ドリーム小説
「落ち着け」
お、お、お、落ち着け、俺ー!!!
掠れた声が俺の口から漏れて、目の前の小さなスクアーロが機嫌良さそうに口の端を吊り上げる。
原作キャラにいつか会えたらいいなー、なんて思ってた頃の俺をぶん殴りてぇ。
子鮫でもおっかねェ!!!
「・・・はッ!噂通りだなぁ。お前に勝てば俺が最強って訳かぁぁ?」
「何か勘違いしてないか?」
ホントに何ですかそれー?!
噂って、最弱と最強間違えてるんじゃないの?!
プルプルと震えてきたフォークを剣から引き抜いて、観察してみたらフォークの先っちょ真ん中一本ねぇ!
剣を受け止めて真ん中だけぶっ飛んだらしい。
どこ行ったんだろ先っちょ。
スクアーロの後ろでキラリと光ったそれに目を細めて、スクアーロを避けるように覗き込んだ瞬間
剣先が顔ギリギリを通り過ぎていった。
いいい、今、先っちょ覗き込んでなかったら顔無かったよね・・・?
怖すぎるよコイツー!!
「・・・ッこの俺がお前に劣るって言いテェのかぁ?!」
般若出たー!!
何でそーなるのか全く分かんねぇケド、何かめちゃくちゃ怒ってらっしゃる!
真っ赤になって怒っているスクアーロがあまりに恐ろしくて視線を逸らす。
あ、あれは・・・!
騒がしい俺達を見ている野次馬の中に不安そうな顔をしたディーノを見付けた。
ディーノと目が合うと瞳を揺らしてディーノが踵を返した。
追い掛けなきゃ!!
俺は状況をスコーンと忘れて立ち上がって飛び出した。
ヒヤリとした感覚が背筋を走ると目の前に銀色に輝く剣が行く手を阻んでいた。
「ゔお゙ぉぉい!まだ話は終わってねぇ!」
どんどん離れていくディーノに俺は酷く焦っていて誰と話していたかも覚えていなかった。
俺とディーノを遮る剣を無意識に掴んで押し返す。
「邪魔するなッ!」
「・・・・ッ、」
降ろされた剣を見るでもなく、俺はテラスを飛び出してディーノを追いかけた。
だけどすでにそこに弟の姿は無く、俺はすぐに足を止めた。
ディーノが俺を嫌がっているなら追い掛けても無駄な気がした。
というか、面と向って「兄さんなんか嫌いだー!」とか言われたら俺立ち直れない。
クルリとテラスに戻る事にした俺が目にしたものは肩を震わすスクアーロ。
お、俺、さっき何言ったっけ・・・。
今度こそ、死んだかもしれない。
冷や汗が滝の如く流れ、ぎこちない動きで足を動かす。
ディーノの事で俺すっかりスクアーロを怒らせてたの忘れてた。
俯いて怒りを噛み殺すスクアーロに俺は覚悟を決めて再び椅子に座った。
・・・・・・・・。
・・・・えーと、何か反応してくれないかなぁ。
チラチラと視線を向けるんだけど、俯いたまま顔を上げないスクアーロ。
どうしようかなぁ。
息の詰まる状況に溜め息を吐いた俺にピクリと反応したのを見たが、また沈黙が続いた。
「・・・わ、るかったっ、」
え?何か謝ったよ、この子鮫。
も、もしかしてさっき俺、大きな声出して怒鳴ったから怖かった、とか?
そうだよな、まだ小さいもんな。年上に大きな声で怒鳴られたりしたら怖いよな。
未だに俯いているスクアーロが普通の男の子に見えた。
「そこ座れよ」
ビビリながら声を掛けたら、スクアーロは大人しく向かいの席にちょこんと座った。
おぉ。これなら何とか話が出来そうだぞ。
「お前、名前は?」
知ってるけど聞いとかなきゃまずいよな、やっぱ。
「・・・スペルビ・スクアーロ、」
下を見つめたまま、小さく返事が返ってきて安心した。
子鮫と言葉通じたー。
「俺はだ。・・・・スクアーロ、顔を上げろ。俺は別に怒ってないから」
ガバリと音がしそうなほど、勢い良く顔を上げたスクアーロがあまりにホッとした顔をしていたから
俺は思わず笑ってしまった。
自分のした事に気付いたのか真っ赤になって顔を逸らしたけど、もう遅い。
コイツ、ウチの弟並みに可愛いトコあんじゃん。
「・・・」
「何だ?」
「さっき何を追ったんだぁ?」
おずおずとだけどさっきの調子が戻ってきたスクアーロが首を捻ってる。
あぁ。聞いてくれるか、俺の悩みを。
気付いたら俺はディーノに言われた事、言った事をまるっと全部話していた。
多分、スクアーロが不甲斐ない俺の悩みを神妙な顔をして聞いてくれたからだと思う。
「いや、は間違ってねェ。努力が足りないなら努力すればいい。弱ェなら強くなればいい。
だからディーノが苛められるのはアイツ自身の責任だろぉ」
「何だって・・・?」
ディーノが苛められている?!
まさか、俺がへなちょこなせいで、とばっちりを受けてるのか?!
ディーノが抱えていたのはコレだったのか・・・。
俺が原因で苛められているなら俺が何とかしなければならない。
苛めてる奴にも話をしないと。
これは俺の問題だ。
な、殴られたりしちゃうかもしれないけど、ビビッてる場合じゃない。
俺はディーノを探そうと再び立ち上がった。
ビクリと俺を向いで見上げているスクアーロと目が合う。
「一緒に来るか?」
なーんて。
いや、だって強いスクアーロがいたら心強いっていうか、何とかしてくれちゃうかなーっとか思ったりして。
やっぱ来ないよねー。
俺が踵を返そうとした時、椅子を乱暴に引く音がしてスクアーロを見ると、愛用の剣を片手に愉しそうに嗤っていた。
「付き合ってやる」
味方っぽいからいいんだけど、やっぱコイツ怖ェ・・・。
* ひとやすみ *
・ブラコン兄ちゃん子鮫に喰らい付かれる。笑
面白いくらい自分でいっぱいいっぱいな主人公に、私もいっぱいいっぱい。。
やっぱスクアーロには不敵な顔が一番似合いますよね! (09/06/09)