ドリーム小説

初戦はルッスーリアの負けで、次戦は雷の守護者の対決。

ルッスーリアについては全部チェルベッロに丸投げしてきたから俺は全く知らねー。

まぁあのお仕置きでアイツが緩むことはなくなるだろうから、今後手抜きをして命を落とすことはなくなるはずだ。

俺ってすごい親切だよなー。感謝しろよー、ルッスーリア。

ザンザスやモスカにやらせてたら死んでたってマジで。

そんなわけで機嫌よく振り返ったら、ヴァリアーの面々は納得してくれるどころかなぜかドン引き。

何で?今後仕事で死なないように気の緩みを忠告とか親切だよな、俺?!

誰も理解してくれないからザンザスに愚痴ろうとしたのに、何かザンザスも様子がおかしいし、

執事も忙しくしていてそれどころじゃなさそうだ。

不貞腐れて昨夜はそのまま寝たけど、まだ何とも言えない気分のままだ。




「・・・レヴィでも構ってガス抜きでもするか」




・・・けして俺がモヤモヤしてるからってレヴィに八つ当たりしに行くわけじゃないからな!

アイツ真面目だから雷の争奪戦が決まって気合入りすぎてるはずだからだ。

俺が部屋を出るとフロアの様子が激変していて驚いた。

・・・何で急にこのフロア厳重警備が布かれてんの?俺、警備要らないって言ったよね?

所々に立っている部下に首を傾げながら、声を掛けると答えは簡単に返ってきた。




「昨晩からボスがこのフロアを使用されているんです」

「ザンザスは上の階を独占して使ってただろ」

「何でもどこかの馬鹿が中毒性のある薬品をぶちまけたとかで、現在これより上のフロアは立ち入り禁止なんです」




何だそれー?

つまり隣にいたはずの幹部達は下に降りて、ザンザスがこのフロアに入ったってことか?

教えてくれた部下に礼を言って、俺はその場を離れた。

つーか、中毒性のある薬品って何?

おかしなことがあるもんだと歩きながら考えているとエレベーターを通り過ぎていたらしく、

気が付くと非常階段の前まで来ていた。

・・・もう一度部下の前を通ってエレベーターを待つとかカッコ悪すぎる。

俺は見栄を取って非常階段を使うことにした。

誰も使いそうにない暗く狭い階段をテンポよく下っていると、カンカンと甲高い俺とは別の足音が聞こえた。

・・・ヒールの音?女か。

俺は上を見上げながら眉根を寄せた。

非常階段を誰かが使っていたことはビックリだけど、それ以上に問題なのはヒールの女がどんどん上に上がっていくことだ。

おいおい、上って言えば例の中毒性薬品のフロアじゃないかよ・・・。

俺は一つ息を吐いて、女を止めに階段を駆け上った。

そしてヒールの音が消えたのは運が悪いことに元ザンザスのいたフロアだった。

俺は舌打ちをして非常階段から消えた女を追い掛けて、同じくフロアに出てすぐに足を止めた。

慌てて女の死角に逃げ込んで壁に張り付く。

・・・これはどういうことだ?!




「失礼します」

「チクワ嬢か、入っておくれ」




扉の奥へ消えていった彼女を俺が見間違うはずがない。

そして扉の中から聞こえた声は、俺達を駒に争奪戦を仕組んだ九代目の物だった。

俺は一瞬混乱したが、すぐに心を落ち着けて一つ頷いた。

・・・うん。執事は元々俺の監視に付けられていたんだから、おかしなことじゃない。

しかし、まさか九代目が同じホテルにいるとは思わないだろ。

これは絶対ザンザスは知らないな・・・。

俺は深く溜め息を吐いて、九代目の部屋へどうやって辿り着くか計算を廻らせる。

防護服を着た護衛が扉の前に二人。

あの防護服は多分侵入者を全て例の薬品のせいにしてフロアから追い出す魂胆からだろう。

だけど多分薬品云々は嘘だ。

何せあの情報通の執事が生身でこのフロアを横切って行ったからな。

そんなことを考えていた俺は次の瞬間後ろから掛けられた声に凍りつくことになる。




「そこで何してる?」




・・・・・・・護衛三人だったぁ!!!

まさか背後に人がいるとは思ってもおらず、心底驚いた俺は振り向き様足を滑らせてすっ転んだ。

前のめりになり男の鳩尾に俺の石頭がクリーンヒットした。

するとなんと、呻き声を上げた男は一発KO・・・!

