ドリーム小説

過去の記憶を静観していた俺は一気に視界が変わり、また違う記憶を見ているのだと理解した。

並中グラウンドの囲いの中、俺の幻覚とモスカ、恭弥が静かに睨み合っていた。

俺はそれをまた空から見下ろす形で眺めている。

これ、すっげー怖かったんだよなー・・・。

モスカに攻撃食らったら中の俺はヤバいってのに、フィールドは自動砲台八門に地雷と来た。

おまけに相手は超キレちゃってる恭弥だぞ?

地獄以外の何ものでもないだろ?!

争奪戦前にアーサーの診察を受けた時、俺は最後通牒とばかりに苦言をもらっていた。




『もうボスの身体は限界です。分体を見る限り、中は死人状態ですよ。これ以上、命を削ればどうなるか分からない』

『この試合だけもてばいい』

『モスカに衝撃が加わるとどうなるのかさえ分からないんですよ?!』

『承知の上だ』




アーサーはグッと言葉を呑み込んで、一度大きく息を吐くとぶつぶつと文句を言っていた。

その後、相手は俺の弟なんだから何とかしろとまで言われたが、正直あれが本当に俺の知る弟なのか自信ない。

突き刺さる視線はもはや怒りではなく憎悪だ。

熱を一切感じさせない視線は今まで向けられたことが無く、初めてアイツが原作の雲雀恭弥なんだと実感した。




「自業、自得・・・だよな」




対峙する過去の俺達を見つめて俺はそう呟いた。

今でも恭弥のあの視線を思い出すと胸が痛くなる。

原作を掻き乱し怪我人を増やすのが俺の存在のせいなら、俺はいくらだって身を引く。

そう決めたはずなのに、恭弥のあの視線はそれを後悔させるほど痛いものだった。

だけど、争奪戦を終わらせるにはこの雲戦を勝って引き分けに持ち込み、綱吉達に勝ちを譲らなければいけない。

そうでなければ、この無駄な争いは終わらない。




『来いよ。全力で相手をしてやる』




そう呟いたのは幻覚の俺だが、その分体はもはや実体を作り出すほど力を残していなかった。

だから、戦うのは俺の本体が入っているモスカでなければ出来なかった。

俺の全力、俺の命を懸けて、恭弥の相手をすると決めた。

一撃でも食らうとどうなるか分からないと言っていたアーサーは怒るだろうが、

それでも俺は恭弥に全力で向かいたいんだ。

突然始まった戦いに俺は確かそんなことを考えていたはずだ。

俺が相手をすると言ったのにモスカが向かってきたので、恭弥は不満そうにしていたが

攻撃を躱された上にパワー負けして吹き飛ばされたため、少し面白そうな顔をしていた。




『へぇ、その巨体で兄さんと同じ動きが出来るんだ』

『何のために俺がここにいると思ってるんだ?そいつの動きは俺をトレースしてプログラムを組んだ』

『それではが二人いるようなものではないか!不公平だ!!』

『問題ありません。ヴァリアー側の守護者は様とゴーラ・モスカの二人になっていますが、

 モスカが戦闘不能になった時点でヴァリアー側の負けとなるようになっております』




俺が恭弥に言ったことは完全に嘘だ。

プログラムを書き換えるなんて技術者でもない限り不可能だ。

研究所でモスカの資料を手に入れてはいたが、意味不明のちんぷんかんぷん。

時間を掛ければ何とかなったかもしれないが、一日二日じゃ出来るわけがない。

だから俺は中から炎を使ってモスカを錯覚に陥らせ、そう動くようにコントロールしていた。

つまり有幻覚の俺を作る炎と、モスカに錯覚させて支配権を握る炎と、動力源としての炎を俺は使っていた。

二人いるのはズルいと叫ぶ了平の言葉に本当に二人だったらどんなに良かったかと苦笑した。

チェルベッロが言う通り、モスカが戦闘不能になったら、本当に俺は終わりだった。


それからいくつか攻撃も食らったが決定打にはならず、しばらく膠着状態が続いたが、

疲労でほんの少し鈍くなった恭弥の隙をついて、モスカの俺は顎に強烈なアッパーをぶち込んだ。

地雷を踏んでいくつか爆発を起こしながらも、恭弥は相変わらずの負けん気で立ち上がった。




『・・・嫌になるね。あのイタリア人は師匠面してくるし、草食動物は群れてるし、

 並中は変な集団にボロボロにされるし、全くもって気に入らない』




ゆらりと傾ぎながらも袖で血を拭う恭弥になぜかひやりと背筋が震えた。

何だこの威圧感・・・?!




『だけど、一番気に入らないのは、何か困ってるくせに僕を頼らない兄さんだ』




トンファーに棘を生やし、眼光をギラつかせて飛び込んでくる恭弥の気迫に一瞬、動くのが遅れた。

元とはいえ兄なのだからと、どこか油断していたのだろう。

その甘さが一瞬の隙を生んだ。




『・・・頼れないなら、頼らせてやるまで、だ!!』

『しまっ・・・!!』




ガードも何もかも間に合わず、恭弥の渾身の攻撃は見事にモスカの左腕を奪っていた。

内部ではその衝撃はダイレクトに俺に伝わり、切られた配線がショートして火を噴いていた。

肋骨が折れてショートした配線が俺の額を焼いた。

倒れたモスカの中で頭から血を流しながらも、俺は何とか動かそうと薄っすらと目を開けた。

思いの外、ダメージを負っているらしく、滲む視界の向こうでザンザスと恭弥が戦っているのが見えた。

何やってんだよ、お前ら・・・!

戦い終わらせるためには、そんなことしてる場合かよ?!

そう思いつつも内部では二次被害が起きて、また別の場所がショートした。

その瞬間、俺は頭に物凄い衝撃を受けて、モスカの支配権を手放してしまった。

すると危険回避プログラムが緊急作動して、炎が急激に吸われ俺は意識を保つのに精一杯になった。

目の前で攻撃を繰り返す恭弥が危険因子と見なされ、敵認識される。

止めろと声を絞り出すものの、攻撃のためどんどん炎を吸われ、俺にはどうすることも出来なかった。

そして、悪夢は起こる・・・。


* ひとやすみ *
・満身創痍で動いていたら兄様、モスカに足元掬われました。
 身動きとれず自分が皆を攻撃してるのを見ているしか出来ないのはさぞ堪えたでしょうね。
 しかもそんな中で内部爆発とか地獄ですよ、地獄!さて、結局兄様が辿りつく所はどこなんでしょうか。      (12/10/11)