ドリーム小説

無邪気に笑っていたジュニアは俺の一言を聞くや否や表情を失った。

顔面蒼白とはこのことを言うのだろうなと思うほどに顔は白くなり、はくはくと唇を震わせている。

別に子どもを苛めたいわけじゃないけど、これはいずれ聞かなければならない質問だったと思う。

ジュニアは5歳児にしては聡明すぎた。

そして何より時折見せる原作知識と考え方が俺に似すぎていた。

これはきっとディーノの兄として転生した俺でなければ分からなかったに違いない。

だからこそ確認しておきたかったのだ。




「言い直す。お前の中身は何だ?」




ジュニアはおそらく俺と同じ転生者、もしくは神の一派だ。

原作としてのリボーンを知ってる人間であるならば、今までの言動も辻褄が合う。

俺はただ曖昧な現状を何とかしたくてそう聞いたのだが、ふとジュニアを見ると死にそうな顔をしていて焦った。

おいおい待て待て・・・?!

何でお前そんな追い詰められた表情してんの?!

俺はただちょっと気になったから聞いてみただけで、お前をどうこうしようとか思ってないぞ?!

子どもを苛めている気分になった俺は慌てて弁明しようとしたが、何を言ったらいいんだ?!




「・・・この世の中、中身が違うことなんて結構そこらに転がってたりするぞ?」

「・・・ぇ、」




困り果てた末に言い訳じみたことを溢すことになった。

いや、だって実際少なくとも俺が知ってるだけで3件だもんよ。

ゴロゴロしてるって言っても過言じゃないでしょ?

気にすんなと視線をやればジュニアはポカンと俺を見上げていた。

何言ってんのコイツみたいな目で見るの止めろよー!

俺だって多少は頭おかしいこと言ってる自覚あるんだからな!

だから今までこんな話誰にもしたことないし、手探り感満載でお前に話振ってるんだぞ?!




「俺は・・・、俺はっ」




苦しそうに未だ葛藤してるジュニアを見て仕方ないとも思う。

だってこんな荒唐無稽なことそう簡単に打ち明けられるものではない。

ここは大人が先に折れるべきだよな。

お前にだから言えるとっておきの話をしてやろう。

俺は俯いたジュニアの頭にぽんと手を置いて、屈んで視線を合わせた。

ビクリと肩を震わせた息子に微笑んで内緒話をするように顔を近付けた。




「・・・これは誰にも話したことがないんだが、実は俺もリボーンの世界への転生者だ」

「!!!!」




ガバリと俺を見上げた息子に悪戯が成功したように笑う。

どうだ、驚いたろう?

今までこんな頭の悪い話、誰にも聞かせられなかったし、正直俺は話せる仲間が出来て嬉しいんだ。

ニコニコとジュニアの頭を撫でると、彼は顔をくしゃくしゃにして身体を丸めて呻き出した。

こんな時でも俺に甘えない不器用な息子はズルズルとしゃがみ込んで膝を抱えて泣いていた。

言いたいことはたくさんあるだろうが、とりあえず泣いとけ。

俺は卵のように丸まっていたジュニアを抱き上げて胸に抱えると労わるように背中をトントンと叩いた。

徐々に身体から力が抜けて俺にヒシッとしがみ付いたジュニアはわんわんと泣き始めた。

それはもう初めてみるジュニアの盛大に取り乱した姿で、

俺はただひたすら泣きながら言えなかった話をたくさん話す息子を抱き締めて相槌を打ち続けた。









***








「・・・俺、本当にただ普通の中学生だったんだぁ」




泣き疲れてベッドに寝かせたジュニアが俺の手を離そうとしないので、俺は狭いシングルベッドで彼の添い寝をしている。

眠そうにポツリポツリと呟くジュニアの話に頷く。

こちらに来たのは中学に進学してすぐのことだったらしい。

原作知識は漫画好きの兄の本を一緒に読んでいたからある程度はあるということだった。




「最初はわけが分からなかったよ。だって身体は小さい頃に戻ってるし、なのにあの人小さな子どもにも容赦ないし」




そこからの苦労は想像に難くない。

ただ生きることに必死でここまで来たとジュニアは溢す。

うとうとと重い目蓋が閉じないように瞬きするジュニアは握っている俺の手に力を込める。




「・・・父さん、俺ね。ちゃんと名前あるんだよ。名付けたあの人も呼ばない名前だけどね」

「あぁ」

「でも、それでよかったんだぁ。名前で呼ばれたらあの世界を忘れる気がしてこわかったし」

「それでジュニア、か」




コクリと頷くジュニアは本当に眠そうに目蓋を震わせている。

寝ていいよと頭を撫でると彼は目を閉じたが、話すのは止めなかった。




「父さんあのね、俺こんな変なやつだけど、ここにいていい・・・?」

「当たり前だ。何馬鹿なことを言ってる。お前の中身が何だろうと俺の息子に違いはないだろう?」

「・・・うん。俺、やっていけるかな?」

「・・・当然だ。お前はこれからここで良いことも悪いことも経験していくんだよ」

「えぇ?そこは良いことだけでいいのに」

「甘えるな。それこそそんな人生、漫画の中だけだ」

「・・・そっか。俺、ここで生きていくんだ」




全く、何言ってるんだコイツは。

この世界で生まれ、この世界で生きていく。

漫画の世界だとか前世だとかに引き摺られて人生を無駄にするのは勿体ないと俺は思う。

人生は基本一度きりだ。

まあ俺達はちょっとしたバグにあったようなものではあるけど、次があるとも思えない。

環境や境遇がどうとかいろいろあるけれど、どうせなら今できることをして少しでもいい人生を送りたいじゃないか。

なのに5歳にしてもう人生達観してるとか早いだろ?

弱気なことを言い、守りに入っている息子に少々活を入れたら呑気に笑ってやがった。

ジュニアは笑って繋いだままの俺の手を引き寄せると額をくっ付けて言う。




父さん、俺ね、俺の名前はね、     って言うんだ・・・」




ジュニアは名前を俺に教えると満足そうな顔で静かに寝息を漏らした。

熟睡してる息子の乱れた髪を払い、教えてもらった名前に小さく笑う。

俺はお前の名前、実は知ってたよ。

だってその名前は彼女が遥か昔に、子どもに付けたいと言っていた名前だ。

お前は知らないだろうけど、彼女は間違いなくお前を愛しているよ。

もちろん俺もな、―――


* ひとやすみ *
・ご無沙汰してます。所用でバタバタしてて更新遅くなりました!
 ついにジュニアが名乗りました。兄様仲間が出来て良かったね!笑
 変換上手くできたでしょうか?他のブラウザでは未確認なのでおかしかったら
 教えてくださいませ!今後もこの新米親子を見守って下さると嬉しいです!!            (18/07/31)