ドリーム小説

ディーノは現状がさっぱり掴めていなかった。

恭弥が突然指輪の話を聞くと言って訪ねて来たのはまぁ良いとしよう。

だが、なぜこんな朝っぱらから襲撃された挙句、なぜ自分の部屋で恭弥が偉そうにふんぞり返っているのか。

気が変わる前にととりあえず説明してやったものの、話し終えるとそんな疑問が湧き上がってきた。

ディーノは何だか理不尽な状況に首を傾げながらようやくパジャマを着替えたのだった。




「それで?一体どうしたんだお前?」




恭弥は不機嫌さを隠そうともせず凶悪な顔つきをしていた。

話を聞くにつれて機嫌が悪くなっていく恭弥に見て見ぬふりをしたかったディーノだが、

家庭教師として放っておけないという使命感が働いてしまった。




兄さんに縁を切られた」

「え?!」

「あの様子じゃあなたも同じだよ」

「・・・兄さんのことだから何かあるんだろうが、可愛がってた恭弥を引き離すとかかなりヤバいことだろうな」




驚いてはいたものの、ケロリと答えたディーノに恭弥は眉根を寄せた。

ディーノとしてはかたしろ事件という前例を知っていたため、何か理由があるのだと裏を読んで言ったのだが、

恭弥はその楽観的すぎる発言がひどく不快でならなかった。

どう見てもあの兄さんは・・・。

最後に見たの顔を思い出して恭弥は深い後悔に苛まれていた。




「兄さんを何だと思ってるの?兄さんは・・・、兄さんだって・・・・感情ある人間だ」




そう、人間だったのだ。

誰から見ても完璧であるために恭弥はを神のように見ていた。

やること成すこと全てが正しく、自分には分からない何かすごい物を持っていると思い込んでいた。

だからこそそのすごさに圧倒され、自身の感情にまで考えが行かなかった。

一体、雲雀の何を見ていたのか。


――完璧な人間などいない。


そう呟いた恭弥の声にディーノもハッと息を呑んだ。

兄のすごさにその悲しみや苦悩など理解しようとすらしなかった。

いや、そんなものはないと思っていたのだ。


昨夜のは明らかに傷付いていた。

いつもの表情を保てないほどに。

一体何がそんなに兄を追い詰めたのかは分からないが、恭弥は今ものすごく腹が立っていた。

それは気付かなかった自分に対してだとか、何も言わない兄に対してだとか、複数入り混じっている。

だんだん不機嫌さに殺気が交ざってきた恭弥にディーノは引き攣りながら一歩後退した。

・・・何だか嫌な予感しかしない。




「兄さんは僕が止める。それで、僕から兄さんを奪って行ったくせにあんな顔させてる奴らも咬み殺す!」




息巻く恭弥にぎこちなく頷いたディーノは、次の瞬間目の据わった恭弥と視線が合って鳥肌が立った。

ゆらりと立ち上がる恭弥に冷や汗を流すディーノ。




「・・・でもその前に、兄さんの状態に全然気付かなかったあなたを咬み殺す!」

「やっぱこうなるのかよ!!」




トンファーを振りかぶって恭弥は鬼の形相で追い掛けてくる。

俺、こいつの家庭教師のはずなのに・・・!

少しも敬ってくれない生徒にディーノは涙した。









***








部屋の片隅に聳えるモスカの前でとザンザス、九代目の三人は立ち尽くしていた。

黒幕はおらずの前に立ち塞がる者もいないというのに、もはや争奪戦は止められない所まできていた。

死炎印の契約が成立しており、神までもが動いているのだ。

一人の力でどうにか出来る次元をすでに超えており、ただ事態が転がるのを見ているしか出来ない。

せめて運命の軌道修正をしようとしたのだが、やはり変えられないのか、

モスカは起動させられ今一人の男の命が削られようとしている。




「後のことは・・・」




途中で言葉を切った九代目はザンザスとに目を向けた。

その意味有り気な視線にザンザスは舌打ちをして、さっさと入れと言わんばかりに顎でモスカを差した。

も何も言わずただ見つめ返していただけだったが、九代目は満足したようで自らモスカの中に入った。

もうやることは全てやったので、モスカに入った後のことは天に任せるのみ。

配線を繋がれながら朗らかに笑った九代目は笑顔のままモスカの扉を閉めたのだった。

バタンと閉じられ、ゆっくりと炎が供給されて起動音がし始めたモスカにザンザスは耐え切れないように笑い出した。




「くはははは!馬鹿な野郎だ!これで放って置いても潰し合いだ!」




設定通りザンザスの命令を聞く新しい雲の守護者の誕生にはただ静かに佇んでいた。

あれからずっと黙ったままのに気付かず、ザンザスは馬鹿笑いを続けている。

は動き出したモスカを一瞥すると、笑い続けるザンザスに背を向けて部屋を出て行ったのだった。


* ひとやすみ *
・兄様が落ち込んでるとかなり書きにくい・・・!早く元気になってー!!
 さて、あちらこちらでいろんなことが動き始めています。ホント、争奪戦はどこいったんでしょね?笑
 あと数話書いたら一端、編を切ります。思いの外、長くなってしまったので・・・。
 最終話までのあらすじは出来てるのに、何で進まないんだろう?とにもかくにも頑張りますー!!              (12/01/22)