ドリーム小説

「マフィア間のリング争奪戦?この日本でそんな馬鹿らしいことを本当にやる馬鹿がいるのか?」

「こらこらダイスケ。そのリング戦の参加者の一人が我らがボスなんだよ」

「・・・その細目で笑うのを止めてくれ、アーサー。悪巧みしてるようにしか見えない」

「心外だな」




リーダーこと執事チクワとかいう明らかな偽名を名乗る女性が私の前に現れたのはそう昔のことではない。

医療に携わっていればいずれは命の重さと、医療の可能性に直面する。

私はその二つを心の天秤に乗せ、そして好奇心と飽くなき探究心から可能性へと傾倒していった。

それからの私は自分でも悪どいと言えるほど非道なことに手を出したし、モラルなんてあってないようなものだった。

もちろん、そんな私の所業がバレないはずもなく、私は追われる身になり、泥水を啜るような生活が続いた。

惨めな日々を送りながらも闇医者として細々と生き長らえていた私の元に彼女はある日突然現れたのだ。




『私の主のためにその意地汚い医療技術を使いなさい』




はっきり言って腹が立った。

自身がどんなに罵られようと構わない。

だが、私が突き詰めて求めてきた医療を見下され、貶されるのだけは我慢ならなかった。

私は部屋に転がっていたメスを投げ、注射器を片手に彼女に飛びかかっていた。

・・・まぁ結果は予想通り、彼女にコテンパンに伸された上に、ちくわなる練物如きに注射器を封じられたわけだ。

それからは彼女に戦えない医師など必要ないと、理解不能なまでに扱かれ、同じような境遇の人間もどんどん増え、

気が付けば私はそんな彼らの中でも古株で、医長とか呼ばれる立場になっていた。




「ダイスケ、生き残りたいならリーダーには逆らわないことだよ。そして彼女はボスに心酔している」




私は身に染みている経験談を先日日本で引き入れた新入りに説いて聞かせる。

この新入りの医療センスはトップクラスのこの医療チームに即組み込まれるほどずば抜けたものだった。

ただし、この男も同じくハイセンスにぶっ飛んだことをしたので、国に捕まり無期懲役を言い渡されたらしい。

一体どうしてそんな男がここにいるのかは私の関与する所ではないし、その真偽も興味はない。

この鼻っ柱の高い男もいずれ私達と同じように、自信も誇りも彼女にポッキポキに折られひれ伏すのだろうが、

きっと私達と同じようにこの組織でずっと探していた居場所を見付けるのだろう。




「おい、アーサー。逆らうなっつーわりに、命令違反だろこれ」




ポケットに手を突っ込みながら付いてくるセイヤーが不服そうに私に声を掛けてきた。

巻き込まれるのは嫌だとぼやきながらもきちんと付いてくる辺りが可愛げがある。




「・・・リーダー、ボス殺せない」

「あぁ?!シンは言葉少なすぎて意味不明なんだよ!」

「おバカね、セイヤー。命令違反してもボスに助けを求めたらあの女に殺されないって意味よ」

「それは上手くいけばの話だよ、ガレノス。ボスに切り捨てられたら全て終わりさ」




結局の所、リーダーの命令に従わなかった私達の命運はボスの対応次第ということだ。

電話で彼女に伝えた通り、ボンゴレ十代目候補や争奪戦に興味はある。

だが、私達はあの悪魔・・・執事チクワを従えることが出来るボスを見てみたかったのだ。

そして私達は夜の学校で恐ろしい物を見た。




「・・・あの女が、笑ってるッ」




セイヤーの声にダイスケ以外が血の気を失い慄いていた。

ラブレーは車に残って正解だっただろう。

悪夢のような光景の先に私達のボスがいた。

酷く洗練された空気は刺々しく、リーダーも遠く及ばないほどだ。

争奪戦が終わりに近付いた頃、事態は急速に動いた。

突然立ち上がったボスは低い声でフィールド内のヴァリアーに声を掛けた。




「スクアーロ、俺の言った言葉、覚えているな?」




その一言で一気に空気が張り詰め、緊張が辺りを包んだ。

