ドリーム小説

あー、えー、その後の事はと言いますと、知りたい?

簡単に言うと、全て原作通りに事は進んだ。

何て言うか感想を述べるなら、ボロボロのみんながフラフラと立ち上がるのがホラーすぎて怖かった。

それから、ハイパー化した綱吉のカッコよさは異常。

まぁ、そんなこんなで事件は綱吉の勝利で幕を下した。

え?俺は何してたかって?

そんなの隅っこで二人を応援してたんだよ、心の中で!

その後、復讐者に睨まれ可笑しな雰囲気になったが、あれは仕方ない。

親父と9世の口添えがなければ、俺もあの事件で下手すりゃ復讐者の牢獄送りだったからな。

今更ながらあの黒尽くめの奴等を思い出して背筋を震わす。

オペラ座の怪人かっての!!



あれから数日、並盛は平和だ。

何せ恭弥は今、入院中。

三日で病院に飽きた恭弥が家に帰ると言って聞かなかったが、二週間は病院で安静にしてないと口を利かないと冗談で

言ってみたらおかしなことに恭弥は俺の我侭に付き合ってくれた。

本当に優しい弟だ。

病院は本当に暇らしいが、時々覗きに行くとバーズの鳥と遊んでるのをよく見かける。

俺の名前を教え込んでるのがかなり気になるが、可愛いから許す。

まぁ、そんな感じで俺は日常を平穏に穏便に過ごしていたわけだが、事件はまだ終わりじゃなかったようだ。

俺は全く身に覚えはなかったが、見覚えのある草原にポツリと立っていた。




「・・・えーと、もしかしなくてもここって骸の幻想空間?」




確か俺はマンションのソファで執事と話してたはずじゃ・・・。

もしかして寝てしまったのだろうか。

自分の失態に息を吐いて悔やむものの、何となく骸が呼んでる気がしてたのでこれはこれで良かったのかもしれない。

またここに引っ張り込まれたと言うことは骸が俺を必要としているのだろうと思い、俺は当てもなく草原を歩き始めた。

骸と犬、千種の三人は復讐者に連行された。

だから俺としてもアイツらの詳細はかなり気になっていた。

セカセカと草の上を歩いていると不意に背後に気配がして振り返ると、寝転がって空を見上げる骸がいた。




「ねぇ、僕は間違っていたんでしょうか」




ぼんやりとしているものの、元気そうな骸にホッとして俺は骸の隣に腰を降ろした。

居心地が悪そうにこっちを見ない骸を察して、俺も同じように寝転がった。




「ようやく気付いたか、バーカ」




気付くのが遅せぇんだよ。

間違いも間違い、大間違いだ。

言ったよな、俺?

ボンゴレ落として世界大戦なんてどうかしてるとしか思えないって。

あの大ボンゴレが本当にお前を脅威に思っていたなら、綱吉に任せず全力でお前を潰しに掛かってたよ。

つまり、お前達は綱吉の試練に丁度いいと見なされたってことだ。

全く腹立たしいことだが、マフィアの考えそうなことだな。

だから俺はあの時お前は何も分かってないと言ったんだ。

それが分からない骸じゃないはずなのに何で?と俺はずっと考えてきた。




「お前、あの時、世界を変えるのは自分だと言ったよな」




困惑するように見てきた骸に、俺は一つの仮説を立てた。

お前もどうしてあんな無謀なことしたのか自分でも分からないんじゃないか?

俺には今のお前が酷く不安定に見える。

答えを俺に求めるようにジッと見つめてくる骸に、俺は視線を向けて口を開いた。




「骸、お前、本当は世界を変えたいのではなく、本当は自分が変わりたかったんじゃないのか」




何だか凄く抽象的な話をしている気がしたけど、強ち外れでもなかったようだ。

目を瞠り息を呑んだ骸の心情を思う。

最初は純粋に妬みだったのだろう。

誰にも認められず世界に異質の烙印を押され、自分を貶めたマフィアを憎む気持ちは俺にも分かる。

歪んだ自分を正当化したくて、骸は世界を悪者にして消してしまおうと考えた。

だがそれは、俺には矛盾しているように見える。

消してしまいたいほどこの世界を嫌悪してると骸は言うが、本当はこの世界に自分を認めて欲しかったんじゃないのか。

無茶なことをしていると分かっていながら自分で自分を止められないこともある。

だからお前、こんな無謀な事を誰かに止めて欲しかったんじゃないのか?

