ドリーム小説

信じらんねぇ。

弟達には敵だと思われ、なぜか術士には期待を寄せられ、相棒のキーンには裏切られ、もう俺、誰を信じりゃいいの?

骸は気絶したクロームを安全な場所に移しに行き、光を逸らす壁になっていたフランは役目を終えたとばかりに

身体を逸らして直線上から外れた。

息を切らせてフラついてるフランの背を支えて、俺は白蘭と瓜二つの雷男がいる前線へと向かった。




か・・・」

「苦戦してるようだな、ザンザス」

「ハッ、苦戦?どこが?」




そんな険しい顔してんのに、相変わらずだなコイツ。

俺はヘロってるフランをベルに押しつけて、ザンザスの隣に並ぶ。

見てた限り、あの雷男はザンザスの炎も吸い上げてたな。

だけど、やっぱりアイツの炎の出力は変わってねぇし、炎を貯めてる感じもない。




、てめぇそっち側にいるんだろーが。何か知らねぇのか」

「あの馬鹿が考えてることなんか知るか。あんな悍ましいものを見たのも初めてだ」

「それでも何とかあの巨人を止めねーとな!!」




背後から声がして、現れたのは怪我をしてボロボロのディーノとスクアーロだった。

この二人は10年前のボンゴレの守護者のお守をしてたからな、大人代表として多分相当頑張ったんだろう。

ディーノに肩を借りて歩くスクアーロにザンザスが、遅いと理不尽を言う。

何だかいろいろ言いたそうだったが、スクアーロは呑み込んで渋々謝っている。

あー、何だかヴァリアー組は言いたい放題言ってるが、遅いってのは待ってたってことだからな。

俺はディーノとスクアーロの頭をガシガシと撫でて、雷男を見る。




「俺の勘だが、アイツは扉だ」

「扉?」




俺の言葉にその場にいた奴らは声を揃えて聞き返した。

あの幽霊はここにいるけどいないんだ。

おまけに吸い上げた炎までそこにないとなると、アイツは炎を転送するための扉で本体は別にある。

集めた炎を本体が持ってるなら、早くあれを何とかしないとヤバい気がする。

どうしよう、炎を本体が吸い上げてこの世にオバケが蔓延したら・・・!!

青褪めた俺はポケットからありったけの指輪を出した。




「何事にも限界値ってものがある」

「・・・ゔぉぉい!その指輪、何してんだ、!!」




最後の指輪を填めた俺は困惑しているスクアーロに一瞬視線を向けた。

確かに見た目気持ち悪いが、しゃーないじゃん。

どうも俺、炎の容量だけは多いようで、Bランクくらいの指輪の一個や二個じゃ全然足りねーんだわ。

俺は大空以外の属性指輪を十個左手に填め込んでいた。

アイツの本体は多分アイツの所にいる。

だからこそ嫌な予感しかしない。

あの雷男は掃除機で例えるならノズル部分で、タンクに届かないようにするには詰まらせるか、吸引力を弱めるしかない。

だがアイツには長いパイプがある訳じゃなく、こっちがどうにか出来るのはあの雷男そのものだけだ。

なら、アイツの向こうにいるタンクに届く前に詰まらせるしかないだろ。

限界値まで炎くれてやる。

俺の炎と雷男の吸引力の勝負だ!

俺は全ての指輪に炎を灯して走り出した。

俺の炎の出力に反応したのか、雷男の電撃が激しくなり眩しい光を放ち始めた。




「何だあの炎は?!」

「あのカス、まだ隠してやがったか」

兄さんの指輪、属性がバラバラじゃねーか!」

「あんないろんな色の混ざった高密度な炎初めて見ましたー」




何か外野がいろいろ言ってるが、知ーらない。

ハッキリ言って一か八かの賭けだしな、これ。

一気にアイツ抑え込めなきゃ、俺の最大炎を吸われて終わり。

だけど、アイツを破壊するほどの炎をぶち込めれば、炎を吸い上げられる前に何とか出来る。




「キュアァァァゥ!」




その時、甲高い独特な鳴き声が聞こえ、俺は振り返ってギョッとした。

木々の向こうから低空飛行してる白い鳥は、間違いなくキーンだ。

しかし、お前、その足に掴んでるのは、もしかしなくても俺の弟ではないでしょうか・・・?

