ドリーム小説


長かったのか短かったのかある程度の時間が過ぎて、動植物園の辺りから聞こえていた騒音が静まった。

実は少し前に綱吉、隼人、武、ビアンキ、リボーンが黒曜ランドに乗り込んできたと報せを受けた。

鼻のいい犬が出迎えに行ったのだけど、どうやら決着がついたようだ。

アイツ、ちゃんと死んだフリ出来たかなぁ。

出掛けにオポッサムチャンネルを持って行くか行かないかでもめたんだよね。

そんな状況にはならないと犬は怒ってたけど、もし使ってるなら余計なことしてなきゃいいんだけど。

アイツ、馬鹿だからなぁ・・・。




「おや、目を覚ましましたか?」




どうやら気を失ってた千種が起きたらしい。

骸が状況を説明して、千種はかつての脱獄仲間と再会した。

大体年齢がバラバラなくせに全員黒曜の制服着てるとかシュールすぎるぞ。

顔を引き攣らせて見ているとドサリと音がして、視線を向けるとフゥ太が慌ててランキングブックを拾っていた。

うーん、綱吉達が来たって知ってから落ち着きないんだよな、フゥ太。

まぁ無理もないけど。

ようやく仕事だとゾロゾロと出て行き、部屋には俺とフゥ太、骸と千種が残された。

ずっとソワソワしてるフゥ太の視線は窓の外に釘付けだ。

俺は溜め息を一つ吐いて口を開く。




「会いに行くか、フゥ太」

「・・・え」

「綱吉に言いたいことがあるんだろう」




ようやく俺を見たフゥ太は少し迷ってからコクンと頷いた。

多分もう帰れないからさよならを言いたいとかそんなのだろうけど、

もしフゥ太が逃げたいと言うのなら俺は協力するぞ?

真剣な表情のフゥ太に俺が頷いた時、急にフゥ太が青くなった。




「誰がそんなことを許しましたか?」




クフフと声を上げた骸が背後に立っていた。

無駄に綺麗な笑顔が威圧感を増長させており、怯えたようにフゥ太が俺に抱き付いてきた。

正直、俺も怖いんだけどー!!

刺激しないように説得を試みるべし!




「心が狭いと俺のようにモテないぞ、骸」

「残念ですが、貴方と同じように不自由してませんから」




ギャー!!皮肉で返されたー!!

物凄いダメージを受けた俺に追い討ちをかけるように骸は三叉槍を顕現した。

しかもヤる気満々ー!!俺、大ピンチ?!

ピリピリとした空気の中、骸と睨み合っているとフゥ太の喘ぐような呼吸に気付いた。




「フゥ太、先に行け」




そうだよな。怖いよなこの雰囲気。

フゥ太を安心させるように笑いかけると骸がすかさず部屋にいた千種に逃がすなと命令した。

あ、こら千種!頷いてんじゃない!

俺は迷った末にを取り出して、千種の足元に発砲した。

今、フゥ太追われたら捕まっちゃうじゃん!

目を見開いて全く動かなくなった千種から目を離して、骸を見た瞬間に俺は今更後悔した。

年上の見栄でフゥ太を引き攣る笑顔で何とか逃がしたものの、めちゃくちゃ怒ってない?!




「どうやら本気という訳ですか」

「俺はいつも本気だが」

「ご冗談を。ですが僕も今ここで彼を逃がす訳にはいかないんですよ」




ならどうすると聞いてはみたけれど嫌な予感しかしない。

ニヤリと笑った骸の右に闘気が点り、オーラの中に「四」の字が浮かび上がった。

それを合図に骸は物凄いスピードで三叉槍を打ち込んできた。

ギャー!!速い!怖い!痛い!死んじゃう!

骸の動きを目と勘で読みながら、俺はで必死にそれを受け流す。

てか、そんなにガンガン叩いたら・・・・!

