ドリーム小説
『・・・そうね。私はの敵よ』
その言葉に頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
どうして死んだと思っていたレディにまで裏切られなければならないのか。
記憶の中の彼女だけでも俺の味方でいて欲しかったのに。
あまりの事実に俺の心は砕け散ってしまいそうだった。
虚ろな目でぼんやりと画面を眺めていると、レディは腰に手を当てて力強く付け足した。
『
多分だけど!』
・・・・・・は?!
え?今何て言ったー?!多分って何ー?!
つーか、何でそんなに自慢げなんだよ!踏ん反り返っていうことじゃねーだろ!!
混乱する俺を余所にレディは「え?敵っぽいよね?」とか言いつつ首を傾げている。
『うーん。私的には味方してるつもりなんだけど、そこはやっぱの気持ち次第だと思うのよねー』
えぇー・・・・・。
何だよそのオチ・・・。
収拾つかないこの気持ち、どうしてくれる?!
数秒前の俺のシリアス返せ、このやろー!!
相手がレディだったことを思い出した俺は、何だか酷く疲れて椅子にぐったりと凭れ込んだ。
『とりあえずお茶でも入れてきなさいな。貴方が聞きたい話は全部話してあげるつもりだから』
彼女の嬉々とした表情に俺は深い溜め息を吐いて、一時停止ボタンを押した。
俺は力なく立ち上がってカウンターへと向かった。
お茶じゃ間に合わん。
酒じゃ、酒!!
***
『最初に一つ言っておくけど、私を探さないことね。がこれを見てる時点で私は死んでいるから』
そんな強烈な出だしで始まったビデオレターは長い長い俺への応援メッセージだった。
彼女がこれを録画したのはまだ俺がイタリアにいた時で、俺の滞在中にだそうだ。
薄らと頬が赤く腫れているのに気付いた俺は記憶からあの「顔面赤青事件」を思い出して時期を割り出した。
『執事とティエラには酷いお願いをしたわ。それでもそれがのためになると言えば、
あの子達は何の疑いも持たずに私を信じてくれた。・・・まぁおかげで殴られてこの様だけどね』
レディは苦笑しながら腫れた頬を指差した。
どうやら彼女達が俺を離れてシトに就いたのはレディの酷いお願いとやらのせいだったらしい。
俺は安堵のあまり涙が出そうだった。
よかった・・・、裏切られたわけじゃ、嫌われたわけじゃなかったんだ。
・・・・・・・そうだよな。
あの執事が俺を放置して優先する相手なんてレディしかいないよな。
重い重い肩の荷が下りた気がした俺はなぜだか全て問題は解決したような気になっていた。
『それから、も気付いてる通り、今回のこの事件には黒幕なんていないのよ』
・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・は?
え、聞き間違いか?今、黒幕いないって聞こえたんだけどー?!
覚ったように何度も頷きながら、全ては欲望と不幸な偶然が重なった結果なのだと呟くレディに俺は目が点になる。
い、意味分からん!
『ドン・ボンゴレが動いた理由はほんの少しの親馬鹿と純粋にボンゴレ]世の治世のためよ』
「・・・チェルベッロを懐に入れるのをほんの少しというのか?」
『え、えーと、執事達は私の言付けで動き、私がこんなことをしたのは、救済者シトが動いたからよ』
「・・・どういうことだ?」
俺のツッコミは軽く流されたが、まぁいい。
それよりも気になる話が出てきた。
レディは物凄く嫌そうな顔をしてシトとは浅からぬ縁なのだと語った。
彼が何者で何をするために現れるのかを知っていたレディは、
少しでも試練を簡単なものにしようと、こうしていろいろしてくれたらしい。
おかげで原作から逸れるわ、貴方を傷付けることになったけどねと苦笑するレディに胸がチリリと痛む。
・・・・・・つまりは全部俺のため。
『でも流石ね。これを見ているということは、シトの試練はほぼクリアしたも同然でしょうから』
え?!それも初耳!!
つーか、俺何にもしてねーんだけど?!
俺の疑問に答えるようにレディは言葉を繋げた。
『神々の試練は難しいけど何でもないようなことなのよ。なら出来ると信じていたわ』
ニッコリと笑ったレディの顔に俺は胸が締め付けられる思いだった。
また、助けられた。
それが嬉しくないはずはないんだが、チリチリと胸の奥で何かが音を立てる。
『、ここから先は私にも読めない未来になるわ。正直今の貴方の反応を予測してるのもただの勘なの。
この先、私はもうの手助けが出来ない。原作とはかけ離れた未来に何が起こるのかも分からない。
だから、、くれぐれも気を付けて。そして貴方の選んだその道に幸多からんことを』
美しく微笑んだレディの顔を映し、パソコンは沈黙した。
動画が終了し、再び黒い画面に戻っても俺はしばらくの間、動けなかった。
俺はこれまでたくさんの人達に助けられてここまで来たらしい。
ありがとう、レディ・・・。
あのゆりかごの後、これら全部を仕込むのは大変だったと思う。
俺はこれまでこの一連の事件の黒幕はシト、もしくは他の誰かだと思っていた。
だけど、違った。
九代目がザンザスを目覚めさせたり争奪戦を起こしたのはレディの予言書を見たからで、
レディが予言書を残したり執事達に命令したのはシトが動いたからで、
シトが介入してきたのは俺がこの世界にいたからだった。
つまり、全ての始まりは、全部、全部、俺のせいだったのだ。
俺がいなければ執事とティエラが苦しむことも、九代目が悩むことも、ザンザス達を巻き込むことも、
綱吉達が傷付くこともなかったかもしれない。
この世界に生まれて、父と母に出会い、ディーノの兄になり、恭弥の兄になり、いろいろあったけど
たくさんの仲間と知り合って俺はここが自分の居場所だと、幸せだと感じていたんだ。
だけど、本当は・・・・、
「俺は、この世界に生まれてきて、よかったのか・・・?」
俺の存在意義を問う言葉に誰も答えてくれるはずがなく、暗い沈黙にまるで足元が崩れていくようだった。
* ひとやすみ *
・シリアスモードへ突入です。前半のおちゃらけはなんだったのって感じです!
エンディングに向かってまっしぐら。兄様頑張れ!というか、誰か助けてあげて!
次はおそらくレディの独白。もうしばらくお付き合いくださると嬉しいです。 (11/08/26)