けど思った以上に大きな音がして、扉の前の二人がこっちに走ってくることになった。

・・・ふ、不可抗力なのに!!















「け、結果、俺、勝者・・・!」




俺は横たわる三人を見下ろしながら、そっと右の拳を突き上げた。

卑怯とか言うなよ?!角を飛び出てきたのを手刀一つで昏倒させ、もう一人もその隙に絞めて落とした。

まぁ棚ボタということで自分を納得させた俺は、気配を殺して執事が入っていった扉を僅かに押し開けた。




「ーーーー、ですから様のお心など誰にも読めないと言っているではありませんか」

「ここまで我々を混乱させるとは、流石君だ」




耳を澄ました途端に俺の名前が飛び出て死ぬほど驚いた。

中には執事と九代目、そしてシトまでがいた。

ソファに身を沈め表情を曇らせる九代目が前よりも痩せているのが、何だか気になった。




「それよりも!なぜアレをザンザス様に渡したのです?!」

「なぜ?それを君が聞くの?それもこれも全部あの人の指示に決まってるだろう?」

「・・・貴方ッ!!・・・九代目はそれを承知されたんですか?!」

「・・・あぁ、」

「!!本当にあの人は何でこんなこと・・・!今後も貴方の指示は聞きます。ですが様に危害を加えるなら

 私達はもう容赦致しませんので、相応の覚悟を持って動いて下さいませ」




・・・・・・執事、まじ超コエぇぇぇ。

目をギンギンにギラつかせてシトを睨みまくってる様はいつもの数十倍は迫力がある。

っと、やべー!もうすぐ執事、部屋を出るんじゃね?

俺は慌てて護衛の一人から防護服を剥ぎ取り着込んで、三人を適当な部屋に放り込んだ。

これで俺が誰かわかんねーし大丈夫なはず。

堂々と扉の前に立った直後、図ったように執事が出てきた。

それっぽく敬礼してみたが、執事は八つ当たるように恐ろしい目付きで俺を睨んでヒールを鳴らして非常階段へ消えた。

うぅ、こえーよ・・・。

俺はメットを外して再び扉に張り付いて中の会話を盗み聞いた。




「ーーー、本当にこれでよかったのだろうか。何も君や綱吉君達まで巻き込まなくても」

「まだそんなこと言ってるの?それでも最終的にやると決めたのは君だろう?」




一体どうなってんだ?

今の話じゃこれまでの根底から覆ることになる。

九代目がやりたくて争奪戦を起こしたわけじゃない・・・?

ならシトが九代目を唆したのか?

・・・違う。

そう、執事もさっき言っていたじゃないか。




「あの人を信じたなら最後まで悪役貫きなよ。そのためにこれがあるんだから」




そう言ってシトが掲げたのは一枚の黒い封筒。

九代目が縋るような視線を向けたそれに俺はそれがあの人とやらの指示が書かれた手紙なのだと覚った。

あの人とやらは一体誰なのか。

九代目の意思を曲げてしまえるほど影響力のある人物。

俺は扉からそっと離れ、防護服を護衛に返しに戻って初めてそこに鎮座していた物に気付き驚いた。




「・・・執事が怒っていたのは、これか」




まるで置物のように堂々とゴーラ・モスカがそこに立っていた。

一体いつの間にこれがザンザスに渡されたのかは知らないが、どうやら二人とも俺に教えるつもりはないらしい。

まぁ、俺もシトの試練の事とか秘密にしてるし、お互い様か。

何のために九代目がモスカを渡したのか分からないが、俺はザンザスに使わせるつもりはない。

頭の痛い問題に深く深く溜め息を吐いて、俺は決意を胸にその部屋を出た。

そんな俺の後姿をシトが見ていたなんて、その時の俺は知る由もなかった。


* ひとやすみ *
・何だか謎がぐるりと一周して帰ってきた感じです。怪しげな動きをしてる人がちらほらと。
 そして兄様、結局ザンザスと同じことを思ってます。仲良いと考える事まで同じなんですかね?笑
 つくづく思いますが、兄様の心情と周囲の思いは微塵もあってないですねー。
 根性と運だけで生きてきた男が行き着く先とは・・・?乞うご期待!                 (11/06/12)