ドリーム小説

師匠には救世主がいる。

そんな話をミーは師匠と出会った当初から耳にタコが出来るくらい聞かされてきましたー。

基本他人を信用しない犬っころニーサンと、無愛想柿ピーニーサンまでもその救世主サンを慕っているようだった。

クロームネーサン曰く、「様は眩しい光で、私達の道しるべなの」だそう。

はっきり言ってミーには全く理解出来ない話でしたが、師匠達が慕う・雲雀に興味を持ちました。

まぁその救世主サンがとんでもない影響力を持ってる人だと知ったのは、ミーがヴァリアーに入ってからで。

雲雀はいつもフラフラとしていて、その立場はいつも曖昧。

ミーからすれば頭がおかしいんじゃないかと思うくらいやることが突飛な人物でした。

まぁ天才の考えることですから、ミーに理解出来なくて当然なのでしょうが、

とにかくボスや師匠の神経を逆撫でするのが上手い人だったのです。

いろいろ八つ当たりされるミーの気持ちにもなって欲しいものですー。

噂を聞くばかりで本人に会ったことがないミーは、迷惑千万な救世主だという印象しか持ち合わせていませんでした。




「おやおやこんな時に気を失うなんて困った娘ですね・・・そう思いませんか、?」

「お前、分かっててやってるだろ。性格悪いな」




師匠の性格が極悪だと当たり前な話を雲雀が目の前でしている。

おー、この人があのですかー。

跳ね馬の実の兄ということですが、年齢を感じさせない恐ろしく整った顔をしていますー。

髪はウチの隊長よりも薄く柔らかそうな銀色に、瞳は気品さえ漂う黄金色。

ミルフィオーレの白い隊服が恐ろしく似合っていて、天界に住んでますと言われても信じられますー。

・・・というより、地獄よりの使者である師匠とこのキンキラの白い人との組み合わせが有り得なさすぎて困ります。

攻撃を受けても当然のように避けない師匠を庇うように匣で逸らす。

こうしないと師匠怒るから別にいいんですけどー、何かこれスゴイ炎吸われますー。

ボンゴレリングを使って敵の正体を暴こうとしている師匠に、雲雀が低い声で言った。




「手を出すなよ、骸」




彼のその一言で一気に場の空気が張り詰めて思わず息を呑みました。

その金の瞳が自分の獲物に手を出す奴は許さないと語っていた。

今まで師匠と暢気に喋っていたから気を抜いていたけど、思い出しました。

この人はあの・雲雀でした。

漂う殺気に肌を粟立たせていると、師匠も神妙な顔をしながら頷いていた。




「・・・なら仕方ありませんね。あれはに任せます」




うーわー!師匠が美味しいトコロを譲ったー!!

それだけこの人が強く、信用に足る人物なのだと実感します。

一体、この人はどれくらい強いのだろう?

