ドリーム小説

何と言うか、俺は今ドッと疲れている・・・。

俺がこの世界に転生して早二十五年、今更神様とか出てきたり、九代目が大暴走してみたり、執事達に裏切られたり、

何で俺がここまで迷惑被ってんの?って思っちゃう程度には疲れている。

何だかんだあったけど、ようするに原作通りっていうオチも気に入らない。

じゃあ初めから素直に原作通り進めよ。

え?俺がここに居て魂レベルでおかしいせい?

う、生まれてきてごめんなさい・・・。









・・・って違ーう!!被害者は俺!!俺は悪くない!!

とにかく今はリング争奪戦に全力を向けるだけだ。




ー!見て見てー」

「ティエラ、お前その格好・・・」

「ふふ!私もチェルベッロに紛れてジャッジするの」




ティエラはふんわりしたワンピースの裾を揺らしてクルリと回ると、黒いマスクを目元に翳した。

ヤバイ・・・。その格好は絶対ヤバイ!

プリーツたっぷりのピンクのワンピースは酷く短く、下着のようにも見える。

黒の短いジャケットと黒のロングブーツが無ければアウトだったよ、絶対!

俺は赤くなってるだろう顔を押えて視線を逸らした。




「お前に似合う服を買ってやるからそれは止めろ」

「えー?似合わない?シースルーの重ねが気に入ってるんだけど」




似合ってるよ!でもそれが逆にイヤらしくて俺が耐えらんないの!

ってか裾ピラピラ捲らないでー!!

ゲッソリしてその場を離れた俺は無駄に装飾の多い扉を開いた。




「また酒飲んでるのか、ザンザス」

「・・・飲まなきゃやってられるか」




テーブルに足を上げて座り込むザンザスに呆れながら部屋に入った。

酒と共に用意されていた氷は全て溶けきっており、随分長い間一人で飲んでいたらしい。

いつもならレヴィなりザンザスの傍に誰かいるのだが、対戦カードがまだ切られていないため

落ち着きのないメンバーは外へ出掛けているのだ。

俺は水の入ったアイスペールを掴んで新しい氷を足しにカウンターへ向かった。

適当に氷を突っ込んで、俺はブランデーを掴んでザンザスの向かいに腰掛けた。




「何だ?お前も飲んでんじゃねーか」

「・・・飲まなきゃやってられないんだ」

「くくッ・・・違いない」




笑うザンザスに氷を押し付け、俺は顰め面でブランデーグラスを掌で温める。

昼間っから飲むのはどうかしてると思うけど、酒飲みと一緒にいて飲まない方が身体に悪い気がするんだよ。

ザンザスと同じこと言ってるなと不貞腐れながら俺はグラスを煽った。




「今晩、か。、お前、本当に雲の守護者になるのか?」

「・・・あぁ」




そうなんだよ!何でか俺、モスカポジションなんだよ!

俺、属性霧なんだけど、なぜか皆、雲の守護者には俺が相応しいと太鼓判を押してくる。

まぁ今回は炎使って戦う訳じゃないし問題ないと思うけど、揃いも揃ってそう言ってくるのが不思議でならない。

つーか、何でモスカいないの?!

ザンザスが何だか妙な顔をして俺を見ていて首を捻る。




「ガキ共の雲の守護者は義弟だと聞いたが?」




あぁ、なるほど。

どうやら心配してくれているらしいザンザスに苦笑した。

事情が事情だけに相手が恭弥であろうと戦うつもりだし、それに何より恭弥は強い。

心して掛からないと俺の方がヤバそうだ。




「問題ない。勝敗に関しては状況次第だが、俺がやる。アイツは強いからな」

「・・・そうか。それは楽しみだな」

「それよりもお前、初戦見に行くのか?」

「・・・カード次第、だな」

「今日は陽が高い。今夜は星がよく見えるだろうよ」




空のグラスを置いた俺は少しキザっぽく部屋を出た。

ザンザスならあれで分かるだろう。

さて、俺は・・・、




ー!ショッピング行くわよー!」




・・・・・・・・どうやら買い物に付き合わないといけないらしい。

買ってくれるって言ったわよね?とティエラが俺の腕を掴み視線で訴えている。

こりゃ、俺の負けだな。

着替えてくると踵を返すと、ティエラがニッコリと笑った。

・・・あぁ、今はその笑顔が眩しいよ。







***







争奪戦のこともあってそう時間が取れないため、私服に着替えた俺達は結局並盛で買い物することになった。

だが、すでに俺は泣きそうである。

なぜならここは並盛、完全な地元で俺は不可抗力にも有名なのだ。

突き刺さる視線の山にティエラが気付いてない訳がないが、俺の腕に縋り付いて興味深そうに辺りを見渡している。

勘弁してくれ・・・、何の拷問だ・・・。

まるで公開デートではないかとゲッソリしながらティエラに声を掛ける。




「地元だが、女性が好む服屋は知らないぞ?」

「平気よ。若い子捉まえてお店聞くから」

「・・・何か、いろいろ悪いな」

「ふふ。有名人は辛いわね、




この状況をあえて楽しんでいるらしいティエラは俺にウィンクして噴き出した。

全く、悪い女だ。

肩を落とす俺を余所にティエラは目的を果たそうと、前を歩く少女に声を掛けた。




「ねぇ、あなた!この辺りで可愛い服を売ってる所知らない?」

「はひ?わ!美人な外人さん!ないすとぅーみーとぅーです!」

「え?ええ??Nice to meet you, too?え?あれ?」




相手のペースに巻き込まれてるティエラを見て俺は額を押さえた。

緑中の制服に身を包んだ少女に見覚えがありすぎる。

間違いなくハルだ・・・。

混乱するティエラに同じくテンパるハルを見て、俺は深々と溜め息を吐いた。

原作キャラ遭遇率、マジでハンパねー、俺・・・。


* ひとやすみ *
・そうなんですよ、実はモスカ不在。兄様雲ポジです!孤高の浮雲とか思われてます。笑
 この辺りもいろいろある予定なので楽しみにしていただければ嬉しいです!
 ここに来てようやくハルを出せましたー!!長い道のりだった・・・。
 可愛いから大好きなんですが、展開的に出せなくてヤキモキしてたんです。まぁ俺得って奴です!笑
 しばらくハルのターン!のんびり楽しんでいただければ光栄ですー!                   (11/04/22)