ドリーム小説

あっれー・・・?

何か、ちょっといろいろあってブチ切れしてたらおかしなことになっていた。

執事とティエラに八つ当たりした記憶があるから、謝ろうとして気付いた。

・・・なんで君達、そんなキラキラした目で俺を見る?




「それで次は何する?!」

「えっ、あぁ・・・」

様、以前言われていた医療チームの配属先は・・・」




何かよく分からん。

よく分からんが、二人が異様に張り切っていて、仕事が増えました。

思うようにいかないことが多すぎてイライラしてた所に二人を見付けて、

自分を犠牲にしてる女の子にこっそり守られてた上に、俺の部下なふりしてレディの言うこと聞いててさ、

お前ら俺の部下なんだから俺の言うこと聞けよー!って惨めな自分を呪って駄々捏ねたんだよね。

しかも死んでる人間に嫉妬して潰すとか物理的に無理なことほざいてホント情けない。

でも何か俺の不甲斐無さを見たからか、二人はレディの命令を捨てて、今後は俺を支えるために生きると

情けない俺を叱咤するため、俺の元に帰ってきてくれたのだ。

そして今に至るのだが、女の子の気持ちはホントよー分からん。







***







さて、俺の目標は、俺のせいで始まってしまったこの争奪戦を止めることだ。

一体、どうやったら止まるのかなんて、そんなもん俺に分かるわけがない。

ただ、最悪の事態だけは避けたいんだ。

俺はただ流れに乗るだけしか出来ない自分を歯痒く思いながら、ヴァリアー隊服に身を包んだ。

あと数時間でまた争奪戦が始まる。

俺は静かなフロアを横切り、ベルの部屋へと向かった。

誰も近くにいないことをいいことに、勝手に中へ入ると怪我だらけのベルがまだ眠っていた。

昨夜の嵐の争奪戦で辛勝したはいいが、酷い怪我を残していた。

首にかかるリングをきつく握って離さないベルを見ていると、自然と眉根が寄る。

こんな物のために、こんなくだらないことのために、なぜ皆傷付かなければならないんだ。

一体世界は俺にどうしろと言うのだろう。




「自分の血を見るのが嫌なくせに、なりふり構わずリングを掴んで離さねぇとは、異常な奴だゼぇ」




振り返るとスクアーロが腕を組んで扉にもたれ掛かってベルを見下ろしていた。

馬鹿にするような声音に俺も心中で同意したが、それよりも俺の胸を占めているのは別のことだった。




「・・・スクアーロ、お前は引き際を間違えるなよ」

「ゔぉぉい、!それは俺が引かなきゃならない状況になると言ってんのかぁ?!」

「別にお前が弱いとは言ってない。ただ無茶はするなと言ってるだけだ」

「ふん!が心配することじゃねぇ。文句のない勝利を奪って来てやる!」

「ん、・・・もう、うるさいんだけど!」




どこに隠し持っていたのか、寝ていたはずのベルがナイフを投げ付けてきた。

それを俺達はドキドキしながら辛うじて避けて、ようやく目覚めたベルを見た。

ダルそうにベッドに横たわってる怪我人にスクアーロが怒鳴りつけてるのを見ていたが、

俺の胸中は未だ晴れていなかった。

正直、原作通りにいくのか、いかないのか、もう俺には判断がつかない。

出来れば逸れてほしいと願いながら、ベルと喧嘩をしているスクアーロを見つめる。

さっきの俺の忠告がどれだけアイツに届いてるのか怪しいもんだ。








***








「何だ、あれ・・・!!」




夜の並盛中に現れた巨大アクアリオン内で、俺達は綱吉達の前に姿を現した。

水が流れ落ちる音を聞きながらヴァリアーの俺達は、二階から一階にいる綱吉達十代目候補ファミリーを見下ろす。

綱吉が怯えるように指差したのは、シュオンシュオンと音を立てるゴーラ・モスカ。

まぁ、原作と違ってここで初披露だもんな。




「こいつはゴーラ・モスカだぁ!今後コイツが雲の守護者になる」

「雲の守護者って・・・、じゃあ相手はヒバリさん?!」

「まてよ!雲っていえば、だろーが!!」

「馬鹿だね、君達。つまりが出るまでもないってことじゃないか」




スクアーロの言葉に綱吉と隼人が噛み付くが、マーモンの容赦ない一言がそれをこけおどす。

何かすっごい馬鹿にした風情で言ってるけど、実は数時間前にヴァリアー側も初めて見たモスカに

綱吉達と同じ反応をしたんだな、これが・・・。

ザンザスが睨みながらこいつらを無理矢理納得させた台詞が、今のマーモンの言葉ってわけだ。

・・・やっぱなんか俺、ラスボス扱いじゃねー?

つーか、これ聞いたら恭弥怒るだろうな、絶対。

ボーっとしてたからあんま覚えてないけど、この前会った時もすっげー怒ってたし、

今回、校舎ものすっごい弄られてるもんな・・・。

透明な強化ガラスで塞がれた窓から外を眺めると、向かいの校舎の給水タンクの上にいる恭弥を見付けてしまった。

異様な雰囲気の恭弥に思わず肩を震わした。


つーか、合わせる顔がねぇって。

何かいっぱいいっぱいで混乱してたのはあるけど、俺、アイツを傷付けるようなこといっぱい言った。

正直、今でもアイツの兄でいる自信はないし、異物の俺が雲雀家に戻っていいとは思ってない。

もうしばらく時間がほしい。

恭弥を見ていられなくて顔を逸らせば、今回は争奪戦に付いて来た執事に手を引かれた。




「ザンザス様はもう外へ行かれましたよ。様も早く」

「・・・あぁ」




執事に呼ばれて俺は少しホッとしながら、恭弥に背を向けた。

執事に導かれるままにヴァリアーの元へ向かいながら、俺はちらりとスクアーロの背中を見た。

頼むから、死に急ぐなよ、スクアーロ。

そして雨のリング争奪戦の幕が切って落とされた。


* ひとやすみ *
・相変わらずのヘタレっぷり。歯痒く思いながらも流される兄様はどこへ向かうのか。
 そんなこんなでぐしん編後編です!ここから慌ただしくなりますが、
 ラストまでついて来て下さると嬉しく思います!!雨戦はじまるよー!     (12/04/15)