ドリーム小説

昔話はこの辺にして、時は戻り・・・。

ホテルを出て執事の運転する車に乗り、俺達は大量の食料と共にある場所へと移動していた。

目を皿のようにして俺を探しているらしい恭弥を掻い潜るのは並大抵ではないが、執事に不可能はないらしい。

というか、ホテルを出てからどうも執事の様子がおかしい。

何かあったんだろうが、こういう時こいつは絶対俺に何も言わないからなぁ。

少し注意して見ておくか・・・。

兎にも角にも、目的地に着いて食料を車から降ろそうとした時だった。




様っ」




振り返ると目を輝かせた少女が軽やかに走り来るのが見えた。

この後の展開が見えた俺は荷物を諦めて降ろし、胸に飛び込んできた彼女を抱き止める。




「クローム、危ないから飛び付くなと言ってるだろう」

「ごめんなさい」




とか、殊勝に言いつつまたやるんだ、この子は絶対。

その短いスカート丈でそんなに動き回ると危ないから止めろって言ってるのに!

俺の精神上それホントによくない!

小さく溜め息を吐いた俺の頬にちゅっと小さなリップ音がして、俺はさらに落ち込んだ。

だーかーら!女の子がそんな簡単にちゅーとかしちゃいけません!!




「でも骸様が大事な人にだけあいさつしていいって言った・・・」




確かにあの馬鹿はテンパってそんなこと言ってたけど、言ってたけどー!!

グルグルしてる間に犬と千種が俺達を見付けて、何だか怒りながら向かってきていた。

何で怒ってんの、お前ら?




「バカ女ー!!てめーさんに何してんらー!!」

「あいさつ」

「・・・そんなのあいさつにならないよ」

「落ち着け。たかがあいさつで何もそこまで怒ることないだろ」




何だかよく分からんがキレてる二人を宥めすかしてたら、何だか物凄い目で睨まれた。

え、え、何?何でお前らにじり寄ってくるの・・・?!

キョトンとしていたクロームが無邪気な顔して笑った。




「犬と千種も様にあいさつしたいって」




ギャー!!いらん!嬉しくない!命取られるー!!

狩人のような目をした二人から逃げ回る俺に執事が食事の準備が出来たと助け舟を出してくれて難を逃れた。

放っとけばガムとか麦チョコしか食べないコイツらの面倒を見に来て、何で俺が命の危険を感じなきゃならねーんだ!!

・・・骸、マジでお前恨むからな!!






***






とりあえず飯が終わると、俺達は広い場所へと移動した。

さすが黒曜ランド、広さだけは無駄にある。

本を片手に立ち尽くす俺と三叉槍を構え向かいに立つクローム。

さて、問題です。

どうしてこんなことになっているのでしょうか?




様、お願いします」

「いつでも来い」




正解は、俺がクロームの家庭教師だから。

しかも幻術とか教えちゃってるんだぜー!わーお!

・・・・・・・・マジ、有り得ねぇ。

あの戦いの時、偶然マインドコントロールを解いたり、偶然幻覚が効かなかったりした俺を骸はよーく見ていたらしく、

も術士だったのですね」と間違った解釈をしてくれたおかげで、俺は大変な苦労をした。

幻覚使えるならちょっと凪を両親の元から連れ去って来てくれと簡単に言われ、俺は死に物狂いで幻術を練習した。

そのおかげと言うのは癪だが、一つ分かったことがある。

どうやら俺の炎の属性は霧らしい。

指輪から出る炎は藍色だし、あの時の偶然もこの炎のおかげだとすると納得がいく。

霧の炎の効果は確か構築だったはずだから、現実を再構築したのだと思う、多分。

今の段階で炎使うとまずいし、比較する相手もいないからあれなんだけど、リングから出る炎ってこんな膨大だっけ?

部屋一つ分くらい簡単に覆えるくらい出ちゃうんだけど、出しすぎたら死ぬとかないよね?!

正直加減難しいし、死ぬの嫌だから使いたくないが、クロームの修行の相手をするなら使わない訳にはいかないしなぁ。

そんなことを考えていたら、クロームが三叉槍を薙いだ。

軽く後ろに飛んで避けるとそこから火柱が上がった。

うーん。タイミングはばっちりなんだけど、熱くないんだよねー。

俺は左手にあった本を捲って、原因解明に努めた。

あ、ちなみにこれ秘密特訓の時に俺が使った『ドッキリドキドキ初体験☆あなたに幻術かけちゃうゾ!初級編』って本な!

役に立ってるのか分からんが、無いよりマシだ。




「火柱に現実味がない。視覚だけじゃなく五感全てに作用しなければただのホログラムだぞ」

「・・・はいっ」




幻覚と三叉槍で攻撃してくるクロームをいなして、小さく息を吐く。

正直こんなことしたくないんだけど、骸が家光からいつの間にかハーフボンゴレリング受け取っちゃったらしく、

この子が巻き込まれるのは確定してるし、骸も早々出て来れないからなぁ。

俺は見学中の犬と千種を盗み見て、『ドッキリドキドキ初体験☆あなたに幻術かけちゃうゾ!初級編』を閉じた。

・・・どうやら犬が限界らしい。




「お前達も来い。まとめて面倒見てやる」




嬉々として飛び掛ってきた二人に苦笑して、俺はを取り出した。

つーかな、お前達なぁ、チームプレイって言葉知ってるか?

バラバラすぎて自滅した三人が責任の擦り付け合いをしてるのを見て、珍しく説教をする気になった。

お前ら、ダメダメじゃん。


* ひとやすみ *
・気が付けばクロームのかてきょーになってました!笑
 そして柿ピーと犬が面白いくらい嫉妬してます。骸が連れてきたクロームに兄様ベッタリですし。笑
 いろいろ発覚してきましたよ、兄様のヒミツ。属性は霧でした。第8の属性案が出た時は
 さすがに噴きました。確かに最強だけどここまで無敵キャラ受け入れられてるって・・・!笑     (10/12/12)