ドリーム小説

俺は心底疲れ果てていた。

そりゃ、こんだけしんどけりゃ、皆が顔が白い白い言うはずだ。

やっぱ慣れないことなんてするもんじゃない。

執事やティエラを騙し、ザンザス達を騙し、弟を騙し、そして自分をも騙している。

普段こういうことは執事が好んでやっている。

だけど今回はその執事の目を掻い潜り、俺一人で策を弄した。

俺自身、一体いつの間にこんな真似が出来るようになっていたのか分からないが、

思ったよりも簡単に周囲を操ることが出来、画策出来た。

ただ、嘘を吐くのは猛烈にしんどかった。

どれもこれも全ては争奪戦を終わらせるためだ。

そのために俺は一切妥協も容赦もしなかった。

途中、アーサーとガレノスの医者二人を巻き込んだが、彼らは賢くやっぱ鋭かった。

おかげで、アーサーが俺にくっ付いて離れなくなったけど。




「おい、。何だそれは」

「あぁ。心配性のティエラが付けた医者だ。要は監視だ」

「・・・お前んとこの女共は相変わらずだな」




霧の争奪戦の翌日、昼頃に起きてきたザンザスが呆れた顔でこっちを見てくる。

当のアーサーはニコニコとしてザンザスを睨んでいた。

お前、ザンザスにケンカ売るとか強者だな・・・。




「昨夜の争奪戦だが、敗者が逃げた!今、ゴーラ・モスカが追っている」

「マーモンは家出か」

「・・・お前、なぜ奴が負けたことを知ってる?居たのか、あそこに」




レヴィの言葉にポツリと呟けば、ザンザスが強い視線を向けてきた。

おっと、原作知識が零れたか。

素知らぬ顔で首を振れば、意味ありげな顔でザンザスが睨んでいた。

・・・え?何?お前何知ってるの?!

内心汗をダラダラと流していると、ザンザスが溜め息を吐いた。




「まぁ、いい。お前のやることなんて考えるだけ無駄だ」




そうか・・・・・・。

でも何か、俺は悲しいぞ・・・。

それより、と前置きしたザンザスは変な顔をして俺を見た。




「今夜は雲の守護者戦だが・・・」

「何が聞きたい?俺が負けるとでも?」

「ヒュー!言うじゃん、

「俺は勝つぞ」




はやし立てるベルにもう一度そう言えば、なぜか全員が固まった。

おかしなことは言ってない、よな?

晴戦は負け、雷戦で勝ち、嵐戦で勝ち、雨戦で負け、そして霧戦で負けた。

五戦で二勝三敗。

つまり、次の雲戦で俺が勝てば、三勝三敗で丸く治まるわけだ。

なら俺はたとえ相手が恭弥だろうと全力で戦うまでだ。

俺、頑張るぜ宣言をして室内を見渡せば、なぜか皆に目を背けられた。

それは無理ってことか?!




「・・・別に、が負けるとか王子は思ってないし」

「お、俺達もだ!なぁ、ボス!」

「・・・疑っちゃいねぇが、モスカとどっちが戦うんだ、?」




下手な慰めいらねーよ、と不貞腐れてたら、ザンザスが聞いてきた。

あーそれだけど、明日は諸事情により、モスカに頑張ってもらうつもりだ。

でも一応、人間代表雲の守護者して少しは戦った方がいいのかな?




「・・・俺は必要か?」




分からなくて首を傾げると、レヴィとベルが息を呑んで固まった。

てか、お前ら、何でさっきから変な物を見るような目で俺を見るわけ?!

ザンザスは咽喉を鳴らしておかしそうに笑うと、首を振った。




「いや、必要ねぇ」




あ、よかったー。

正式に許可が出てホッとしていたら、何がツボに填まったのかザンザスがクツクツと肩を揺らして再び笑い出した。

お前のツボが俺には分かんねーよ・・・。









***







「いいですか、モスカが負けそうなら、すぐに負けを宣言して下さいね!」

「・・・ギブアップしたところで、恭弥が聞くとは思えないが」

「貴方の弟なんですから、何とかして下さい!」




そんな無茶な・・・。

自室に戻ってアーサーに診察してもらいながら、俺は小言を聞かされていた。

俺の画策を知っているアーサーは小姑と化した。

はっきり言って、お前、キャラ変わってないか?




「・・・俺だって馬鹿じゃない。勝てばいいんだろ。圧倒的に」

「ボス、私は貴方が負けることを心配しているのではありませんよ。ただ、用心に越したことはないと言ってるのです」

「分かってる」




そう言うとアーサーは大袈裟に溜め息を吐いて、やれやれと言わんばかりに首を振った。

む、何だその態度は。




「・・・出場を取り止めろと言っても無駄でしょうから言いませんが、とにかく無茶だけはしないで下さいよ。ご武運を」




何だか釈然としないが、一礼して退室したアーサーを見送って俺は目を閉じた。

・・・本当に、疲れた。

ソファーの背に身体を預け、深く溜め息を吐くと急に眠気がやってきて俺はそのまま眠りに落ちた。

意識が落ちる間際、部屋の外で何か音が聞こえた気がしたが、眠気には抗えず、俺は微睡に誘われた。

まさか扉を出たアーサーが笑顔の執事にとっ捕まっているとも知らず・・・。


* ひとやすみ *
・相変わらず兄様は勘違いされてます。笑
 普通に必要か聞いただけなのに、深読みされて「俺が必要なほど弱いのか?」と取られてます。笑
 しかも何だかアーサー医長が出張ってる上に、キャラがおかしくなってきました・・・。
 さてさて、どうなることやら。続きをお楽しみに!                  (12/08/13)