ドリーム小説

思ったことを自由に発言できるのは思った以上に幸せなことだと知った。

父さんは飄々とした表情をしている割にすごく優しかった。

何を言っても怒らないし、本当に俺を戦わせたり、怖い目に合わせることはなかった。

いろんな話をする中で父さんと一緒に行くことを嫌がった理由を聞かれたので、

素直にもっと戦わされると思ったからだと答えると父さんは黙り込んでいた。




「並盛について何か知っていたのか?」




この質問には少しドキリとした。

まさか原作の中心舞台だからなんて言えるはずもなく、

何も知らないと答えると父さんはチラリと俺を見てからすぐに視線を逸らした。

迫り来る敵を撃ち倒すと俺を足元に座らせて隠す。




「きちんと隠れてろ」

「・・・父さんは戦うのが怖くないの?」

「馬鹿言え。怖いに決まってるだろ」

「えー?」




涼しそうな顔で淡々と敵を減らしながらそう答えていたけど、全くそうは見えない。

本当に父さんも怖いのだろうか?

弾詰まりしたらしい古い型の拳銃を鈍器として投げ付ける父さんを見て首を傾げる。




「怖いのにじゃあどうして戦うの?」




俺なら怖ければ逃げたいし、戦いたくない。

それなのにどうして父さんは平然な顔して戦えるのだろうか?

気になって父さんを見上げれば敵をぶん投げて小さく笑った。




「守りたいものがあるからに決まってるだろ」




真っ直ぐ俺を見て当たり前のようにそう言った父さんに思わず息を呑んだ。

怖くても戦う理由は守りたいものを守るためって、そこに俺も入ってる・・・?

普通な顔をしてそう言いきった父さんを見ていると、正解だと言わんばかりに頭をポンポンと叩かれた。

・・・変な人。

人類最強で世界一強いマフィアのくせに何でこんなに優しいんだろう?

初めて会ったあの日、父さんと呼んでくれと言ったあの言葉が甦る。

俺の父さんは本当に凄い人だ!

何とも言えないくすぐったさを抱えて悶えていると、思い出したように父さんが言った。




「勘違いしてるから正しておくが、俺はマフィアではなくごく普通の善良な並盛市民の一人だ」




え・・・?

何言ってるんだろう?

これだけ完璧に敵を倒して激強アピールしておいて、普通の市民はない。絶対ない。

まぁ、マフィア云々を隠しておきたいみたいだし、嘘でも何でもいいか。




「あのさ、おれ、まだ戦いとかよく分かんないしイヤだけど、父さんみたいになりたいとは思うよ」




俺を辛くてしんどい闇から救い出してくれた父さんを心底尊敬している。

父さんが例え極悪なマフィアだったのだとしても、奪うためでなく守るために戦うと言った言葉を信じたい。

そう思って強くて美しい父さんを見上げていると、父さんは少し困った顔でそうかと呟いて俺を抱き上げた。

うん。俺も頑張ろう。









***








それから父さんに戦い方を教えて欲しいと伝えたのはすぐの事だった。

父さんは何も言わなかったけど、ただ生半可な覚悟ではダメだと静かに言った。

守るための戦いとは口で言うのは簡単だけど、結局必要なのはその場を制圧する強さだ。

どんな場面でもその場にいる誰よりも強くなければ、人の生死に関われる奴にはなれない。

それが簡単なことではないことは分かってる。

だけど、俺は思ってしまったんだ。

父さんみたいになりたいって。

それから父さんは強くなろうと言って、戦いながら俺に技の良し悪しを教えてくれるようになった。

だからその日も俺は父さんに対応の仕方を聞いたんだ。




「紛争地帯に来たらどうしたらいいの?」




とりあえず無駄な争いは避けるべきだと迂回路を探すことになったのだけど、戦場にとんでもない奴がいた。

黒い隊服の部隊を引き連れて国境線で一際目立つ暴れ方をしている長髪の男。




「ゔおぉおい!もっと歯ごたえのある奴いねぇのかぁ?!」

「十年後スクアーロ・・・?!それって・・・」




あの黒い集団はヴァリアーで、原作の中で出てきた十年後のスクアーロにそっくり。

それってつまり、今は原作の十年後ってことじゃないのか?!

えぇー・・・。生れて5年目にして初めて時間軸を知ったよ。

というか、十年後って俺の原作知識ほとんど意味ないじゃん。

まぁ俺なんかが無双出来るとは思ってなかったけどさ。




「誰だぁ?!そこに隠れていやがるのは?!」




すると、振り返ったスクアーロから強烈な殺気が撒かれた。

あまりに鋭い殺気にビクリと身体が跳ねて固まった。

あ、これ絶対ヤバい・・・!

身体を震わせて歯がガチガチと音を立てる。

パキュンと甲高い音を立てた瞬間に、身体が暖かい腕に囲まれて引かれた。

今いた場所を銃弾が通りすぎ、俺はその腕の暖かさにようやく父さんが傍にいたことを思い出した。




「ジュニア、俺が囮になる。一度街に戻れ。昨日泊まったホテルで落ち合おう」




冷静な父さんは俺を諭すようにそう言ったけど、正直父さんとスクアーロどっちが強いのかなんて俺には分からない。

スクアーロは原作キャラで弱いはずもなく、だからこそ父さんが心配だった。

でも、どっちにしろ俺は二人より弱いし、ここにいても足手纏いにしかならない。

俺はただ頷いて父さんに背を向けて元来た道をひたすら走って逃げた。

昨晩泊まったのもあってホテルに戻るのは簡単だった。

ホテルの手続きは全部ネットで出来たし、俺の顔を覚えてたスタッフが丁寧に対応してくれた。

ロビーで父さんを待っていると、無傷の父さんが帰って来た。

ホッとして部屋に案内すると、父さんがおもむろに口を開いた。




「ジュニア、お前は一体誰だ・・・?」




その瞬間、世界は色を失った。


* ひとやすみ *
・ご無沙汰してます。台風ずっと日本上陸してましたが皆様無事でしたでしょうか?
 何だか可笑しげな天気が続きますが、体調管理にはお気を付け下さいませ!
 さて、息子視点難しいねぇ。毎度悩みに悩んで書いてますが、
 楽しんでると感想をいくつかいただいて元気貰ってます!頑張ります!
 もうちょっとで兄様視点に戻るので何卒よろしく願います!               (18/10/08)