ドリーム小説

俺の父親を名乗った雲雀という人は変な人だった。

基本、話さないし、何もしない。

物静かな分、何を考えているのか全く分からなくて怖かった。

一度、あの人の所へ帰るかと聞かれたけど、そんなこと出来るわけがなかった。

雲雀命なあの人にそんなことを言えばどうなるか分からないし、

捨てられた俺が戻った所でどうにもならないだろう。

そして俺達は今、どこかに向かって列車で旅をしていた。

その途中、何度もガラの悪いやつらに絡まれては、この人はブチのめしていた。




「次の街で降りて仕事を探すぞ」




そう言われてとりあえず頷く。

きっとこの仕事で俺は何か碌でもないことをさせられるんだ。

案の定、ホテルに着いた後、どこかへ出掛けていたこの人は帰ってきて早々に仕事だと言った。

分かってはいたけど、怖いものは怖い。

お守り代わりに手に入れた拳銃を胸に頷いた。





俺のようなチビを連れているとか普通有り得ないもんな。

どうやら依頼主と子連れの件でもめていたようだけど、気付けば要望は全て通っていた。

さすがというか何というか、やっぱ怖いよこの人。

何の仕事なのかよく分からなかったけど、案内役と一緒に移動を続けて指定された建物に入ろうとすると止められた。




「ジュニア、待て」




一人で急に立ち止った雲雀に俺も思わず止まると、何だか怖い顔で周囲を見渡していた。

その瞬間、何かゾクリとする感覚が広がって身体を震わせると、なぜか担ぎ上げられて逆方向に走り出した。

あまりに全速力で建物から離れるので目を丸くしていると、凄い爆音と熱風が拡散して建物が吹っ飛んだ。

爆発?!

ドォォォンと地を揺らす音と同時に頭を押え込まれ、雲雀に抱えられたまま一緒に飛ばされた。

地面に落下する衝撃で呻いたけど、俺はこの人の胸に抱え込まれていたので大きな怪我はなかった。

庇われたと気付いて顔を見上げると、その綺麗な顔に小さな傷がいくつも出来ていてハッとした。

目が合ったその人は凶悪な顔をして俺を見た。




「ジュニア。悪い、怪我させた」

「え?こんなのケガとは言えないけど・・・」




何を言われたのか一瞬分からなかった。

痛みには慣れた方がいいと手当てなんてほとんどされなかった今までを思うと、こんなの怪我ですらないのに。

むしろ怪我してるのはアンタの方じゃん・・・。

呆然とする俺からすぐに視線を外してどこかを見つめてたこの人から遅れて俺は誰かが近付いて来ているのに気付いた。

ハッとして胸に隠していた拳銃を取り出す。

これは訓練じゃない。やらなきゃやられる・・・!

とっさに構えた銃口を上から手が伸びてきて下げられた。

驚いている俺を放って雲雀は小さく息を吐いて敵を見ながら言う。




「俺がお前を育てると言ったんだ。幼い子供を危険に晒す気は微塵もない。大人しく守られてろ」




息が止まったかと思った。

・・・何で?

俺を引き取ったのは戦わせるためじゃないの?

俺と同じ金の瞳と目が合うと目を細めて俺を見た。

その目があんまり優しかったので、思わず聞いていた。




「・・・俺、戦わないと、いけないんじゃないの?」




恐る恐る溢した言葉にこの人は俺の頭をサラリと撫でて拳銃を手から抜き取った。

そしてフと小さく笑って敵を見据えて表情を消した。




「お前は戦わなくていいんだ。いいから全部父さんに任せておけ」




その言葉に息を呑んだ。

この人は本当に俺の父親になるつもりなんだ・・・。

瓦礫の陰に隠されて拳銃を片手に敵に向かうその人は俺の父親らしい。

めちゃくちゃカッコいいその人はもの凄い殺気を振りまいて敵を倒しまくった。




「・・・すごい。めっちゃ強い」




思わずそう呟きたくなるほど、雲雀は強かった。

その時、初めてあの人が人類最強だと言い続けたわけが分かった。

俺の声が聞こえたのか振り返ったその人は小さく笑った。




「あぁ、俺は強い。だからお前が戦う必要はないな」

「・・・ホントに?俺、戦わなくていいの?」

「子供は守られるのが仕事だ」




今までそんなことを言ってくれた人はいなかった。

俺を守ってくれる、本当に?

物凄く強いこの人は俺の父親で、俺を見つめる目は蜂蜜のようにトロリと優しい色をしていた。

本当にこの人は俺を助けてくれるらしい。

そう覚った瞬間、込み上げてくる何かを堪え切れなかった。

止め処なく涙が零れて声を漏らして泣いていると大きな手が俺をすくい上げてその胸に抱き込んだ。




「よく頑張ったな」

「うぁ、ひっく、ず、父さぁん、おれ、おれぇ・・・!」

「あぁ」




恥かしげもなく大声で泣く俺の背中を父さんが優しく叩くからまた泣けてくる。

俺は人の温もりに飢えていたのだ。

こうして縋り付く腕があることに安心して今までの不安を吐き出すように泣き続けた。


* ひとやすみ *
・残暑見舞い申し上げます!まだまだ暑いので体調管理にはお気を付けを。
 息子視点でした。何かいろいろ苦労しました、息子に喋らせるの難しすぎて。笑
 知らない怖そうな男の人がようやく身近な保護者に変わってきたようです。
 私も難しいのでそろそろ回避したいのですが、もう少し息子の独白続きます。笑
 ぼちぼち頑張るのでよろしければまた遊びに来てやって下さいませ!               (18/09/02)