱吉達の勝ち越しだ」




ザンザスもこの面倒な戦いを早く終わらせたがっていたし、これで争奪戦は終結を迎えた。

俺の負傷は避けられなかったが、俺の身体一つで済んだなら後悔はない。

酷く清々しい気持ちでシトを見ると、奴はじっとりとした視線を寄越して深く溜め息を吐いた。




「愚かも愚か大馬鹿だね。僕は心底君の周囲に同情するよ。君は他人が傷付くのを嫌がるくせに自分を少しも大事にしない」

「お前にそこまで言われる筋合いはない」

「いーや!あるね。が仕出かしたことで僕は散々働かされたんだからね!君は自分を犠牲にすれば被害は最小に

 抑えられると思っているようだけど、僕に言わせればそんなのただの自己満足で、それは周囲に対する侮辱だよ」




シトは立ち上がると片手を振って、俺の過去の記憶を消し去った。

そして残されたのは、真っ白い世界に俺とシトの二人だけ。

シトは青い瞳に力を込めて俺を見た。




「君が思っているよりもずっとを大切に思ってる人間は多いよ。だからこそ、ここまで原作に大きな影響を与え、

 君は神をも引き摺り出した。が皆を思うように皆もを思ってる。君はもっと自分の存在の大きさを学ぶべきだ」




説教染みた言葉だったが、シトの話は深く俺に突き刺さった。

何も言えなかった俺に満足したのかシトは一つ頷いて向き直った。




「さて、僕がここに来たのは試練の合否を伝えに来たんだけど、君はそれどころじゃないよね」

「よく分からないが、それよりここは何なんだ?」

「ここは生命の最果て。死者の国だよ。、君はあの戦いで死んだ」




淡々とそう言ったシトに俺は絶句した。

俺が、死んだ・・・?

嘘だろ?

死んだって、何て呆気ない幕切れだよ・・・。

茫然とする俺を無視するかのようにシトは続ける。




「僕は時空の神に使わされた判決の使徒[シト]。神の試練に打ち克った君に選択の門を開こう」




何もない空間に巨大な門が物凄い轟音を立てて振ってきた。

その門は内側に巨大な扉をつけていて、扉は片方ずつ赤色と青色をしている。

扉に掘られたデザインは左右対称なのに、色だけが違う。

選択の門とは一体何なんだ・・・?




「選択の門は神の試練を乗り越えた者だけが人生でただ一度だけ目にすることが出来る分岐点。

 に与える選択は、元の世界に戻る赤い扉と、再びリボーンの世界に転生する青い扉だ」




突然降って湧いた生への道に俺は目を丸くした。

赤い扉を開けば、リボーンの世界に来る前の十九歳の浅田に戻れるらしい。

そして青い扉を開けば、この世界へ再び戻ってこられるが、時間は戻らないため

俺はディーノの兄でも恭弥の兄でもなくどこかの他人として生まれることになるらしい。

はっきり言って、どっちも最悪な選択だった。

一体神様って奴はどれだけ俺を苛めれば気が済むのか。

後悔なんて死ぬほどあるし、未練なんかタラタラだ。

正直、どちらも選びたくないが、だからと言って生き残る生への道を捨てられるほど俺は強くない。

しばらく放心状態で立ち尽くしていたが、どれほど扉を睨もうと与えられる選択肢は変わらない。

俺はもう死んでるらしいけど、死ぬほど迷って、片方の扉に手を掛けた。

なるようになれと勢いで扉を開けた瞬間、背後でシトが笑う気配がした。




が選んだその道に幸多からんことを」




その台詞はレディが最後に俺に残した台詞と同じで、思わず振り返ったがそこにはシトも門もなく、

俺はそのまま道なき道にゆっくりと落ちて行った。


* ひとやすみ *
・過去の記憶を辿る旅はシトが兄様の思惑を知るためだったようです。
 シトとはまんま神の使徒。試練を持ってくる厄介な神ではありますが、
 救いの神でもあります。試練の内容については本編で明かされることはありません。
 まさに神のみぞ知るってやつです。さて、兄様はどちらを選んだのでしょうか。   (12/10/16)