何でお前、恭弥引き摺って飛んでんの?!

あ、こら、しかもポイ捨てすんな!

キーンはディーノの後ろに掴んでいた恭弥を放り投げると、そのまま俺の炎まみれの左腕に止まった。

その瞬間、キーンが俺の炎に包みこまれて一気に燃え上がった。




「キーン!!」

「キュォォォン!!」




火達磨になりながら空へと飛び上がったキーンは、苦しんでいるように見えて焦った。

そんな自滅の仕方ってある?!

もがく様に俺の頭上を旋回してる炎の塊は不規則に炎を吐いている。

あまりの状況に茫然としてるのは俺だけじゃないようで、皆の視線がキーンの奇行に向けられていた。

収縮を繰り返す炎は突如としてピタリと動きを止めて、次の瞬間燃え広がってキーンは宙に消えた。

灰も残らず消え去り、あんぐりと口を開けていると、再び宙に俺の何色か分からない色の炎が灯った。




「何が、起きている・・・?」




骸の呟きに答える言葉を俺は知らない。

宙に灯った炎から何と鳥の足が生え、尾が生え、胸が生え、翼が生え、頭が生えた。

炎から生まれたその巨大な鳥は、まるで炎で出来ているように不思議な色を揺らめかせている。

え、何、この巨大なカッコいい鳥は・・・。

つーか、キーンどこ行ったの?




「キーンの形態変化・・・」




恭弥の呟きに俺はギョッとした。

マジで?!あれキーンなの?!

嘘でしょ?!鶏って大人になったらああなるの?!




「キーン?」

「キュォォォォンン」




嘶いて返事をするように俺の頭上を旋回したキーンは、滑るように雷男の方へと羽ばたいた。

近付くにつれて炎を大きくし、速さを増したキーンは一気に雷男に突っ込んだ!

うえぇぇ?!ちょっと待って!

ゴーストすげー勢いでキーンの炎に包まれて爆発炎上してるけど?!

どうやら吸い上げる力よりもキーンは大きい出力で燃やし尽くしているらしい。

雷を抑え込んで熱を撒き散らして爆発した直後、燃え広がっていた炎の一部がキーンの形に戻り、

炎を撒き散らしながら何食わぬ顔で相棒は俺の元へと帰って来た。

え?

えぇ?!




「フェニックス・・・」

「今のは、ゴーストを劫火で焼いて、逆に炎を食ったのか・・・?」

「あんな匣兵器、反則じゃね?」

「反則というか、あの極悪燃費の匣を使える師匠の救世主のが反則だと思いますー」

「有りかぁ゙、アレは?!」

「・・・兄さんだしなぁ」

「・・・兄さんだからね」




え、俺のせいなの?!

理不尽にもなぜか俺を責める視線が多く向けられ、納得がいかない。

雷男はプスプスと黒い煙を放って今は停止しているが、どうやら倒したわけではないようだ。

俺の肩に止まっているフェニックス・キーンは、嘴を開けてケホリとゲップするかのように小さく炎を吐いた。

そして疲れたと言わんばかりにクワリと口を開けた後、肩から飛び降り着地する瞬間には再び鶏・キーンに戻っていた。

えーと、とりあえず、俺の戦闘シーン、どこ行った・・・?


* ひとやすみ *
・キーン様無双!形態変化でまさかの不死鳥!皆様の想像力でイケ鶏を補って下さいませ!笑
 兄様相棒に美味しいトコ持ってかれる。形無しにもほどがある。ゴーストの例えが
 掃除機なところが兄様らしい。ダイ○ンもビックリな吸引力!そして相棒の行動に
 兄様ポッカーーーーン。ちょっと内心を思って笑ってしまった。                 (13/10/25)