探るように視線を向ければ、サンは何でもないような顔で攻略法を思い付き、淡々と開匣した。

すると現れたのは鶏に似た大きな鳥でした。

どうやら彼の匣兵器のようですが、何だかミーには鶏冠が面白い色に視えました。

サンが鳥に薄く笑いながらすまないと謝ると、鳥は気にするなと言わんばかりに甲高く鳴いて一方向に走り出した。

そのスピードは速く、走るというより滑るといった感じで、彼の相棒に相応しい麗しさを兼ね備えていた。

師匠がクロームネーサンを安全な場所に連れて行った時になってようやく我に返ったけれど、

炎を吸われて足元がおぼつきません。

フラフラしてる所をサンがさりげなく支えてくれて何とか歩けた。

カッコいい上に紳士とか、もー師匠完全に負けてますー。ミー、師匠にするならこの人がいいー。

ボロボロのボスと仲良さ気に話すサンを見送りながら、ミーはベルセンパイの隣に立つ。




「ベルセンパイ、満身創痍なくせに残念ながら生き残っててミーは嬉しいですー」

「うっせ!おまえこそヘロヘロなんだから死んどけよ」

「まだまだ幻術使えるくらいにはミーは元気ですよー」

「は、何?今度は何小細工してるわけ?」

「今、ミーは鳥サンを追い掛けてますー」

「?」




馬鹿なベルセンパイは分からなくてもいいのですが、ミーは今、幻術を使ってサンの鳥を追跡していました。

霧を使って覗き見ることは条件さえ揃えば難しくないのです。

あのサンが何のためにあの鳥サンを呼び出したのか、気になるじゃないですか。

ゴーストの動きを静観しながら意識をそちらに向けていたのですが、鳥サンは何とすぐ近くにいたのです。

目立ちたがりの師匠やボス、キンキラのさんに隠れて気付いていない人が多いですが、

実はここにはたくさんの人がいてその多くがゴーストの餌と化している。

あー、まー、ミーも炎を吸われてる餌の一人なんですが。


その中にあの師匠の嫌いな雲雀恭弥もいて、まぁ何で嫌いかは察して下さいー。

ミーも全然気付いてなかったですが、雲雀恭弥は思った以上に消耗していて立っているのがやっとという感じだった。

疑問に思ったのは一瞬で、彼の制御なしの炎の出力を思えばあれだけ疲弊していても不思議じゃありませんねー。


彼のそんな様子に手を抜くことなく、ゴーストの魔の手が伸びる。

疲れから来る一瞬の隙に雲雀恭弥の目前に光が迫っていた。

あっと思った瞬間に雲雀恭弥は仰向けに倒れ込んでいて、何が起きたのですかねー。

光線は障害物に当たることなく通りすぎ、雲雀恭弥も倒れてはいるものの無傷でした。

そしてどうやらその危機を救ったのがあの鳥サン。

彼の足元を救い上げるように背後からぶつかって助けたようです。




『キーン・・・?』




地面に転がって茫然と呟いた彼に鳥サンは世話が焼けるとばかりに息を吐いて、

嘴を彼の首根っこに突っ込むと一気に持ち上げた。

猫の子のようにぶら下がる雲雀恭弥を気にすることもなく、鳥サンは大きな翼を広げて低空飛行を始めた。

鳥サンは飛び上がる際に彼をポイッと空に投げて足で掴み直すと、

彼を引き摺っていることも気にせずにこちらに向かって飛んできていた。

あー、なるほどですー。サンは弟である彼がこうなることを予測して鳥サンを向かわせたのかー。




「納得ですー」

「は?お前さっきから何一人で喋ってんの?バカなの?」




何にも分かってないベル先輩は放っといて、目の前で大量の六属性の指輪に一気に炎を灯したサン。

それに危機を覚えたかのように発光し始めたゴーストに、周囲が騒ぎ出す。




「何だあの炎は?!」

「あのカス、まだ隠してやがったか」

兄さんの指輪、属性がバラバラじゃねーか!」

「あんないろんな色の混ざった高密度な炎初めて見ましたー」




何だかその言葉を聞くだけで、周りがどれだけこの人に振り回されてるか分かりますー。

あー、でも何かあんなに高密度で不思議な色なのに、すごくキレイですごく落ち着きますー。




「・・・来ますよー」




次の瞬間、甲高い鳴き声が周囲に響き、鳥サン改めフェニックスが舞い降りた。

何だか分かった気がします。

師匠やいろんな人達がなぜあんなにも・雲雀に執着するのかが。

その中の一人になるような予感を感じながら、ミーは悠然とゴーストの炎を食い散らかすフェニックスを眺めていた。


* ひとやすみ *
・はい。久しぶりに感じましたね、兄様別人疑惑!他人の目を通すとおかしなことになります!笑
 キーンさんの本心はどうなのか想像にお任せしますが、兄様のキーン像よりも数倍カッコいいです!
 孤高の鶏かぁ。何かいいよね!笑。 他人目線で前の話を見ると神秘の炎より現れし不死鳥になる。
 兄様は主の炎に焼かれて自爆した鶏と思ってますが。この温度差がヒーローの楽しいところ!笑               (13/10/25)