ドリーム小説

「チクワ、ティエラ、大事な話があるから私の部屋に来て頂戴。はダメよ。男子禁制」



声を掛けられた彼は突いていたケーキから顔を上げたものの、特に表情を変えることなくすぐに視線を戻した。

私はそんなに苦笑しながら、二人を引き連れて私室の扉を潜った。

なぜ呼び出されたのか分からないとばかりに表情を曇らせる執事とティエラに私は一つ頷いて椅子を勧めた。

立場や忙しさを理由に断られたりもしたけど、大事な話だからと私は押し切った。

渋々着席したものの、広間にケーキとを残してきたため、二人ともソワソワとしていた。

まぁ、そりゃそうよね。

ゆりかご事件から無事帰ってきたと思ったら、今度はキャバッローネ9世夫妻とのゴタゴタ、

挙句に突然の帰国発言で手がいくつあっても足りない。

まぁ圧倒的に私が頼んだ仕事の方が多いけど。




「それで大事な話とは何でしょう、主」

「あの、チクワだけじゃダメですか?私は準備に戻りたいんだけど」

「確認が済めば戻っていいわよ。執事、例の口座と不動産の移譲は?」

「はい。全て様名義にしておきましたが」

「ティエラ、組織の指揮系統の引き継ぎは?」

「え、上層部にはの名前で通しておきましたけど」




私の問いに答えた二人は互いの言葉にギョッとして私を見た。

それぞれに指示を出していたので、互いの命令内容を知らないのは当然なのだ。




「どういうことですか!どうしてこの時期に慌てて様に引き継ぐのか気にはなっていましたが、まさか・・・」

「え?えぇ?!まさかを組織に巻き込む気?!」




ようやく真剣にこちらを見た二人に私は内心苦笑した。

どうやらは好かれているらしい。

美人二人を手玉に取るとは流石よね。




「貴方達、が好き?」

「え・・・」

「私のことは?」

「何を言って・・・」




困惑する二人に私は微笑んだ。

答えなんか聞かなくても分かっている。

そしてコレを伝えて彼女達が何と答えるかも分かっている。

だけど、止めてあげることは出来ない。




「私は間もなく死ぬわ」




一瞬何を言われたのか分からなかったようだが、理解した途端に二人は冗談でもそんなこと言うなと怒鳴りたてた。

いつも聞かされる小言は煩わしいばかりだけど、私を心配するこの怒声はなぜか心地よくて笑ってしまった。

それすらも怒られながら、私は突撃してきそうな勢いの二人を片手で制して、もう一度言う。




「いいえ。間違いなく死ぬ」

「・・・ッ!!」




目に力を込めて強く言えば、今度こそ二人は力を失くしたように黙り込んだ。

絶望と恐怖が入り混じったその目に気付きながらも私は止めることはしない。




「遺言と思って聞きなさい。手続き通り、私の全てをに。そして・・・、最後の予言を貴方達に託すわ」

「最後の、予言?」

「この先、赤毛のシトという男が必ず現れる。その男はと敵対するでしょう。でも貴方達はシトに従いなさい」

「「 な・・・ッ!! 」」

「私達に主となる様を裏切れというのですかッ?!」




揺れる瞳で私を見ていた執事は青褪めて立ち上がり、激情のままに叫んだ。

ティエラも承服出来ないとばかりに首を振って震えている。

どんなに酷いことを言っているか分かっているわ。

それでも私は最後まで足掻きたいのよ。




「えぇ、裏切りなさい」




その直後、唇をきつく噛み締めた執事は荒ぶる感情のままに私の頬を叩いた。

パシンと乾いた音が部屋にこだますると、ティエラが息を呑んで私と執事を見つめる。

ここまで感情を揺らす執事を見たのは、出会ったあの日以来、ね。

私が真っ直ぐに執事を見つめると、執事もただ黙って私を見つめ、一筋の涙を零して椅子に崩れ落ちた。




「・・・主はいつもそうです。勝手なことばかりして」




長い付き合いだからこそ分かることもある。

もう覆すことは出来ないと悟った執事は力なく項垂れ、それに気付いたティエラは目に涙を浮かべて嗚咽を漏らした。




「これは試練よ。も貴方達も傷付くでしょうね。でもそれがいずれのためになる。私のお願い聞いてくれる?」

「・・・貴方はズルすぎる」

「えぇ」




彼女達が断れないと分かっていてそれを聞く私は酷い人間なのだろう。

そして私の最後の願いは、私の死後、強力な呪縛となって彼女達を縛る。

声を殺して泣く二人を私室に残して、私は隣の部屋でに残すメッセージを録画することにした。

カメラをセットしてボイスチェンジャーを掴んだ私は、歪んだ自分に心底嫌気がさした。

・・・のためですって?

違うわ。全部自分のためじゃない。







***







のため、原作のため、そんなのはただの偽善で言い訳だ。

玩具のように私を世界に放り込み、必要なくなったら拾いに来る神に私は報復したいだけなのだ。

神の意思を知る私が動くことで、世界に混乱を招くだろう。

たとえそのせいでこの世界から排除されようと、一矢報いるための手はもう打った。

、私が動いたことで間違いなく貴方の試練は軽減するでしょうね。

同胞を助けたい、を想っている、この言葉に嘘はない。

でも、、私なんかを簡単に信じてはダメ。

だって私は赤き魔女なんだから。

私はシトを困らせるためだけに貴方を、執事達を利用した。

幾度となく世界を巡り、いつしか人でなくなった私を彼らは半神[デミゴッド]と呼ぶ。

私の性格が悪くなったのは絶対アイツらのせいね!




『レディ、・・・君は、敵、なのか?』




虫食い状態でほぼ未来など読めやしないが、その言葉だけははっきりと聞こえた。

射抜くような視線はまるで全てを理解しているようで、今と変わらず金に輝く深い瞳の色に私は震えた。

先ほどカメラに答えたように、私はもう一度同じ言葉を呟いた。




「・・・そうね。私はの敵よ、多分だけどね」




ねぇ、

私は信用ならない赤き魔女で半神。

――でもね。

でも、残り半分の、人である私が私にこう叫んでるの。




「大好きよ、




口から零れた想いの欠片に小さく笑うと、部屋の外で私達待つ同胞が気になって私はその部屋を出ることにした。

隣の私室で呆然と座り込む執事とティエラはさっきしたお願いのショックでまだ動けそうにない。

叩かれた頬を撫でて私は二人の背を強引に押して、彼に会うため笑顔で扉を開けた。


* ひとやすみ *
・わー!ごめんなさい!久しぶりです!ここにきてレディ視点でせむい編72話の裏側です。
 なんだっけー?と思いつつ読み直していただけたらありがたいです。
 こうやって見るとレディの苦悩やら想いやらが一言一言に含まれてるのが分かると思います。
 レディ側の話も書きたいですが、そうなると別の話になってくるのでとりあえずここまで。
 さてまた兄様に頑張っていただきたい所なんですが、どうなることやら・・・。          (11/10/04)