最弱ヒーロー

11.話を聞こうよ！

いじめっ子にイジメを止めさせるのに、さらに強い奴を連れて行く俺が卑怯だと言うのなら笑えばいいさ！

フハハハハハハハハハ！

・・・・って俺が笑ってどうするよ。


だけど、スクアーロを連れて来た俺の選択は間違ってなかったと断言しよう。

なぜなら・・・




「うﾞおぉぉい！！テメェはへなちょこと呼ばれるだけじゃ足りねェのかぁ？」

「スクアーロ？！何でここに」

「ハッ！イモムシ野郎が。テメェがそんなだからが手を焼くんだろぉが！」




スクアーロの影に隠れていたのに、そんなカッコよく顎で指されれば出て行かざるを得ない。

仕方なく姿を現せば、床で簀巻きにされて転がっていたディーノが目を見開いていた。

うぅ。兄ちゃん卑怯者でごめんなさい。



状況を説明するならば、ディーノを探して俺達が走り回っていると、いじめっ子に苛められてる弟発見。

しかも何だかヤバめな状況だったらしく、ディーノは武器庫にあった鞭で縛られ転がされていた。

な？スクアーロ連れてきて正解だったろ？


いい訳臭い事を思いながら、何も出来ない俺は大人しくディーノの縄を解いてる事にした。

何にも言わなくてもスクアーロは嬉しそうにいじめっ子を苛めていた。

鞭で縛るとか何だか危険な香りを体験してる弟に、眉根を寄せながら固く縛られている鞭を強引に解く。

何だコレ、めっちゃ固い。解けないぞ。




「兄さんッ・・・！俺、俺っ・・」




え、何？何でそんな泣きそうなの、お前？

俺が乱暴に解こうとするからか？

もうちょっと優しくな。頑張るから、ちょっと待ってて。




「ディーノ、話はあとだ」




じゃないとまた乱暴になっちゃう。

息を止めたように静かになったディーノに、ようやく鞭が解けてディーノを見れば青褪めていた。

え？ホントに息まで止めなくていいんだぞ？！




「・・・大丈夫か」




頼むから息してくれ・・・。

絶対大丈夫じゃないだろうが、とりあえずそう聞くと堰を切ったようにディーノが話し出した。




「ごめんなさい！俺兄さんに迷惑を掛けるつもりはなかったんだ！絶対俺一人で解決しようって思ってたのにっ」

「・・・まて」

「へなちょこなのに兄さんの傍にいる資格なんてないって言われて、俺だから一人で頑張ろうってッ」

「・・・おい、」

「弟だからって守られて、兄さんの役に立てないのは嫌なんだ！」

「・・・ちょ、」




弟が話を聞いてくれません。

それどころか、何でか物凄い話が飛躍してる。

俺のせいで苛められてるのに、俺の傍にいる資格だとか、役に立てないだとか。

俺がディーノに好かれてるのは分かったけど、何だかこれは違う気がする。




「俺へなちょこだし、何にも取り柄なんてないけど・・・頑張るからッ！！」

「・・・あのな」

「だから、だから！！嫌わないで・・・・っ」




大きな目にいっぱい涙を溜めて、それを零さないように唇を噛み締める姿は何だか痛々しい。

何を勘違いして自分を追い込んでいるのか俺には全然理解出来ないけど、ようするに言いたい事はソレだったようだ。

ようやく止まったディーノのマシンガントークにどう答えようかと小さく息を吐く。

些細な事で崩壊しそうなディーノには、俺の溜め息すら怖い物のようで肩を震わしていた。




「あのな、人が人を傍に置くのに資格や役立つからとかそんな理由がいるのか？」




少なくとも俺はそんな事を思ってディーノの傍にいる訳じゃない。

兄弟だからといって皆が皆、好き合っている訳じゃないだろうし。

まぁ、鬼家族の兄貴がいい例だな。

弟だから傍に置いてるんじゃなくて、ディーノがディーノだから俺が傍にいたいんだ。




「俺は嫌いな人間の傍に好んでいるほど、出来た奴じゃない」

「、兄さ、ん・・？」

「取り柄がないとか言うな。お前は俺にはない明るさを持っているし、人を惹き付ける能力が羨ましいと思ってる」

「俺、が・・？」

「あぁ。お前だけじゃなくスクアーロの剣術とかもな。取り柄は誰でも持っているし、誰もがそれを羨む物だろ？」




無い頭捻って拙い言葉で話す俺の言葉はディーノに伝わっているだろうか。

つまりあれだよ、人は支え合って生きているのだよ。

ね。金髪先生。あれ、一文字違い？




「俺がディーノを嫌うなんてありえないし、お前がいないと灯りが消えたようだ」




ようするにお兄ちゃん寂しいんだよー。

最後まで聞いてくれたディーノに「伝わったか？」と聞けば、大泣きされた。

相変わらずの破壊力の泣き声に頭を撫でてやれば、物凄い勢いで飛び付かれた。




「うﾞぅうぅぅぅっ。ひっく。兄さぁん！づたわったぁ」




あぁ。ようやく一件落着だ。

よしよし。分かったから、その男らしい泣き方をいい加減止めてくれ。

俺の耳が、むしろ脳がやられそうだ。




「うﾞぉおﾞい！こいつらどうするよ？」




あ。スクアーロ忘れてた。

ディーノの肩越しにボロボロになったいじめっ子を見付けて、俺は心底謝った。

何か、子鮫連れてきてごめんなさい・・・。

何だか機嫌の良さそうなスクアーロにもういいと言った途端、学校にいるはずの無い黒スーツ達に囲まれていた。


何ていうか、一難さってまた一難・・・？