ドリーム小説

霧の守護者戦のフィールドとして様変わりしてしまったグラウンドに誰もが唖然としていた。

有刺鉄線で丸く囲まれたエリアを、一定間隔で内側に向けて置かれた八門の自動砲台。

砲台から三十メートル以内に踏み込めばセンサーが作動し、容赦なく射撃される。

もちろんセーフティゾーンもあるにはあるが、中心部半径五メートルの円程度しかない上に、

地中には重量感知式の爆発物が無数散りばめられていた。

まるで戦場ではないかと叫ぶ了平に、内心激しく同意するはフィールド内でモスカと並びながら青褪めていた。

もちろんその向かいに立つ恭弥が、冷や汗を流すの内心に気付くことはない。

重い空気が立ち込め緊張感に包まれている中、突然ザンザスの笑い声が上がった。




「エース・・・・・・・、ぶはーははっはっ!!そいつぁ楽しみだ!!!」




完全に高みの見物を決め込んでいるザンザスにと恭弥は鋭い視線を向けた。

とはいえ、文句を言った所でこの勝負が終わるわけではない。

が深く溜め息を吐くと、不意に強い視線の恭弥と目が合った。

その視線があまりにも鋭く冷たいので、は初めて恭弥に恐怖を覚えた。

向けられているのは憎悪か怒りか。

そこに敬愛も羨望もなく、ただ刺すような冷酷さしか見えない。




「それでは始めます。雲のリング、ゴーラ・モスカ&VS.雲雀恭弥、勝負開始!!!」




チェルベッロが高らかと開始を告げたが、も恭弥も睨み合ったまま動かなかった。

シーンと静まり返るグラウンドに観衆の方が焦り出す。

微動だにせずただただ冷たい視線を向ける恭弥に、は心のどこかで納得していた。

――そう、だよなー・・・。

縁を断ち切ったのはなのだ。

恭弥にあんな目を向けられるのは自業自得で、それに傷付くのはお門違いである。

でもまさか、恭弥に嫌われるのがこんなにダメージがデカいとは思わなかったとは内心苦笑した。

それでも、は雲雀を捨てたことを後悔はしていなかった。

己が離れたことで家族の幸せが守れるなら、いくらだって身を削ろう。

そう決意したの目は輝きを消し、静かな光を湛えていた。




「来いよ。全力で相手をしてやる」




命を、家族の幸せを懸けた戦いだからこそ手を抜くつもりはない。

が右手人差し指を上に向け、来いと誘うように二度動かすと、恭弥は極悪な顔を浮かべて地面を蹴った。

言われなくてもそうするつもりだと恭弥が殺気を爆発させた瞬間、雲の戦いは唐突に始まった。

真っ直ぐを目指して走ってくる恭弥はトラップをいくつか踏み、その背後でいくつか爆発が起こる。

も放射されるガトリングを僅かな労力で避けながら、ただ恭弥を待っていた。

互いに目を逸らさず衝突の時を待つ二人に隼人と武、了平の三人は息を呑む。

突っ込んできた恭弥はトンファーを構えてに飛び掛かった。

しかし、不意に横から自動砲台とは違う起動音が聞こえて、恭弥はとっさに身を躱した。

すると元居た場所を銃弾が数発通り過ぎ、遥か後ろの地面に着弾して爆発した。

今の攻撃と自動砲台に距離を取らざるを得なかった恭弥は、を庇うように佇むモスカにようやく視線を止めた。




「何、このおもちゃ」

「モスカがお前と遊んでくれるそうだ」

「これに僕の相手が務まるとは思えないね」

「それはやってみてからのお楽しみだな」




どうやらモスカを倒さない限り、は出てこないらしい。

ブースターを噴かせて空中滑空してくるモスカに、恭弥は諦めてさっさとこれを倒すべくトンファーを構えた。

左腕の銃撃を躱し、無防備な右腕を破壊しようと恭弥は思いっきり打ち込んだが、

モスカは軽やかな動きで身体を半回転させ恭弥の打撃を受け流すとそのまま蹴り上げてきた。

恭弥はとっさにトンファーでガードしたが、パワーが違うため易々と吹っ飛ばされてしまった。

飛ばされた先のトラップが爆発し素早く避けたが、砂埃から出てきた恭弥は左腕と頬に傷を作っていた。

ヴァリアーの面々は一連のモスカの動きにギョッとしていた。

ザンザスも思わず身を起こして、を睨む。




「アイツいつの間に・・・」




今の受け流した敵の力をそのまま反撃に使う戦い方は恭弥もヴァリアーも見覚えがありすぎた。

恭弥はペロリと口元を舐めて立ち上がると感心したように呟いた。




「へぇ、その巨体で兄さんと同じ動きが出来るんだ」

「何のために俺がここにいると思ってるんだ?そいつの動きは俺をトレースしてプログラムを組んだ」

「それではが二人いるようなものではないか!不公平だ!!」

「問題ありません。ヴァリアー側の守護者は様とゴーラ・モスカの二人になっていますが、

 モスカが戦闘不能になった時点でヴァリアー側の負けとなるようになっております」




了平とチェルベッロの話など恭弥にとってはどうでもよく、話が終わる前に恭弥はモスカに向かって走り出していた。

ザンザスはが勝手にモスカのプログラムを弄っていたことを初めて知って眉根を寄せていた。

最近こそこそと何かしているのは知ってたが、まさかそんなことをしているとは思わなかった。

日本にある研究所には一度潜入しているので、プログラムを書き換えることは出来ないことはないが、

外部からの変更は果てしなく根気を使う作業をしなければならないはずだ。

一体何がをそこまで駆り立てるのかとザンザスはフィールドに佇むを見つめた。


* ひとやすみ *
・ついに雲戦が始まりました!そしてまさかのビルドアップモスカ!
 兄様と同じ動きをします。恭弥は兄様の模造品に勝てるのか?!
 今回のタイトルの意味は積乱雲。高く高く積み上げられる孤高の雲。
 晴らすことは出来るのでしょうか?乞うご期待!!笑          (12/08/16)