ドリーム小説
漆黒の髪に獰猛さを見せる赤い瞳。
嫌な夢から目が覚めても、視界に飛び込んできた紅いバラと瞳に俺の心はかき乱された。
波紋のように心に広がる疑問のまま、俺はそいつに名を尋ねた。
お前は誰だ、と。
そしてそいつは・・・・・、
「お前こそ、誰だ」
ですよねー!
どうも、です。
詩人っぽく現実逃避しても無駄なんだけど、状況が俺に不利だと言っていた。
俺、不法侵入者。
俺、弱い。
向こう、強そう。
一瞬で立ち上がった死亡フラグ。
物凄い形相で俺を睨む同い年くらいの少年は、とんでもなくおっかない。
俺はまるで蛇に睨まれた蛙のように動けず、合わせられない目を泳がすようにばら撒かれた花弁に向けた。
白い花園に赤バラは存在しない。
一体、俺の身体やベンチに散っている花弁はどうしたんだ?
「おい」
俺、何も聞こえてませんよー。
怖すぎて受け答えなんか出来るか。
また一歩、俺が座っているベンチに足を踏み出した少年に俺は決意した。
逃げるが勝ちだ。
俺が立ち上がると、少年も足を止めた。
だがそんな事、気にしてられない。
俺はそのまま白バラのアーチを潜ってこの花園から脱出するんだ。
少年から三歩離れたら、全力ダッシュ。
けして後ろは振り向くな、だ!
俺は少年に背を向けて一歩、二歩、と距離を取った。
気合を入れて三歩目を踏み出した所で、見抜かれたのか慌てるように背中から声が掛かった。
「、お前・・ッ、俺がザンザスだと知っての態度かっ!」
・・・・ん?
ザンザスって名前にXが二つあるんだもんねーと喜んでたあの怖い人・・・?
俺はギ、ギ、ギ、と首をゆっくり回して、後ろの彼と初めて視線を合わす。
あの怒りんぼそっくりな黒髪に、目付きの悪い赤目、手に薄っすらと燃えて見える炎。
「・・・九代目の息子の、か?」
「あぁ」
憤怒ビンゴー!!
・・・・あぁ。今、ピーンときた。
離れに案内してくれたお兄さんが言ってた人間火炎放射器は
お前か、ザンザス!!!
俺が火炎放射器に勝てる訳もなく、俺は泣く泣くザンザスの前に出頭する事にした。
***
なぜか俺、今ザンザスと二人、ベンチで日向ぼっこしてます。
お日様はサンサンと俺達に降り注ぎ、白いバラ達は咲き誇り、見てくれと言わんばかりに綺麗に咲いている。
・・・・なのに、なぜ俺とザンザスなわけ?
チビだけど、ムサイ男が二人並んでベンチに座り、しかも無言。
俺にどうしろと・・・?!
話す気配の無いザンザスにチラリと視線を向けると、やはり不法侵入を怒っているようで物凄く眉間に皺が寄っている。
チビでこんなに怖いんだから、大きくなったザンザスにツナが腰を抜かせるのも同然だと思う。
俺がそんなくだらない事を考えていると、子供にしては低く掠れた声が隣から届いた。
「・・・魘されていた。何か夢を見ていたのか?」
ザンザスは俺を見ずに呟いたが、その言葉は間違いなく俺に向けたもので。
俺はそれに素直に頷いて返す。
確かにすごく怖い夢だった。
何だかすごく赤くて悲しい夢。
だけど、何でか内容は全く覚えていなくて、ザンザスに伝えたくても伝えられない。
俺、馬鹿だからゴメンなー。
再び訪れた沈黙に気まずい雰囲気が流れる。
俺か?俺のせいなのか?!
何か言わなきゃ、何か・・・っ
あ。あれは・・・
「虫がいるな」
場を和ますにも、もっと別の言葉があるだろ、俺ー!!
よりによってそれ?!
あんまりくだらない事を言ったから、ザンザスが目を見開いて驚いてる。
だって白バラの葉を食っている変な幼虫がうねうねしてるのが、気持ち悪くてつい目が行っちゃったんだもん!
誤魔化すように、俺は視線を泳がして、虫の数を数えた。
だ、だってー・・・。
「・・・駆除するか?」
嫌だけど、嫌だけどさ、ザンザスにやらせる訳にもいかないでしょ?
一応、不法侵入の罪悪感あるし、第一、農家の子みたいな格好して害虫駆除してるザンザスとか想像出来ないって。
「いや、あんなカス共まとめて俺が燃やしてやる」
出たよカス!使い方間違ってるって言ってあげた方がいいのかな?
小さい時からこれだから将来カスカス言っちゃうんだよ。
てか、燃やすって言ったー?!
そんな事したら花まで燃えちゃうじゃん!
「燃やすのは止めておけ」
怪訝そうに見てくるザンザスに楯突きたくはないんですけど、花は何も悪くないし。
第一、コゲコゲの花園なんて俺ヤダよ。
「燃えカスすら残すのも見苦しい。奴らはもとから絶たなければ」
「・・・・・・・、お、まえ、・・は、誰だ・・・?」
「?だ」
焦げ虫の死骸があちこち転がってんの嫌だし、虫は薬でも撒いてもとから対処しとかないとわらわら増えるんだぜー?
たっぷり間を開けて誰だなんて聞くから思わず名乗ったけど、まさか「花屋だ」とか答えて欲しかったとかじゃないよな?
てか、俺、もしかして今カスって言った・・・?
う、移ってんじゃん!
くそう!もう知るか。今は虫だ、虫!
大体、お前ら虫が俺の目に入ったせいで、俺は恥を晒してんだ。
この際、虫に八つ当たりしてやる!
「やるなら徹底的にだ、ザンザス」
赤い目をきらりと光らせたザンザスは俺の言葉に息を呑んだ。
覚えておく、と呟いたザンザスはどうやら本格的に虫駆除を約束してくれたらしく、これで俺の心と温室の平和は保たれた。
その後、すぐに父さんが迎えにきたので、ザンザスとはそこで別れた。
うん。怖い顔をしてるけど、アイツ花想いのいい奴だったよ。
* ひとやすみ *
・ザンザス様でした。
てか、ザンザスって目赤いんですかね?笑(根本的疑問
主人公の自己ツッコミ技術がどんどん高まっていきます・・・。(09/06/22)