ドリーム小説



「母さん!そんな格好で出てきたら身体を冷やすよ」

「あらあら、あなたのお兄様は心配性ね?」

「早く母さんのお腹から出てこないとお前の命が危ないぞ?」




どうもです。

あー、何から話せばよいのやら・・・。

一言で言うなら輪廻転生ってやつらしい。

あの危険な浅田家だ。おそらく家庭内ストレスによる過労死とかなんじゃないだろうか。

まだ若かったのに不憫、俺。

てな事ですっぽりまるっと納得した俺は、目の前でクスクス笑ってる優しくてどこか抜けた金髪美女を母さん、

この屋敷の主人を父さんとして人生をやり直すことになった。

本当の父さん、母さんってのはこうも素敵なもんなんだなー。

・・・両親は前もいたけど、まぁ都合良く忘れる事にする。

今またお腹に新しい命を詰め込んでる母さんは、フラフラと屋敷をうろついては俺達に心配させる。

と言っても、俺が生まれてからこの三年、俺も母さんもこの屋敷から出たことがない。

ここはイタリアで父さんが何の仕事してるかなんて知らないけど、

マフィアに狙われてるらしく通い妻よろしく通い父状態なのだ。

一体どんな恐ろしい仕事してるんですか、父さーん!!

マフィアなんてとんでもない人種と関わりたくないので、日々大人しく成長を続けていたのですが、

調子に乗りすぎて神童とか言われて持てはやされてます。

いや、だって、ハイハイしたら父さん泣いて喜ぶし、何か喋ったら母さんが笑うし。

おかげで異常なまでにハイスピード成長を見せて屋敷中をびっくりさせた俺は馬鹿だ。

異端児街道まっしぐらの俺は身重な母さんの手を引いて部屋に戻った。

三歳児に世話を焼かれる母親ってどうなんだ?

眉間に皺が寄るのを感じていると、廊下の先からドタンドタンと何かが走ってくる音がした。




〜!!」

「父さん?!」

「やっぱり嫌だ!はまだ三歳なのにっ」

「な、何・・・?!」




く、苦しい。

ギュウギュウと締め付けるように抱き締める父さんは俺を昇天させる気なんじゃないだろうか。

そんなことより父さんの言葉が気になる。

嫌な予感というのは当たるものだけど、一つ確実に言える事はこのままじゃ俺、窒 息 死 !!

意識が遠のき始めた頃、不意に助けが入った。

もっとも、それが本当に助けだったのかどうかは分からないが。




「貴方にはする事が残っています。・・・連れて行け」

「待て!やはりにはまだっ・・・」

「父さん?!」




父さんがベリッと引き離された時、目に飛び込んだのは黒、黒、黒。

同じような黒スーツに黒い革靴、黒いサングラスに胸元にチラリと見える黒いピストル。

まさかマフィア?!

そう思った時にはすでに父さんは黒スーツに連行される所だった。

いつの間にか屋敷の中にはマフィアだらけで、子供の俺は全然状況が飲み込めない。

呆気なく崩れ落ちた日常に恐々と震えていると、ふわふわとした何かが俺を包み込んで、

それが母さんの髪だと気付いた時、黒スーツが目の前に立っていた。




様、ボスの命令ですのでご同行願います」

「・・・なんで」

「でしたら奥様にもご同行していただきましょうか?」




お、お、おっかねえよ、コイツ・・・!

現状把握のため恐々質問してみて分かったけど、コイツ、母さんまで人質にする気だ。

いくら俺が怖がりでも、いつ赤ん坊がスポンと産まれるか分かんない母さんを危険に晒すなんて出来る訳ねーだろ。

俺は小さく首を振って母さんを引き離した。

もう帰って来れないかもしれないけど、元気でね、母さん。




「いってきます、母さん」

っ・・。お父様のために頑張ってね」

「時間です」




くそう!感動の場面を邪魔しやがって膝カックンすんぞ?!

嘘です。そんな事怖すぎて出来ません。

心の内でもダメダメな俺に溜め息を吐いて、黒塗りの車に乗せられ初めて屋敷の外へ出た。

一体どうなるんだよ、俺ー!!







***






着いた先はとんでもなくデカイ屋敷でした。

ウチの屋敷もデカかったけど、比なんてもんじゃない。

小洒落たギリシャ風屋敷の庭を突っ切って父さんが連れて行かれたという屋敷を目指す。

左右に黒スーツがズラーって並んで俺を出迎えてくれたけど、怖くて目が合わせられない。

とりあえず正面だけを無心で見つめて歩く事にした。

前なら誰とも目が合わないからな!

隣を歩く二十歳くらいの若い兄ちゃんもやっぱマフィアなんだろうか。

ジーっと見上げていると不機嫌そうな顔をこちらに向けた。

あれ、この人どこかで見たことないっけ・・・?




「父さんは大丈夫だろうか」

「・・・どうでしょう。ウチのボスは気まぐれですからね」




思わず口をついた言葉に返事が帰ってきたのが意外だった。

少しだけ怖いのが緩和されたが、やっぱ俺達の行く末に不安が残る。

連れて来られた部屋は何にもない広い部屋だった。

てかこんな所に三歳児連れて来て何する気だっての。




「これからこの部屋にて様々な試験を受けてもらいます」




気まぐれにも程があるだろーよ、ボスさんよぉ!!

意味不明なこの展開にハテナばかりが頭に浮かぶ。

全く、どうなってんだ、コンチクショー!



* ひとやすみ *
・流されるままの主人公。
 出来る限り穏便に過ごしたいだけなのに巻き込まれ体質なのが痛い。
 いろいろと察しておられるでしょうが、種明かしまでお付き合い下さい!(09/05/30)