ドリーム小説

その時もいつもの如くへなちょこと罵られ、兄さんとの違いを散々に突き付けられていた。

ただ、いつもと違っていたのは俺がそれに反抗した事と、そこが武器庫だった事だ。

同級生を怒らせた俺はあっという間にそこにあった鞭で縛り上げられて転がされた。

俺は兄さんが言ってたように、出来る限り一人で頑張ると決め、自分から離れる事を選んだ。

なのに、兄さんに助けられ、スクアーロにみっともない所を見られ、俺は幻滅されたと思って怖くなった。

心の底から湧き上がる不安と恐怖に押し潰されそうで、気が付くと兄さんに縋り付いて懇願していた。




「だから、嫌わないで・・・・っ」




虫のいい話だとは分かっていた。

だけど兄さんに嫌われたら俺はどうすればいいんだ。

怖くて見れない兄さんが小さく溜め息を吐いたのを感じて、俺は今度こそ捨てられると絶望した。




「あのな、人が人を傍に置くのに資格や役立つからとかそんな理由がいるのか?」




あぁ。俺はって人の何を知っていたと言うのだろう。

兄さんは俺なんかが想像も出来ないくらい大きな存在で、俺達の陳腐な考えに収まるような人じゃないんだ。

普段、あまり多くを語らない分だけ俺のために話してくれた言葉が深く胸に沁み込む。

気が付けば、ポロポロと目から涙が溢れて「伝わったか?」と聞いた兄さんに何度も頷いていた。

俺ってホント、どこまでもカッコ悪い奴だ。






***






それからは泣いてる状況じゃなく、マフィア関連の子供達が通う学校だからこそセキュリティは厳重なはずなのに

気が付けばマフィアに囲まれていた。

スクアーロに痛め付けられすでに動けない同級生も知らないようだったが、そいつらの狙いは確実に俺達だった。

どうしようと恐々兄さんを窺えば、兄さんは全く動じておらず、それどころか無防備にも奴らに背を向けていた。

その無防備さが逆に兄さんの強さを示していて、取り乱すほどの事じゃないと言わんばかりの態度に

俺だけじゃなくスクアーロも感心していたようだった。




「ゔおぉぉい、、どうするんだぁ?」




この場で一番強い兄さんにそう聞くのが当然で、俺もスクアーロに同調するように兄さんに視線を向ける。

兄さんは相手不足だと言わんばかりに、面倒臭そうに溜め息混じりに声を漏らした。




「スクアーロ、ディーノ。お前らに任せる」




兄さんが俺達の力を認めてくれた・・・?

一瞬、俺もスクアーロも驚きで声を失ったが、沸々と湧き上がる嬉しさで頬が緩む。

出来るだろう?

金色の目がそう訴えかけていて、俺は武器庫にあった剣を掴んで兄さんの背を守るように歩み出た。




「一瞬だぁ。俺がまとめてオロしてやる!が出るまでもねェ」

「兄さんはそこで見てて。期待に応えてみせる!」




兄さんに良い所を見てもらうんだ!

きっと同じ気持ちだろうスクアーロと一緒に俺は駆け出した。






***






やっぱ剣術でスクアーロに敵う奴はいない。

そのスピードと豪胆さに大人が次々と斬り倒されていく。

兄さんが見ているんだ。

俺も負けてられないと剣をきつく握り締め、近くにいた奴らを柄と刀身を使い分けて斬り伏せる。




「・・・ディーノ、テメェ今まで力を隠していたのかぁ?!」




不意にスクアーロと背中合わせになった時に、肩越しに呟くように言われて首を捻る。

俺としてはいつもと同じようにやってるだけだったんだけど。

質問の意図を分かりかねて、そのまま伝えるとスクアーロは何かに気付いたように声を上げた。




「あぁ?・・・まさか、の前だと力が出るのか?」

「?」

「ハッ!やっぱテメェはへなちょこだぁ!気張れよ、へなちょこォ!」

「へなちょこ言うな!」




そう言われてすぐの事だった。

俺の背後に敵が迫っていたらしく、振り返った時には銃口が俺の心臓を狙っていた。


思わず息を止めた瞬間、どこからともなく飛んできた鞭が奴の集中力を切り、体勢を崩させた。

しかし、あっさりと鞭はかわされ、再び銃口が上げられた。

ただやられる訳にもいかず、俺が敵の懐に飛び込もうとした時だった。


突如、逆方向から現れた鞭が奴の身体を雁字搦めにしてしまったのだ。


よくよく見れば先程のかわした鞭が柱を回っていて、その辿る先には鞭の柄を引く兄さんが立っていた。

ガシャンと奴の手から落ちた銃が大きな音を立て、俺は呆然と今の一瞬の出来事に目を剥く。

最初に放たれたあの鞭は元々奴に当てるためでなく、柱を迂回させ奴の死角から縛り上げるための物だったんだ。

だけど、それをするには絶妙なテクニックが必要になる。

風のようにしなやかに美しく舞った鞭に後になって胸が高鳴った。


やっぱり兄さんは凄い!!












抗争の終了は呆気なかった。

銃弾に銃弾を当てるという神業を難なくこなした兄さんに、恐れをなして戦意を失った奴らは先生達に連れて行かれた。

何も話す気が無いらしい兄さんの代わりに、先生に兄さんの凄さに奴らが圧倒された事を話した。

先生も話を聞いて物凄く興奮しているようだった。

この先生、射撃のプロだからなぁ。



この事件で俺は兄さんに内緒で決めた事がある。

俺、鞭使いになる!

あの時の兄さんはめちゃくちゃカッコよかった!

いつかあんな風に鋭くて華麗でカッコいい鞭捌きが出来るように俺頑張るからね、兄さん!


* ひとやすみ *
 ・ディーノさんが鞭を使うようになるのは主人公のせいだといいな、という妄想。笑
  ついでに部下の前ならぬ、兄ちゃんの前がへなちょこ初期段階とか。笑
  やっぱり戦闘を言葉で表すのは難しい。分かりづらくてゴメンナサイ!(09/06/17)