ドリーム小説

どうしてこんなことになった・・・?

俺の銃は九代目に向き、ザンザスはティエラ、ティエラはスクアーロ、

そして執事の両手の銃は俺とザンザスに向けられている。

鳴り止まない警鐘は次第に俺の脳を揺さ振り、酷い頭痛を引き起こした。

頼む、誰か説明してくれ・・・。

身動きの取れなくなった俺達の銃を執事が奪い、武器を次々と剥ぎ取る彼女をぐらつく視界で呆然と眺める。




「小型爆弾まで持ち出していたんですね、様。ホテルで監視の目から抜け出された時はゾッとしましたよ。

 いつ私とティーが動いてることに気が付いたのかと。相手は他ならぬ貴方ですから睡眠時間を削って警戒していたのに」

「・・・テメェ、を裏切ることがどういう事だか分かってんのか!!」

「「 もちろん 」」




裏切りか・・・。

ザンザスの言葉が胸に刺さり、執事とティエラの即答が血の噴き出す心をさらに抉った。

執事が消耗していたのは気付いていたし、何かがおかしいとも思っていた。

いつもならこんな中途半端に弱味を見せることなどしないのが彼女だと分かっていたはずなのに、

俺はこんな結末を微塵も想像していなかったんだ。

執事とティエラが俺を裏切った。

・・・いや、彼女達に俺が捨てられたのか?

くそっ・・・、酷い吐き気がする。




「さて、万が一もあるからね、君とザンザスを眠らせるよ」

「口を慎みなさいよ、老いぼれが!」

「拒否します。ドン・ボンゴレ、私達は確かに行動を共にしていますが、貴方達に服従してる訳じゃありません」




・・・ん?あれ?

九代目の言葉に火を見るより明らかなほど執事とティエラは怒った。

何でだろう、口汚いティエラより回りくどい執事の方が怖い・・・。

それにしてもこれはどういうことだ?

二人は望んで九代目の元へ行った訳ではないのか?

ほんの少し湧いてきた希望に俺は思わず縋った。




「これは、お前達の意志ではないんだな?」




誰かに脅されてこうなっているんならいいんだ。

原因をぶっ壊せば何もかも元に戻る。

だけどそうじゃなかったら?

いいや!そんなことあるかよ!

俺達はずっとずっと一緒にいたんだ!

なのに何も言わず彼女達が俺を置いて行くはずがない!!

俺をじっと見つめていた執事が小さく口を開いた。




「いいえ。全て私とティーの意志です」

「回避出来る道もあったのよ、。だけど私達は私達の願いのためにこうしている」

「私達は決めました。だから貴方に邪魔はさせません」




強い目を向けられ、俺は足元が揺らいだ。

目の前が真っ暗になるとはこういうことを言うんだろう。

二人に裏切られ、腹が立つより何より悲しかった。

ガンガンと打ち付けるような頭痛が酷さを増し、視界が歪む。

はは、こんなことくらいで不調になるほど俺の身体って弱かったっけ?




「君達、話長すぎ」




背後から聞こえた声にグワンと空間が歪んだ気がした。

その男の登場で空気が重さを増したが、それとは裏腹に軽快な靴音を鳴らして奴は俺の横を通り過ぎて行った。

何だこの感じは・・・?!

全身の身の毛が世立ち、震えが止まらない!

ままならない呼吸で喘ぎながら、ぼやける目を奴の背に向けた。

細身の男、燃えるような赤い髪、子供のような声、理解出来るのはそれくらいだ。

クラリと眩暈に襲われ思わず膝をつくと、ザンザスとスクアーロの声が遠くで聞こえた。

・・・悪い。耳鳴りが酷くて聞き取れねーや。

だが、不意に思い出したことが一つある。

いろんな病気の症状がいっぺんに出たような苦しさを俺は前にも感じたことがある。




「流石だね、。聞いてはいたけどこんなに歪みの反動が大きいとは、規格外もいい所だよ」




・・・最悪だ。歪みとか聞き覚えがありすぎる。

何でこんなややこしい時に出て来るんだよ!

