ドリーム小説

えー、ここから先の話をするには少し遡って話をする必要がある。

どこまで遡ればいいか曖昧だが、とりあえず黒曜ボーイズ襲撃後の話をしよう。

俺は恭弥の入院中を見計らって急遽フランスに飛んでいた。

なぜかと言うと、それはもう身の毛も世立つ恐ろしい話なのだが、毎晩骸が俺の夢枕に立って言うのだ。

復讐者から逃亡中の犬と千種を助けないと恨みますよ、と。

幽霊ってマジ怖い・・・!!

恨むんだもん!祟るんだもん!!

頼むから成仏してくれと懇願すると、骸は嫌そうな顔をしてまだ死んでないと言った。

・・・そうだった。

あんまり幽霊みたいだから、ついうっかり。


それから俺は骸の言葉に従ってフランスへ二人を助けに行った。

そこで感動の再会とかあったんだが、その夜起きたとんでもない事件が強烈であまり覚えていない。

骸の呪いから解き放たれたとうっかり眠った俺が馬鹿だった・・・。

目が覚めるとそこは幻想世界でした。

ちょっと最近、俺のとこ来すぎじゃねーですか、骸さん・・・。

小さく溜め息を吐いて草原を行けば、不自然にも開けた場所に病院のベッドがあった。

目を細めなくてもベッドに横たわる少女には見覚えがある。

間違いない、凪だ。

確か事故で右目と身体の中身を失ったんだよな・・・?

痛々しい傷と無機質な電子音が怪我の酷さを物語っている。




が助けて欲しいと言った少女は彼女の事ですよね」




気が付けば、俺の隣に骸がいてジッと凪を見ていた。

なるほど、ようやく俺がここに呼ばれた訳が分かった。

俺が足を進めれば、骸もピッタリ隣を歩く。




「不条理だよな。お前が欲しい物を彼女は持っているのに、彼女が本当に欲しい物は彼女の手にない」

「クフフ、逆もまた同じ、ですかね」

「・・・あなた達は誰?」




俺達が一歩近付くたびに電子機器が消え、凪の怪我が消え、ベッドが消える。

おー、すげぇ。無意識だけど凪のやつ自分の記憶を元に健康体を作り上げてるよ。

骸の意識と同調した事といい、幻覚を使える事といい、これは才能だな。




「僕と君は似た者同士かもしれない」

「え・・・」

いや、全然似てない。凪の方が可愛い




何言ってんの?お前と凪じゃ似ても似つかないって。

俺がそう言うとなぜか骸は「が女性好きなのは分かりますが、それは聞き捨てなりません」と怒り出した。

いや、聞き捨てならんのはお前の発言の方だ。

どこをどう見たら俺が女好きに見えるんだよ!

好 き だ け ど ! !

つーか、お前は俺に可愛いと言われたいのか?!

恐々と観察していた凪は言い合う俺達にキョトンと目を瞬いていた。

そうだった。話が逸れた。




「もう一度歩ける身体をやろうか、凪」

「え」

「その代わり、骸を助けてやって欲しい」

「何を言ってるんです、




心底怪訝そうにしている二人に小さく噴き出した。

いいじゃん、お前ら、似た者同士なんだろー?

足りない所を補い合えば二人で一人前くらいにはなるんじゃないの?




「ただし、この男は極悪非道。危険なことばかりするマフィア嫌いの偏屈者だ」

!いい加減なこと言わないで下さい」

「全部本当のことだろう。趣味脱獄も足しておくか?」




プンスカ怒っている骸の向こうで呆けていた凪が突然クスクス笑い出した。

あ、あれー?何かおかしなこと言ったか?

でもよかった、ずっと怖がられてるのは悲しいからな。

そんな凪を眺めていた俺は一つ咳払いをして、改めて彼女に向き直る。




「凪、こいつは厄介な人間には違いないが、誰よりも今お前を必要としてる。そのままそこがいいなら何も言わないが、

 自由が欲しいのなら、共に来い。どうせ捨てる命なんだろ?なら、俺達が拾ってやる」




大きな瞳を揺らす凪を俺はただジッと見つめた。

今を終わらせたいなら、俺達が終わらせてやるよ。

それからまた始めるんだ。

檻の外の自由な生活を。

何か間違ったことを言っているかと骸に視線を向けると苦笑して首を小さく振った。




「・・・いいえ。凪・・・、凪・・・、僕には君が必要です」




骸に必要とされることで、親に捨てられ世を儚む彼女の生きる目的になればいい。

凪が骸に使い捨てられる危惧は残るが、俺が付いてればいいことだ。

骸が懇願するように伸ばした手を凪がそっと取り、俺は小さく微笑んだ。

すると凪が俺の手も掴んで嬉しそうに微笑んだ。




「よろしくお願いします、骸様、様」




弱々しく手を引かれたと思った瞬間、凪は骸と俺の頬に小さく音を立てて唇を当てた。

あんぐりと口を開いて驚く俺達に外国の挨拶はこうするものじゃないのかと可愛らしく小首を傾げる凪。

か、可愛いが・・・!可愛いがぁー!!!

何か犯罪っぽいから止めぇぇぇい!!


と、まぁ、そんな訳で俺と骸は相当テンパりながらも凪を仲間にしたわけだ。

ちなみに凪が生まれ変わるなら改名したいと言い出して俺と骸が名付け親に指名されたのだが、

俺が姓名判断の本を調べている間に骸が勝手に原作通りクローム髑髏と付けやがった。

お前の名前のアナグラムじゃねーか!!

本人が目を輝かせて喜んでいたのでこれは一生言うつもりはないが、

骸、お前、本気でネームセンスねぇよ・・・。

本気と書いてマジと読むんだかんなー。

ま じ で !


* ひとやすみ *
・ちょっとした過去話。次の話も過去になりそう。
 揚げ足を取ってるけど結構本気で「凪の方が可愛い」と発言してます。笑
 うーん。私も骸と凪ってあんま似てないと思うから、溺愛して丸くなればいいのにとか考えたり。笑
 いやしかし、主人公も言うようになったものだ・・・。笑                         (10/12/03)