ドリーム小説

かつてこれほどまでに悲運な人間がこの世に存在しただろうか。

縋れど祈れど救ってくれない神がいることはあっても、非力で平凡な男を脅す神がいるとはどういうことだ?

天罰?試練?ふざけんな!俺は慎ましやかに生きてきただろーが!

無視さえしてもらえないのなら、こうなればもっと原作引っ掻き回して仕事増やしてやる!

ケッ・・・!何が休日出勤だ!もっと働け疫病神!!残業手当なんかくれてやらんからな!

そんな出来もしないことを考えたり、滅茶苦茶な暴言を吐いてしまうほどこの時の俺は不貞腐れていた。

胡散臭いが自称神様で俺に試練を与えに来た男、シトに執事とティエラの命を盾に取られたことだけでも

我慢ならないのに、その上奴はスクアーロと俺の命でザンザスをも脅そうとしているらしい。

目を覚ましたザンザスとスクアーロに九代目と執事、ティエラを引き連れたシトがにこやかに笑う。




「悪い取引じゃないでしょ?僕に従って動いてくれるなら今後君のヴァリアーボスの立場は保障するよ、ザンザス」

「・・・ふん、拒めばあの世行きか?」

「まさか!また眠ってもらうだけだよ。あの冷たい揺りかごの中で」




息を呑んだのは一人二人ではなかったようで思いの他大きな音が部屋を包んだ。

八年前の事件を知っている者なら誰でも今のシトの言葉に含まれていた意味を履き違える訳がない。

苦々しい表情のザンザスと周囲の様子を窺い、今の衝撃発言に驚いていない人物がいることに気が付いた。

まさか・・・。




「俺を目覚めさせたのはテメェか?俺を従わせるためだけに?」

「半分正解。契約だったから僕がチェルベッロと組んで君を起こした。でも君を起こしたのは従わせるためじゃない」

「その契約の相手は九代目か?」

「ピンポーン!大正解!」




うわー・・・・。

まさにそんな視線を俺と執事とティエラは九代目に向けた。

どうせ九代目はチェルベッロ機関の設立とかと引き換えにしたんだろうけど、親馬鹿もここまでくるとどうなの?

まぁ、ザンザスを目覚めさせた理由がそれだけではないと思いたい。

それよりも契約完了後の今、九代目が怪しげなシトを未だに傍に置き暴挙を許す理由が必ずあるはずだ。




「ゔぉぉい!ボスが目覚めた時点で契約は完了してるはずだぁ!何でテメェがこの件に係わる?!」

「これに関しては僕が勝手に九代目に付き合ってるだけ。彼女達が僕に従うのも同じだと思うよ」

「・・・腹立たしい言い様ですが異論はありません」

「だからね逆を言えば辿り着く所が同じなら誰が何しようと構わないんだ。それぞれ目的のため手を組んで動いてる」

「それさえなければ今頃アンタなんか滅多刺しにしてるわよ、この下郎がッ」




げ、ろうって・・・・。

ギンッと音が付きそうなくらい強烈にシトを睨むティエラに誰もが口を噤む。

美人の胆力ハンパねー・・・・。

でも、これで分かったことが幾つかある。

今回の事件(リング流失やらスクアーロ誘拐)はシトの言う所の目的のための手段だったらしい。

シトが九代目を手伝う理由は多分試練へ繋がる何かがあるからだろうけど、執事とティエラは何でだろう?

憎い相手であるシトや九代目と自発的に組まねばならない程の理由か。

とにかく理由はどうあれ彼らの成し遂げたいことは同じということだ。




「話は纏まったかな」




老成された穏やかな声が割って入った瞬間に誰もが思い出した。

事の元凶は全部ジジイのせいじゃねーか!!

シトを使って門外顧問を突き、ヴァリアーを嵌め、俺達を引き込んでどうする気だよ?




「私も迷わなかった訳ではない。多くの人間を巻き込んだが、ボンゴレの繁栄のため犠牲は已むを得なかった」




ボンゴレの繁栄のため、だと・・・?!

そんな安っぽい言葉で納得なんか出来るわけないだろ?!

仲間に嘘の情報を流したことで門外顧問もヴァリアーも傷付いた。

関係ない人をも巻き込んで已むを得ないで済むかよ!

一体これから何をする気だと皆の視線が九代目に向くと、彼は短く答えた。




「並盛で戦争を起こす」

「ふざけるなッ!」

「座りなさい、君。言ったはずだ。彼らの命はこちらの掌にあると」




怒りのあまり立ち上がるとシトが執事とティエラに銃口を向け、九代目がザンザスに杖を向けた。

不利な立場を思い出した俺は怒りで乱れる呼吸を抑え込むようにして、元の位置に座り直す。

ここまでこの爺さんを馬鹿だと思ったことはない・・・!

優しいけどいつも極端で実は凄いのに親馬鹿な九代目が俺は嫌いじゃなかった。

なのに、その九代目が、ザンザスに躊躇無く武器を向けている。

一体、何がそこまでアンタにそうさせるんだ・・・?

怒りから困惑に変わった俺の感情を読み解くようにシトが笑う。




「これが定められた運命なんだよ、。さぁ、僕達に従う?従わない?」




・・・・・ふざけんなよ?

その二択のどこに俺が選べる余地がある?!

神だかマフィアだかしんねーが、全部終わったらテメェら覚えてやがれ・・・!!


* ひとやすみ *
・そんなこんなで次がかむい編ラストです。親馬鹿爺さん御乱心!笑
 何だか九代目が物凄い悪人になってしまった。嫌いじゃないんだけどおかしいなぁ。
 いろいろと話が複雑になってきましたが、相関図は簡単です。
 「協力関係。ただし仲間ではない」矢印は全てその一言。笑
 さてヒーローも大詰めです!もうしばらくお付き合い下さいませ!                  (11/02/10)