ドリーム小説

雲の争奪戦は熾烈さを増していた。

相手はの動きをトレースしたロボットなのだから、甘く見たら負ける。

恭弥はそう踏んで、畳み掛けるように一気に攻め込んだ。

必然的に手数が増えたが、モスカも負けじと動き、二人の戦いは凄まじい速さの戦いとなった。

素早く流れるような攻防に隼人と武と了平は、何が何だか分からず目を瞬いていた。

だが、それも長くは続かなかった。

一際大きな金属音がした後、モスカと恭弥は飛び退いて離れた。

息を僅かに上げている恭弥は確かに大きな怪我はないが、小さな傷が体中に付いていた。

対して、モスカも同じ有様で、無数の傷が身体に刻まれている。

互いに決定打こそ入らないが、けして攻撃が届いていないわけではないようだ。

モスカと恭弥の緊迫した戦いを皆が見つめる中、ティエラだけは一人違う所を見ていた。




「あーもー!どっちでもいいから早く終わって」




フィールドの外をウロウロとしながらティエラはに視線を留めていた。

自動砲台の銃弾を避けるくらいしか動きのないをティエラは心底心配していた。

深夜のフィールドは薄暗く分かり難いが、の顔色は前にも増して白くなっている。




「どうしてこんな時に限ってチクワとアーサーがいないの?!」




雲の争奪戦が始まる間際になって、執事とアーサーは他に用事が出来たと言って来れなくなったのだ。

タイミングの悪すぎる同僚に悪態を吐いて、ティエラは縋るように視線を向けた。

お願いだから、何事もなく終わって。

ティエラの祈りに答えるかのように、戦局は突然動いた。

モスカの決定打が恭弥の顎に入り、恭弥が激しく吹き飛ばされたのだ。

衝撃で連鎖反応を起こしたトラップが発動して砂煙の中、恭弥は膝を着いていた。

悠々と見下ろしてくるモスカを恭弥は肩で息をしながら睨み付け、ゆっくりと立ち上がった。




「・・・嫌になるね。あのイタリア人は師匠面してくるし、草食動物は群れてるし、

 並中は変な集団にボロボロにされるし、全くもって気に入らない」




恭弥は袖で頬の血を拭うと、構えることもなく淡々とした視線をモスカに向けた。

落とすように呟く恭弥の言葉に耳を傾けていたは、そんな恭弥の様子になぜかドキリとした。




「だけど、一番気に入らないのは、何か困ってるくせに僕を頼らない兄さんだ」




言い終わるや否や殺気を滾らせ、恭弥はトンファーを構えた。

仕込んでいたトンファーの棘を煌めかせる恭弥にさすがのも顔を引き攣らせた。

今まで何度も恭弥を怒らせてきたけれど、これは本気の本気でヤバい。

喧嘩しながらもいつもどこか兄弟間に流れる甘さが残っていたが、今回はそんなもの微塵も感じさせる隙がないのだ。

モスカと睨み合う恭弥の背中を見ながら、は汗を一筋流した。


恭弥とて初めから怒ってたわけではなかった。

兄から一方的に縁を切られたが、それを言い渡した兄があんなに辛そうな顔をしていれば、

何かあったのだと誰でも気付く。

少しでもの役に立ちたくて、助けてあげたくて、恭弥は調べた。

持てる力を全て投入しての状況を調べた。

だが結局、今分かっている以上のことは何も分からなかった。

兄があんなになるほど助けを求めてるのに、原因に辿りつくことすら出来ない自分の不甲斐無さが悔しかった。

悔やんで悔やんで悔やんで悔やんだ結果、恭弥はキレた。

大体そんなに苦しいなら、何で人を頼らない・・・!!

僕と、必要ないけどその他の人間はみんな、兄さんを助けたいと思ってるのに、

兄さんはいつも一人で全部抱えて全部一人で解決しようとする。

兄さんは賢いのに、大馬鹿だ。




「・・・頼れないなら、頼らせてやるまで、だ!!」




最後の一言と共に全力で走り出した恭弥は、モスカだけを見据えていた。

追い詰めて、追い詰めて、僕を頼らせてやる・・・!

そのためにまずモスカを標的とした恭弥は、モスカの右手の銃撃を避け、無防備な左腕を全力で叩き付けた。




「しまっ・・・!!」




恭弥の気迫に呑まれたかのように動きが鈍ったモスカの腕が無残にも飛び散った。

が言葉を言い切る前にモスカは倒れ、嫌な音を立てて爆発を起こした。

グラウンドの砂を巻き上げる中、観客は一瞬の出来事に皆茫然としていた。

恭弥は煙を上げて横たわるモスカを背に、インパクトの瞬間奪い取ったリングを「これいらない」と

チェルベッロに放り投げた。

そして恭弥は振り返って無表情で立ち尽くすを見て言った。




「さぁ、おりておいでよ。ラスボスの兄さんを咬み殺さないと帰れないな」




ボンゴレの勝利が確定したというのに、未だやる気満々の恭弥だったが、

不意に背後からの気配を感じてトンファーを振るった。

ガキンと音を立てて払ったのは、フィールドの外から飛び掛かってきたザンザスだった。




「足が滑った」

「だろうね」

「ウソじゃねぇ。そのガラクタを回収しにきただけだ」




恭弥の後ろに転がってるモスカを顎で指したザンザスは、愉快そうに俺達の負けだと言い放った。

敗者の顔とは思えない極悪な笑みを見せたザンザスに挑発されて恭弥は殴りかかった。

ザンザスは先程思い付いた最後の悪巧みと、の弟の実力を直接見にフィールドに乱入したのだった。

恭弥の実力に時折ハッとさせられながらもザンザスはひたすら避け続け、一切反撃をしてはいない。




「チェルベッロ。この一部始終を忘れんな。オレは攻撃してねえとな」




明らかに何か企んでいる様子のザンザスに皆が首を傾げた瞬間だった。

ザンザスに攻撃を当てることに必死になっていた恭弥の足を掠って光線が駆け抜けた。

銃弾が掠めただけとはいえ、恭弥の腿は酷い傷を残して血が大量に溢れている。

恭弥がガクリと膝を着いた直後、今度はフィールドの外へとミサイルが墜落した。

ボンゴレ側にもヴァリアー側にも無差別でミサイルが撃ち込まれ、グラウンドは騒然となった。




「なんてこった。回収しようとしたが、向こうの雲の守護者に阻まれたため、モスカの制御がきかなくなっちまった」




さて、どう調理する、ドカスども。

どちらに転んでも面白いことになるとばかりに、ザンザスは楽しそうに爆撃の雨の中笑った。

爆炎があちこちで上がる中、フィールド内にがいないことにティエラが気付いたのは偶然だった。

何だか胸騒ぎがして辺りを見渡していると、ひっそりと校舎の影へと入って行くの姿を目撃する。


* ひとやすみ *
・キレた恭弥ほど恐ろしいものはない。そして悪戯を思い付いたザンザスも。笑
 少しくらい困ればいいんだと動いたボスですが、どえらいことになってます。笑
 何だかとっても楽しそうですが、兄様もまた動き始めています。
 今回のタイトルは激強な下降気流のことです。積乱雲から発生した下降気流は
 爆発的な威力で被害を甚大に広めます。何だか最近雲のことばかり調べてます。笑    (12/08/17)