ボスが以前何をS・スクアーロに伝えたのかは分からないが、失敗は許さないとその目は言っていた。

敗北を悟り、ヴァリアーの名に砂をかけたことを奴が謝れば、身体が硬直するほどの殺気が突き刺さった。




「大馬鹿野郎がッ」




ボスが吼え痛さを感じる空気に冷や汗が噴き出る。

愚か者に用はないと背を向け立ち去るボスに、さすがと言うべきかザンザスが声を掛けていた。

だが、声は掛けられたものの、好きにさせろと言い捨てたボスの殺気に返答は出来ないようだった。

ボスが私達の視線から消えた瞬間、ダイスケが崩れ落ちた。




「・・・あれは、何だ」

「あれが私達のボスだよ」




震える手を押さえつけて、私は見栄と根性でそう返した。

その後、リーダーから再び電話があり、呼び出された私達は茫然とする羽目になる。




「おい、何かあんな所に穴開いてんぞ・・・」

様が蹴破りました。貴方達の仕事はスクアーロを治療することです。出来ますね?」




有無を言わさないその言葉に肩を震わせながら頷けば、興味を失ったように彼女は再び穴に視線を戻した。

彼女はチェルベッロに見付からずボスが無傷で戻ることをまるで当然のように言う。

それだけ我らがボスは凄いのだと感歎する暇もなく、それから怒涛の逃走劇だった。

血塗れで現れたボスは何でもないことのように三階から足場を使って飛び降り、予想通り無傷だった。

リーダーに殺されないよう慌てて担架に患者を乗せると、彼女は私を見て呟いた。




「遅れたら承知しませんよ」




その瞬間、私達は身の危険を感じて必死に走り出した。

混乱しているダイスケをシンが無言で担ぎ、前を走るボスとリーダーを全速力で追い掛ける。

成人男性一人抱えて何て速さだ・・・!

化け物級の二人を見失わないよう何とか追い掛け、見慣れた車に飛び乗った。

すでに疲労はMAXに近かったが、私達に休みは与えられなかった。




「すごいな。医者がこんなに動けるとは」

様のNO.1医療チームですから、これくらい当然です」

「・・・あいつの治療、出来るか?」

「「「「「「 当然! 」」」」」」




そう言わざるを得ないほど、ボスの後ろでリーダーが恐ろしい顔で睨んでいた。

しかし、実際、私達がいるのだから助けられないはずがない。

それだけの自信をここにいる誰もが培ってきた。

治療が始まればリーダーもボスもない。

ここは我々のテリトリーだ。


ある程度治療を手伝った後は若手に任せて私はボスを見た。

無傷なのにあの血の浴びようは、明らかに誰か殺している。

それもあの血液量は人一人ではとても賄いきれない。




「ボス。その血は貴方のじゃないんですよね?」

「あぁ。俺は怪我一つない。これは鮫の血だろう、多分」




鮫の血か。なら確かに可能だが、後ろに付いた多分は何だ?

やはり侵入のためにチェルベッロの一人や二人殺したに違いない。

淡々と言うボスに背筋を震わせると、ボスは眉間に皺を寄せて私を見た。




「・・・俺のことはと呼べ」

「了解しました」




拒否なんて出来る空気じゃなかった。

了承したはいいが、名前でなんて恐ろしくて呼べそうもない。

倫理もモラルも強制されないこの組織は嫌いじゃないが、どうやら幹部と慣れ合うことは私には無理そうだ。


* ひとやすみ *
・細目のアーサー視点でお送りしました。第三者の視点で見ると執事もまた別の生き物と化します。笑
 彼らにとって執事は怖い存在ですが恩人です。ゆえに逆らえない絶対的な存在。
 そしてその上に立つ兄様を彼らは最早この世の者とは思ってません。災害級の何かでしょうかね。笑
 そりゃ心も治まらないなと思う反面、やっぱり思うのは兄様不憫。少々能力過多の普通の人なんですが。笑
 心配なのは名前変換がオリキャラと被らないかです。私情でおもいきりありがちな名前がチラホラと。
 おかしなことになってたらごめんなさい。これ以上出る予定はないので、最後までお付き合いいただければ光栄!  (12/06/16)