俯いて滴る汗を見送り何とか顔を上げると男はクルリと振り返って俺を見た。




「僕は救済者シト。君に試練を与える者。残念だけど君は僕の試練からは逃れられない」




レディにしろ、シトにしろ、俺って赤色に呪われてるんじゃないだろうか。

しかし、異世界人がこんなにポコポコ現れていいのかよ・・・。

シトの青い眼に囚われた瞬間、俺の心臓は一際大きく音を立てて思考は闇へと落ちた。






***







次に目が覚めた時、赤髪碧眼の男が寝ている俺を覗き込んでいた。

ちょっ、近い・・・!!




「君ホント人間?まだ1日も経ってないのに回復早すぎ」

「・・・離れろ、異世界人」




最悪だ。つーか、ここどこ?

俺の第一声にニコリと笑ったシトは寝込んでた俺によりによってワインを勧めた。

それを断って辺りを見渡すと、そこはすでにあの研究所ではなくどこかのホテルの一室のようだった。

ここには俺とコイツだけ?皆はどこに?

あぁと思い出したように言ったシトはおかしそうに笑って

「彼らならって煩いから丁重に眠らせといたから大丈夫」と言いやがった!

それ全然大丈夫じゃねーだろ!!




「アンタもレディや俺と同じなんだよな?」

「この世界の住人ではないことは確かだけど、僕は君やリンとは少し違う」




違う?リン?何が言いたいのかさっぱり分からん。

研究所で感じた苦しさの規模は桁違いだったが、レディと会った時と同じだった。

だからコイツも異世界人だと思ったんだが、同じじゃないとはどういうことだ?

カウンターに凭れ掛かりワインを転がすシトに怪訝な視線を向けると、奴はニヤリと笑った。




「僕は君達が言う所の神なんだな」




・・・・・・・・神様、キチガイが目の前にいます、ヘルプ。

こんな神様嫌だー!!もう無理、許容量オーバー。寝直そう・・・。

ソファにもう一度横たわるとなぜかシトに八つ当たりされた。




「あ!言っとくけどが勝手にこの世界に紛れ込んだおかげで、こっちは休日返上で残業三昧だったんだからね!

 まぁ、僕の部署は関係なかったけど、神をも振り回すなんて君の魂どんだけ強いの?」




知 る か よ ! !

何で俺、自称神様に愚痴られてるの?!

魂レベルでダメ出しとかマジで凹むから止めてくれ!!




「あのね、君のおかげで原作が大幅にズレたんだ。しかも原作の内容を知ってる君の魂に引き摺られて修正が利かない。

 だけど君の知識はリング編と少しまででしょ?ならそれまでに試練を受けて貰わないと困るんだ」

「・・・その試練とは何なんだ?」

「試練は何でもあって何でもないことだよ。判断するのは僕だから君が気にすることじゃない。

 あぁ、別に僕達に従わなくても構わないよ。ただ僕の手に彼女達の命があることを忘れないでね」

「・・・お前っ」

「試練はすでに始まっている。君の健闘を心から祈ってるよ、




神様のちっとも嬉しくない加護をいただいた俺は心底溜め息を吐いた。

大体その試練を達成することに何の意味があるのか?

とか何とか言っても俺には道が一つしかない。

神様に脅されるとかどんだけ不運なの、俺?!

何にもしてくれないなら、せめて放って置いてくれよ、神様ー!


* ひとやすみ *
・ここに来てとんでもないことが起こってます。笑
 普通こういう夢っぽいとんでも話は連載の始めの方でするもんじゃないっけ?と自問自答中。
 彼女達に裏切られ、絶賛混乱中の兄様の運命や如何に!
 思惑が絡み合ってまだまだ謎だらけですが、可哀想な彼に愛の手を差し伸べてやって下さい。       (11/01/24)