ドリーム小説

9歳、ディーノ6歳。

俺、辛うじてまだ生きてます。

ただし毎日が綱渡り。

落ちたらワイヤレスバンジーでさようならって感じだ。

新手のイジメなのかビビリでヘタレな俺を教育係達は「の貴公子」などと呼んでくる。

意味など聞いてみたことはないけど、そのままの意味なら恥ずかしさで死ねる。

ア○マゲドンもビックリな破壊力だ。


この数年で変わった事と言えば、俺とディーノが学校に通うことになった。

父さんの薦めでとんでもなく警備が厳しく、非常識な金持ち学校に入れられた。

未だに金持ちの待遇に慣れないのだが、そこは上流学校だからかカリキュラムもおかしかった。

剣術、体術、銃術、精神理論、毒薬学、暗殺学など聞きなれない授業の割合の方が高い。

物騒な名前の授業にビクビクだったが、受けてみると意外と面白かった。

と言っても、こんな意味不明の授業に需要があるのかどうか怪しい所だが。

金持ちの趣味はわかんねーなぁ。


俺は読みかけの日本語の小説をパタンと閉じて深く溜め息を吐いた。

特殊防弾ガラスの向こうに見える空は清々しいばかりの快晴。

うん。今日はいい日になりそうだ。




「あ、あの様!昼食の時間です!」




一気に気分は急降下。

これだよ、これ。

俺みたいなチキンで何も出来ない奴なんか敬語で仲間外れの刑って事みたいなんですよ・・・。

そりゃ殴られたりするのは嫌だけど、庶民的な俺にはジワジワと効く悪どい嫌がらせだ。

クラスメイトにまで敬語を使われ、あまつさえ誰も近寄ってこない。

訓練もビビリだからへっぴり腰で格好悪いし、テストの成績だって掲示板に載らないくらい最悪だから

仕方ないのかもしれないけど、この扱いにはさすがに参った。

こんな風に毎日違う奴が声を掛けてくるけど、何かの罰ゲームでやらされてるんだよ、きっと。


学校一の出来損ないにVIP待遇をしなきゃいけないコイツ等も可哀想だが、俺の方がもっと悲惨。

だって、俺、友達ゼロ・・・。

自分で言ってて悲しくなったから、促されるままに立ち上がるとクラスが割れた。




「・・・・・・。」




ここまで嫌われるなんて俺、相当ヒドイ事したんだと思う。

クラスの端の方で目を潤ませ、目が合うと悲鳴を上げて逃げる女の子に泣きそうになりながらクラスを出た。

廊下に出ても同じような反応で対応に困って目を逸らす。

それを何度か繰り返してカフェテラスに着くと、聞き慣れた明るい声が耳を打った。




「兄さん!」

「・・・ッ、ディーノ」




ぐっ。・・・我が弟ながらナイスタックルだ。

一瞬、天国の扉が見えた気もしないでないが、ちっぽけな兄のプライドから無様には倒れたりはしないぞ。

振り向いた先に見えたのは満面の笑みの天使様。

うわ。兄ちゃんには眩しすぎる。


そこらの女の子なんか目じゃないくらいにディーノは可愛く育ってしまった。

そしてやっぱり、あのリボーンのディーノの面影がある。

でもまぁ、この俺を慕ってくれる可愛い弟だから、もうそんな事知ったこっちゃねえが。

この氷点下ブリザードの中でお前だけが心のオアシスだ。


俺にくっ付いて撫でてと言わんばかりの表情に、思わず顔が緩む。

だってめっちゃ子犬みたいに見える。

思わず手を伸ばして髪をくしゃくしゃと撫でると蕩けんばかりの笑顔を返された。

何 だ 、こ の 生 き 物 は !

それを他に見ていた奴らがいたのだろう、カフェテラスは嬉々としたざわめきに包まれた。

そうだろう、そうだろう。可愛いよなー。でもやらんぞー。




「・・・兄さん、そんな顔するのは俺の前だけにしといて」




え?何、俺、そんな犯罪的な顔してたの??

ディーノの拗ねたような顔に俺は何とも言えない気持ちで言葉を濁した。






***






目の前でディーノが食事をしながら今日あった事を話している。

俺はと言うと、同じくテラスでパニーノをペロリと食べ上げ、コーヒー片手に話に耳を傾けていた。

チビになっても嗜好はそう簡単には変わらないらしい。コーヒー美味い。

友達の犬の躾がどうだとか、先生のズボンのファスナーが開いていたとか、ディーノが楽しそうに言葉を紡ぐ。




「また俺ばっかり喋ってる・・・。兄さんは?」




ハッとしたように食事の手を止めたディーノにどうしようかと頭を悩ませる。

別に弟の話を聞くのは楽しいし、何より楽しそうに笑うディーノが見れるので気にしてなんかいなかったのだが。

大体、俺、友達いないから話すようなこと何もないし・・・。

自身本日二度目の友達いない発言に沈没。




「いつもと同じだよ」

「・・・そ、う、」




悩んだ挙句、正直に答えたんだけど、俺、何か間違った?

どこか浮かない顔のディーノが心配になって声を掛けようとしたら遮られた。




「・・・兄さんはさ、何で俺なんかを側に置いてくれるの?」




え?何でさっきの答えでこの流れ?

しかもどこか真剣みの溢れるディーノの声音に真面目に答えないとマズイ雰囲気。

てか答えも何も、何でそんな今更な事を聞くんだ?




「大事な弟だからに決まってるだろ?」

「・・・弟、だからかぁ」

「??」




俯いてしまったディーノに一気にテラスが暗くなったように思えた。

お、俺のせいなのか?

途端に周囲の目が怖く感じられて、これから先、返答次第では大変な事になりそうな予感だ。

再び口を開いたディーノの話に俺は真剣に耳を傾けた。



* ひとやすみ *
  ・相変わらず何だか可哀想な脳の持ち主。笑
 ディーノさんの小さい頃ってきっとめちゃくちゃ可愛い。うん絶対。
 いや、主人公も可愛い、いや、カッコいいんですよ・・・・?       (09/06/06)