人間誰しも心の底で物騒なことを考えてるものだが、それを行動にしてしまえば法も秩序もなくなる。

そこで理性を以って抑えるわけだが、あの時の骸に理性なんて物は存在していなかったようだった。




「お前、人間道の能力、今まで何回使った?」




ビクリと肩を揺らした骸に俺は何となく想像が付いて溜め息を吐いた。

俺の仮説では、人間道の能力を使った時に現れるあのドス黒い闘気が骸の理性を喰らったんだと思っている。

使用する度に精神を侵略され、あんな理性の欠片もない無謀な行動を起こしたのではないだろうか。

骸もその可能性に辿り着いたのか、恐々と右目に触れて怪訝そうな顔をしていた。




「お前、綱吉に逢えて良かったな」

「・・・浄化に感謝はしても、存在は気に入りません」

「お前らしいな。綱吉の炎で浄化されたんだ、人間道はもう使うなよ」




不貞腐れたように返事を返した骸に俺は笑って頭を撫でた。

照れながらも大人しく撫でられる骸の顔は裏のない笑顔だった。

あー、これこれ!昔のお前に戻って俺は嬉しいよ!

すると骸が不意に頭に乗っていた俺の右手を捉み、マジマジと観察し始めた。

え、え?何・・・?




「死ぬ気の炎・・・でしたか?色は違いましたがも彼と同じように出していましたよね?」




あちゃー・・・・。やっぱバレたか。

マインドコントロールを解いたり、幻覚を破ったりしたのは、どうやら俺の炎だったらしい。

右手の人差し指に嵌ってる指輪に視線をやって、俺は素直に頷いた。

骸は少しの間、何かを考えるように黙り込んでから俺の手をギュッと握ると真剣な目を向けた。




「どうかあの二人を守ってやってくれませんか」




にだから頼むのだと訴える骸に俺は目を細めた。

お前、また脱獄する気だな?

復讐者はそんなに甘くない。

俺の視線に骸は薄く笑って空を見上げた。




「分かっていますよ。おそらく全員での脱獄は不可能でしょう」

「お前、二人を逃がすために囮になる気か?」

「クフフ、彼らを巻き込んだのは僕ですからね」




惜しむように空を見上げる骸に俺は起き上がってグチャグチャになるまで頭を撫で回してやった。

やっぱお前、何だかんだ言いつつも、犬と千種のこと大事にしてるんだな!

あの滅茶苦茶な骸はドス黒い闘気のせいだったんだ。

綱吉の炎に浄化され、昔の骸に戻ったことが嬉しくて思わず涙ぐむ。

突然のことに目を丸くして驚く骸に俺は笑って交換条件を出した。




「二人の保護を受ける代わりに、一人の可哀相な少女を助けてやって欲しい」

「少女、ですか?」

「お前と正反対にいてそっくりな少女だ。外に居るのに自由がなく命尽きそうな少女」




怪訝そうな顔をしている骸に逢えば分かるとだけ伝えると、骸はコクリと頷いた。

良かった。

彼女を救うことはお前を救うことでもあるからな。

視界が急にぼやけてきて、俺は目覚めが近いことを覚る。




「いいか、骸。何かあったらいつでも俺の所へ来いよ。お前は俺の・・・、」




視界が真っ白になりハッとした瞬間、目の前には見慣れた天井。

横たわっていたのは草原ではなく、ソファの上だった。

現実に戻ってきたのだと理解した途端、深く溜め息を吐いて額の上に腕を乗せた。

俺の言葉ちゃんと伝わったかなぁ・・・。




「お前は俺の、弟みたいなもんなんだからな」




兄ちゃんは心配だよ、お前らが無茶しないかどうか。

この事件の結末は原作通りで切ないものがあったけど、浄化されて昔の骸に戻ってよかった。

今は遠く離れているけど、またすぐに逢えることを期待してるからな。

俺は少し晴々しい気持ちで起き上がると、仕事の続きをするために静かにその部屋を出た。

さぁ、俺も頑張ろーっと!


* ひとやすみ *
・これにてすいか編は終了です!!
 いやー、ここまで本当に長かった・・・!何せ100話超とかいう驚愕事実。感謝感謝の大感謝です!
 骸の怖いまでの変わり様は、欲に塗れた人間道を極めたせいだということでした。
 本当の所はどうなのか分かりませんが、ヒーローでは闘気が黒くなるまで人間の汚い所を見てきたから
 あんな風になってしまったんじゃないかと私なりの解釈でここまで書き上げました。
 すいか編の見所は皆の成長と骸の変化だよなと必死になってたんですが、いかがでしたでしょう?笑
 いよいよリング編が始まります!ヒーローも終わりが見えてきました!
 これからも頑張るので応援よろしくお願いします!!                           (10/10/02)