ドリーム小説

それからのスクアーロの愚痴り様は、思わず小さくなるほど凄まじかった。

いや、だってね?

ザンザスに尻叩かれながら日本中探し回ったのに、言い残して行った本人(俺)が忘れてるとは何事だ!と、

眼力鋭く恨み言をネチネチ言われると申し訳なくて縮こまりたくもなる。

せめて並盛に住んでるぐらい言っておけばよかったよ・・・。




「まぁいい。近い内にアイツらここに来るだろうからな。それでこれはどうなってやがる?」




・・・・・・はい?

その辺に放り投げていたボンゴレの紋章の入ったリングケースをスクアーロは指で叩いた。

まるで説明を求めるように俺を見てくるスクアーロに眉根を寄せる。

こっちこそ説明して欲しいんだけど?




「何企んでるんだぁ?ボンゴレリングはあと三年保管されるはずだっただろーが」

「何を、言ってる」

「とぼけるなよ。後継候補まで次々消しやがって、クソボスを担ぎ上げるつもりかぁ?」




ちょ、ちょ、ちょっと待て!!

まるで俺が全部企てたみたいに言うなよ!!

しかも何?後継が不審死したのってザンザスがやったんじゃないの?

てか、じゃあ何でアイツらボンゴレリングとか持ち出してきたの?




「待て。ザンザスはもう十代目の地位を狙ってないのか?」

「あ゙ぁ?それはテメェがあの時、止めさせただろーが!ゆりかごで!」




あ、あれぇー????

ザンザスは別に綱吉を狙ってなくて、ボンゴレリングも別にいらなくて、つまり、リング争奪戦は未遂で完結・・・?

ギャー!!何だそりゃ!!原作変わってんじゃん!!

じゃあ何でお前リング奪ってきたのさ?!




「はぁ?半分といえどボンゴレリングだぞ?ガキの手に渡っていい物じゃねぇ。回収して家光に保管させるのが筋だろ。

 お前本当に大丈夫か、?大体なぁ、リングをアイツらから奪ってきたのはお前だろーがぁ!」




はぁぁぁ?!

おおおお、俺がリング奪ってきたことになんの、あれ?!

大暴れしてるスクアーロの魔の手から綱吉助け出して「ちょっと良い事した、俺!」とか思ってたのにー?!

沸点限界間近のスクアーロの話を要約すると、俺を探しに日本をウロついてたら偶然遭遇したバジルに何故か襲われ、

明らか挙動不審だったので問い詰めると持ち出し禁止のリングを持っており、回収しようとした所に俺が現れて

リングを奪って行ったのでここまで一緒について来た、ということらしい。

何か、話の流れ的に俺が一番悪役っぽくねぇ?!

心底疑うような視線を向けてくるスクアーロに俺はブンブン首を振って否定した。




「悪いが俺は何も知らない」

じゃない?・・・チッ、きな臭くなってきやがった」

「とりあえずこのリングは持って帰れ」




ザンザスが綱吉を狙ってないなら、原作通りこのリングがヴァリアーに渡っても問題ないはずだ。

偽リングにも気付くだろうし、あとの対処はザンザスに任せよう。

しかし、スッキリしない。

ザンザスじゃないなら、何でボンゴレリングが動いてる?

裏でこの展開を描いてるのは一体誰なんだ?

何とも言えない沈黙を破ったのは執事だった。




「スクアーロ様、失礼ですが、チェルベッロ機関という物をご存知ですか?」

「・・・なんだそれはぁ?」

「最近、九代目の周りをチョロチョロしてるらしいんですが」




紅茶を注ぎながら話す執事を見ながら、顎に手を添える。

スクアーロが知らない?

確かチェルベッロはヴァリアーの手先みたいに言われてたし、ここでも原作とのズレが生じてるのか。

そもそも奴等は未来編ではミルフィオーレ側にいたし、何の為にボンゴレに近付いたんだ?

つーか、あの狸マスクからして怪しすぎだろ。

あー、分からん!

俺は並々注がれた紅茶を掴むと一気に流し込んだ。

ソーサーに戻したカップが甲高く音を立てると、向かいのスクアーロと目が合った。

・・・何?何か言いたそうだけど?




「・・・お、お前んとこのチビ、元気かぁ?」

「は?」

「・・・っガキと一緒に住んでただろう?」




何でお前そんなこと知ってんの?

恭弥のこと、だよな?

突然の話題転換に驚いたが、何だか必死そうなのであえて突っ込まずに頷いておいた。




「あぁ。随分大きくなって強くなった」

「お前に似てるんだろうな」

「どうかな。血の繋がりはないからな」

「!!」




酷くまずいことを聞いたと言わんばかりに、目を見開くスクアーロ。

別に今更俺が養子なこと気にしたりしないんだけどな。

苦笑して気にするなと首を振れば、スクアーロはおずおずと窺うように口を開いた。




「母親は帰って来たのか?」

「いや。あの人は旦那と旅に出たきりだ」

「あ゙ぁ?!」




な、何だよ!急に立ち上がんなよ、ビックリするだろ?!

つーか、何で母さんが旅行してることまで知ってんの、お前?




「一体何なんだ、スクアーロ?お前、俺に何を言わせたいんだ?」

「・・・、お前はそれでいいのかぁ?」

「良いも何も、幸せそうなんだから別にいいだろ」




父さんと母さんの事なんて俺がどうこう言うことじゃないし、何か非常識だけど仲良いから問題ないだろ?

なのにお前なんでそんな渋い顔してんの?

さっぱり意味分からねー・・・。

それから、押し殺してるつもりなんだろうが、背後で腹抱えて爆笑してる執事も一体何なのか。

目尻に涙を溜めながら執事は何でか沈んでいるスクアーロに微笑みかけた。




「愛の形は人それぞれなんですよ、スクアーロ様。お茶請けでも召し上がって元気を出して下さい」




コトリと音を立てて目の前に置かれた皿をスクアーロがガン見している。

分かる。分かるぞ、スクアーロ。

今、お前が何を思ってるのか、俺にはよーく分かる。

ひたすら皿を見つめてる彼にホロリとしながら、俺は皿に行儀良く並べられたそれを口に放り込んだ。

最近、お茶の時間にこれがないと違和感を覚えるようになってしまった自分が切ない。

もきゅもきゅと咀嚼している俺を見ながらスクアーロが心底不思議そうに言った。




「何でお茶請けにちくわなんだ・・・?」




だーよねー。


* ひとやすみ *
・スクアーロはトコトン勘違い被害者。笑
 未だに主人公を愛人でもない女性に子供を産ませたサイテー男だと認識中。(62・63話参照)
 分からなかった人はそれを踏まえてもう一度読んでみよう!複雑すぎる人間関係が見えてきます!笑
 原作の意味合いがガラリと変わって来ました。何だか私もいろいろいっぱいいっぱいですー。         (10/11/10)