ガウンと手元で音が鳴った瞬間、遠くでガシャンと何かが割れる音がした。

恐る恐る首を向けると、千種の足元に蛍光灯落ちていた。

ほらぁー!!骸がガンガン叩くから手が滑って蛍光灯撃ち落しちゃったじゃん!




「気を付けろ千種。次はどこへ飛ぶが分からない」




うわーん!ゴメンな千種!まさかそんな所に飛んでいくとは。

俺にはどうにも出来ないからお前が避けてくれ。千種なら出来る!

ふと骸に視線を戻すと骸が俺から距離を取って口を開いた。




「正攻法でダメならば、手っ取り早く済ませましょう」




骸の右目の闘気が消えた瞬間、コンクリートの床から凄まじい火柱が上がった。

気が付けば右目は「四」から「一」に変わっていた。

えぇー!!今度は幻覚かよー!!

あちっ!あっちぃ!!火柱ヤバイって!うあ!今度は地震?!地面が裂けたー!!ってギャー!落ちる!!

火柱にパニックになっていたら地震でパックリと地が裂けてその裂け目の底には火の海。

バランスを崩し裂け目に落ちた俺の視界に千種が部屋を出て行く姿が映ったが、それ所じゃない!

背中に近付く熱気や浮遊感を感じながら、幻覚にやられる惨めな最期を想像して目を見開いた。




「幻覚ごときどうにか出来なくてどうするっ」




もがくように右手で空を切るとブワリと何か生暖かい物が身体を包み、一瞬で骸の幻覚が掻き消えた。

気が付くと元のコンクリートの上に立っていた俺と辛そうに床に跪く骸。

・・・は?!何が起こったの?!

てか、俺、今、何か右手から何か出なかった?

・・・・分からんが、俺、生き残ったぜー!!

てかさー、何で俺がこんな目に遭わなきゃなんねーんだよ?

それもこれも全部お前達の計画のせいじゃん!

段々腹が立ってきた俺は、手出しするつもりはないが、と前置きして口を開いた。




「マフィア嫌いのお前がマフィアを殲滅したいのは分かるが、ボンゴレを狙うとは自分が何してるのか分かってるのか」




正直な所、俺も掟に煩く、簡単に命のやりとりをするマフィアが好きではない。

だけど、それとこれとは話が別だ。

ボンゴレはマフィアの中でも相当な権力を持っている。

例えエストラーネオファミリーの憑依弾を使って操ったとしても、そう簡単に落とせるような組織じゃない。

ましてや、それを使って世界大戦なんて夢のまた夢だ。

なのに骸達はこんな穴だらけで不確かな計画で成し遂げようとしてるのだからどうかしてるとしか思えなかった。

俺からすれば、ランボの世界征服も骸の世界大戦も同じレベルに見えるぞ。




「もちろん分かっていますよ。世界を変えるのはこの僕です」




立ち上がりながら歪んだ笑顔を見せた骸に溜め息を吐いて首を振った。

それが分かってないって言うんだよ。

怪訝そうに眉を寄せた骸に背を向ける。

逃げるなら何か大人しくなった、今だ!




「お前は全然分かっていない」

「僕が間違っていると?なら貴方が僕を止めますか、

「・・・いや、お前を止めるのは俺じゃない」




お前を止めるのは綱吉だ。

それは間違いない。

ジリジリと扉の所まで辿り着くと、骸をそこに残して俺はフゥ太を探しにその場を逃げ出した。

お前の相手は綱吉なんだから、もう俺を襲ってこないでー!


* ひとやすみ *
・日本語って面白い。「俺のようにモテないぞ」には意味が二種類あります。
 モテモテの俺のようになれないぞ?という意味と、俺のようにモテない男になっちゃうぞ?の意。笑
 いやしかし、何だかんだ言いつつも、やっぱり何気に最強な主人公。笑
 いろいろと盛り込んだのであとは拾っていくだけです!これが苦手なんだけど。笑
 次は骸視点でこの様子をお届けしまーす!どんな風に思われてるのか・・・。
 残りのあと少し、すいか編お付き合い下さいね!!                         (10/09/15)