ドリーム小説

俺の中での三浦ハルは空気の読めないちょっと可哀想な子というイメージで記録されている。

普通に可愛いとは思うが、やっぱどこか変だと思う。

日本語で声を掛けたのに片言英語で返されて、さすがのティエラも押されている。

ある意味凄いのかもしれないと思いながら二人に近寄り助け舟を出す。




「あー、連れがすまないな。・・・悪いが、彼女に似合いそうな服を探してるんだが、いい店を知らないか?」




ハルは俺を見上げてだんまりで返した。

何と言うか、・・・物凄い顔をしている。

零れ落ちそうなほど目を見開いて微動だにしないハルにティエラと俺は顔を見合わせた。




「ちょっと、どうしたの?」

「・・・うー、目が」

「「 目が? 」」




・・・・・・目?

彼女に一体何があったのか。

原因を調べようと目を覗き込もうとした瞬間、ハルが叫んだ。




美男子オーラに目が溶けてしまいますぅー!!




・・・・・・・・・・・・・・・何ですと?

美男子というのは男のことで、ここに男は俺しかいない訳で、つまり、それは、俺のことか?

何という嫌がらせか、と俺は頬を引き攣らせた。

美男子という言葉は俺には縁がない。

そりゃこの顔になってからブ男子ではないと思っているが、いくら何でもそりゃ言い過ぎだ。

遠くへ意識を飛ばしていると、ティエラが腹を抱えて爆笑し始めた。




「あなた素直ね、最高!この辺りに詳しくないからショッピングに付き合って欲しいんだけど、どうかしら?」




どこが素直なもんかと眉根を寄せていたが、どうやら本当にティエラはハルを気に入ったらしく、

こっそりとねだるように俺に片目を瞑る。

・・・これを断れば俺が苛められる気がするな。

ハルは元気よく了承していたが、ハッとなって俺を窺うように見てきた。

服屋を探しているのは確かだし、平穏無事に過ごすにはハルがいてくれた方がいいな。

二人に頷くと、指の間からこっそり俺を見上げていたハルはホッと息を吐いていた。

・・・指の間から覗くの止めてくれないかな。







***






ハルは思ってたより全然普通の女の子だった。

活発でよく笑って可愛い物が好きみたいで、本当にティエラと楽しそうにしている。

店はもうすでに何件回ったのか覚えていない。

俺はティエラと出掛けた時点で諦めていたので長時間連れ回されるのは覚悟の上だが、ハルは違う。

巻き込んだのはこっちだというのに、どこまでお人好しなんだろうか。

けれど、嫌がる素振りを見せずティエラに付き合ってくれて本当に感謝している。

この所、ずっと不機嫌だったからな。

理由は語らずとも推して察するべし。

楽しそうに試着室に入ったティエラを見送り、俺はハルに声を掛けた。




「悪いな。疲れてないか」

「はひ?!全然です!ティエラさんよりハルの方が楽しんじゃってるくらいです。何でも似合うから嬉しくて」

「・・・いや、ティエラも喜んでるよ。あんな楽しそうな顔は久しぶりに見た」




どこまでも優しいハルに笑うと、また急に真っ赤になってそっぽを向かれた。

・・・どんだけ嫌われてんだ、俺。

そんなことを思いながら肩を落とすとハルが必死に首を振った。




「違います!ただ、その、恥ずかしくて・・・」

「ちょっと!私が見てない間に何してるの?ハルは純情なんだから誑し込まないでよ」

「たらしこむって・・・」




試着室から出てきたティエラが庇う様にハルに抱き付いて、ハルはまた真っ赤になる。

純情か。なるほど。

嫌われてた訳じゃないんだと小心者の俺は安堵した。












「ねぇ、ハル。今日のお礼に夕食をご馳走したいんだけど、やっぱりご両親は心配なさるかしら?」




目的の物以上に買い込んだティエラだったが、買い物が終わるとハルにおずおずと声を掛けた。

本当にハルが気に入ったらしい。

これが俺なら強引に「行きましょう」って引っ張っていくだろうに、扱いの違いにほんの少し泣きたくなる。

別段ティエラの提案に否はないし俺としても礼はしたかったので黙っていたが、混乱するハルに俺は首を振って言った。




「・・・悪いが諦めろ」




即行で家に連絡させられたハルは何度か執事と行ったことのある服屋に引き摺り込まれていった。

「何で服屋?!」と騒ぐハルに俺は何だか懐かしさを感じた。

だよなー。何で飯食いに行くのに着替えるんだよって思うよなー。一般人にはドレスコードとか思い付かないよなー。

そそくさと見知った店員がやってきてハルは連行されて行った。

うん、連行が一番表現として正しい気がする。




、ハルが十代目候補の友人だって知ってたわね?」

「まぁな」

「いくらでも、あの子泣かせたら、切り刻んでやる・・・」




それは俺に綱吉を傷付けるなって言ってんのか・・・?

そりゃ無理だろ。

ティエラは脅すような言葉を吐きながらも、分かっているのか泣きそうな顔をしていた。

俺にそうさせるよう動いているのはティエラ達だ。

どうにもならないもどかしさを感じながら、俺はティエラの頭を撫でた。




「中華の店を押さえておくから、俺の服も選んでおいてくれ」

「・・・なら衣装もチャイナね!」




どうやら俺の気遣いはすぐにバレたようだが、明るく微笑んだティエラに安堵した。






ハルとの食事はいろいろ楽しかった。

話していて分かったが、いつの間にか俺は一般人から遠くかけ離れた感覚になっていたらしい。

ハルを思って箸の使える中華を選び、マナーの面を考えて個室を選んだのだが、何だか凄い目で見られた。

ハル曰く、お姫様のような気分です、だそうだ。

これが?と首を傾げたら、服を買ってやったことやら個室のことやら熱弁された。

パーティや食事で正装するのが当然だったから忘れてたけど、コスプレしてるようなものかと今更気付いて落ち込んだ。




「そろそろ出ないと執事が煩い」

「はひ!さんのお家は執事までいるんですか?!」

「何言ってんのよ、ハル。使用人の私がいるんだから執事くらいいるわよ」

「え?!ティエラさんとさんはご夫婦じゃないんですか?!」




ぶふーーーーっ!!

な、何でそんなことに?!

俺は必死に間違いを訂正してハルを家まで送り届け、なんとも言えない空気のままホテルへと戻った。

さ、さて、いよいよ、争奪戦のはじまりだ!


* ひとやすみ *
・戦いの前に1クッション。ハルは普通の女の子です。突拍子のない子ですが。笑
 ティエラの妹分的な扱いを受けてたらいいなぁと脳内劇場で展開中。
 兄様、ティエラのガス抜きをするの巻でした。観察力は鋭くてよく見てるのに
 相変わらず自分に向いてる思考は読み取れないニブチンさん。さて、次はハル視点かなー?    (11/05/03)