ドリーム小説
まさかここに来てと敵対するとは思っていませんでした。
緊迫した空気に包まれた部屋の中で僕はと睨み合い、千種は固唾を呑んで僕達を見ていた。
の威圧感に気圧されるように喘ぐ声が聞こえ、は振り返って柔らかく笑った。
「フゥ太、先に行け」
その笑顔が向けられていたのは僕達のはずだったのに、どうして邪魔をするんです?
安心したようにホッと息を吐いたフゥ太君はコクリと頷いて部屋を飛び出して行った。
「千種、逃がすな」
僕達を見ていた千種はハッとして頷き、彼を追い掛けて走り出した矢先に千種の足元にズガンと鉛玉が埋め込まれた。
いつの間に構えたのかの手には白い銃剣が握られており、早撃ちされたのだと気付いた時には千種は硬直していた。
なんて威圧感だ・・・。
容赦のない殺気に千種の身体は恐怖で震え、どうやら動けそうにない。
僕はじっとりと濡れる掌を握り締めて嘲笑した。
本当に厄介なことになりました。
を引き止めるなんて無謀もいい所です。
何の遠慮もなく淡々と撃ち込んだに、僕の眉間は自然と皺を寄せた。
「どうやら本気という訳ですか」
「俺はいつも本気だが」
「ご冗談を。ですが僕も今ここで彼を逃がす訳にはいかないんですよ」
「・・・ならどうする」
ならば全力で貴方をここに留め置くまで。
第四の道、修羅道。
これならばを足止め出来るかもしれない。
右目が変化したのを期に僕は地を蹴った。
あわよくば契約出来るかもしれないと思っていたんですが、実際はそんな余裕などは微塵もくれなかった。
叩く、弾く、逸らす、防ぐ。
常人には付いてこれないはずのスピードで打ち込んでるのに、全てを銃剣一つでピタリと止められる。
どんなに攻め込んでも表情の変わらないにこちらが焦ってしまう。
千種、今の内に彼を追いなさい・・・!!
呆然とこちらを見ている千種に気付いて、僕が必死に視線を投げ掛けると千種はハッとして出入り口を見た。
この部屋から出るにはフゥ太君が出て行った扉と、外に張り出した窓しかない。
僕がの気を引いている今しかありません。
千種は小さく頷き、扉を目指して駆け出した。
しかし次の瞬間、ガシャンと目の前に古びた蛍光灯が落下してきて千種は思わず足を止めた。
を見ると銃口が天井に向いていて、蛍光灯が降って来た理由を知る。
「気を付けろ千種。次はどこへ飛ぶが分からない」
に隙はないのか?!
二対一だというのに余裕すぎるに血の気が引いた。
今まで彼が防戦一方だったのは千種を警戒していたからだと今更ながら気付いて僕は舌を打つ。
どこか面白そうに僕を見てくるから少し離れて右目の闘気を消した。
「正攻法でダメならば、手っ取り早く済ませましょう」
修羅道でダメなら地獄道の悪夢ならどうです?
幻覚は力でどうにかなるものではない。
さすがのもこれには対抗出来ないのではないだろうか。
僕は一切の遠慮をせずに火柱が上げた。
術中に嵌っている人間と同じ反応をが見せて、僕は笑いが漏れた。
地震にバランスを崩して地の裂け目に落ちていくを横目に、ようやく千種が部屋を出られた。
いくら伝説のと言えど、精神攻撃には弱いようですね。
目を閉じて溶岩に落ちていくが不意に目を開いた瞬間、ゾクリと背筋を悪寒が走った。
「幻覚ごときどうにか出来なくてどうする」
の右手がキラリと光った瞬間、部屋を何かが覆って僕の幻覚が跡形もなく吹き飛んだ。
ぬるま湯に浸かった感覚がしたと思った直後に、なぜか僕の体力を根こそぎ持っていかれた。
酷い倦怠感にガクリと膝を付くと、の右手を睨むように見た。
何が起きたのか理解出来なかったが、あの時と同じだ。
あの時よりも何十倍も凄まじいが、がフゥ太君のマインドコントロールを解いた時と同じ感覚だった。
一瞬しか見えなかったが、あれはまさか闘気・・・?
そんな馬鹿な。
この部屋を包み込むほどの闘気など聞いたこともない。
得体の知れない強大な力にブルリと思わず身体が震えた。
初めから全然本気ではなかったんですね・・・。
千種が部屋を出れたことも今ならわざとだったと分かる。
ジッと僕を見下ろすに冷や汗を流していると、手出しするつもりはないが、とは口を開いた。
「マフィア嫌いのお前がマフィアを殲滅したいのは分かるが、ボンゴレを狙うとは自分が何してるのか分かってるのか」
当然です。正気じゃなければこんなこと出来ませんよ。
一体、今更何を言っているのか。
ボンゴレさえ手に入れば、マフィア界など手玉に取ったも同然だ。
だと言うのに、ボンゴレが後継者に選んだのがあのような少年だとは。
この僕があのような脆弱な少年に負けるはずがないでしょう?
「もちろん分かっていますよ。世界を変えるのはこの僕です」
は溜め息を一つ吐いて首を振った。
まるで呆れたようなその態度に眉を寄せるとは背を向けた。
「お前は全然分かっていない」
「僕が間違っていると?なら貴方が僕を止めますか、」
「・・・いや、お前を止めるのは俺じゃない」
では、一体誰が止めるのです?
扉を出て行ったに首を傾げたが、答えの出ない問いをすぐに記憶の彼方へ追いやった。
貴方が止めないと言うのなら、僕を止められる人間などありはしない。
小さく笑った僕はフゥ太君を探すべく、同じように部屋を後にした。
* ひとやすみ *
・こんな感じ。笑
互いの心情が分かればいい感じのお話。
実は骸も主人公かなり必死っていう裏事情。笑
さーて、もう少しですいか編も終わりです!それまでどうぞお付き合い下さい! (10/09/15)