ドリーム小説

俺に子供が居た。

父親の俺がその存在を今まで知らなかったことからして、物凄く訳ありな子供だ。

何せ名前が自称ジュニアという上に、なぜか並盛にはどうしても行きたくないと泣いて嫌がる。

そして俺はすごく嫌われているらしい。

全然近付いて来てくれない上に、ほとんど口を開かない。

一度彼女のもとに帰るかとも聞いてみたが、首を振って断られた。

これ、どうしたらいいの?!

重たい空気を孕んだまま、俺とジュニアは列車に乗って旅をしていた。

並盛に真っ直ぐ帰れない以上、どこかに拠点を作ろうとしたのだが、

そうすると俺を狙う荒くれ者達がやってきてジュニアに手を出そうとして乱闘になる。

ジュニアを確実に守れる拠点を俺単独で作れそうにはなかった。

その結果として、俺達は路銀を稼ぎながら旅をすることになったのだ。




「次の街で降りて仕事を探すぞ」




向かいの席で眠そうに目を擦っていたジュニアはコクリと頷いた。

出会ってから2週間も経つというのに全く態度が軟化しない子供を見て心底困る。

この逃げ惑うような生活はどう見ても5歳の身体には酷だ。

せめて俺との関係が負担にならないくらいにはしてやりたいのだが、どうすればいいのか見当もつかん。

俺、ホントに父親なんてできるのかな・・・。

列車を降りて少し離れた位置から付いてくるジュニアを確認しながら、ホテルを押さえる。

仕事を見付けるのは意外と簡単だ。

少し治安の悪い所を歩くとなぜかいつも向こうからやって来るのだ。

ホテルにジュニアを残してフラフラ歩いていると、チンピラが絡んできたのでいつも通り伸した。

仕事を探しているのだと言えば、彼らは喜んでいい護衛の仕事があると教えてくれた。

まぁこれが碌な仕事ではないのは分かっていたが、背に腹は代えられない。

話を聞きに奴らの仲間に会いに行ってみたが、大して強そうな奴はいなかったが、短期で護衛期間の交通費が出るらしい。

この仕事ジュニアと受けたら次の街にも行けて一石二鳥じゃね?

このレベルならジュニアの方が強いし、危険もそうないだろう。




「というわけだ」

「・・・わかった。仕事する」




ホテルに戻ってジュニアに話せば一つ返事で頷かれた。

俺が言うのもどうかと思うけど少しは内容を考慮してもいいと思うぞ?

だけどこの子供、どんな育ち方したのか動きはその辺のマフィアには負けないくらいだし、

俺の知らない内にピストルを手に入れて手入れを自分でしていたくらいだ。

これくらいで弱音を吐くとは思わなかったけど心配にはなる。






ジュニアを護衛に連れて行った時点で少し揉めはしたが、仕事自体は順調に進んだ。

俺達が護衛していたものが人なのか物なのかは知らないが、懸念していた襲撃もなく目的地に着いた。

安堵したのか周囲の空気が緩んできたのを感じながら、俺は皆に続いて建物に入ろうとしたジュニアを引き止めた。




「ジュニア、待て」




キョトンと見上げてくるジュニアを引き寄せて周囲を探る。

多分、少なくない数に見られてる。

建物を囲むような視線に何か嫌な予感がする。

薄く死ぬ気の炎を広げて探知すれば100を超える人間が建物を囲んでいた。

だが、何だ?襲撃には少し遠い位置取りな気がする。

狙撃か?いやそれなら何で全員が離れる必要がある?

そこまで考えた途端、俺は慌ててジュニアを担いで建物に背を向けて走り出した。

まずい!これは多分・・・!


――ドォォォンン!!


その瞬間、ものすごい爆音と爆風が背後で発生して俺達は炎に炙られながら吹き飛んだ。

瓦礫の破片の痛みと熱さを背中に感じながら、ジュニアを庇うように抱え込んで数メートル先へ転がり落ちた。

落下の衝撃にジュニアが呻いたが、大きな怪我はなさそうだ。

とはいえ、5歳児があちこちに擦り傷を作って血を流しているのを見るのは痛々しい。

ちらりと確認したが、背後の建物は爆破の影響で見る影もない。

離れていた気配は気が付けば、すぐ側まで来ていた。




「ジュニア。悪い、怪我させた」

「え?こんなのケガとは言えないけど・・・」




ジュニアは俺が何を言っているのか分からないとばかりに困惑していた。

敵影がはっきりしてくると、ジュニアはハッとして持っていたピストルを構えた。

それでも俺は、こんな小さな子供に怪我を負わせ、ましてやピストルなんて使わせるつもりは全くなかった。

仕事だって名前だけで、俺が全部肩代わりをするつもりだった。

俺達を囲み、明らかな敵意を見せる爆破犯に俺は心底ブチ切れていた。

苛立つ気持ちを抑えるように大きく息を吐いて、ジュニアの構えるピストルの銃口を掴んで下げさせる。




「俺がお前を育てると言ったんだ。幼い子供を危険に晒す気は微塵もない。大人しく守られてろ」




武器が使えることと、使いたいかどうかは別物だ。

掴んだ銃身が小さく震えているのを感じながら、可哀相な息子を見下ろす。

ずっと気付かなかったが、この子は戦わざるを得ない環境に身を置きながらも、戦うことをずっと怖がっていたのだ。

もっと早くに言ってやればよかった。

俺がお前を守るから、お前はもう戦わなくていいんだって。

まだ銃を掴む腕に力を込めているジュニアを宥めるように見つめると、瞳を揺らしながら擦れた声で言う。




「・・・俺、戦わないと、いけないんじゃないの?」




強くなれ。

そう言われ続けた子供が泣きそうな顔で俺を見上げてくる。

キツイな、これ・・・。

この子がこうなったのは全部俺のせいだ。

重く冷たい事実を受け止めながら目を閉じた俺は、銃をジュニアの手から取り上げて眼前の小さな頭を撫でた。




「お前は戦わなくていいんだ。いいから全部父さんに任せておけ」




ジュニアを瓦礫の陰に押し込んで、預かったピストルを持って数だけは多い敵を睨む。

悪いが今の俺は非常に機嫌が悪い。

幼い息子に傷を負わせたんだ、俺の八つ当たりに付き合ってもらうぞ!








これは俺の息子を怪我させた分!

これは彼女と息子に強さを求めて辛い生活をさせた分!

これは息子の存在を知らずのうのうと暮らしていた馬鹿な俺の分!

拳に一つ一つ言い訳を乗せて振るいまくる。

もうホントに腹が立って仕方ない!

100人以上とはいえ、この程度ならば全く問題はなかった。

憂さ晴らしに徹底的に叩き潰してやると意気込んで、気が付けば周囲には誰も立っていなかった。

・・・はぁ、俺本当に情けないな。

こんな父親、ダメだろ。

顔を覆って溜め息を吐くと、小さな足音が聞こえて振り返った。




「・・・すごい。めっちゃ強い」




呆然と呟くジュニアの目が初めて熱を持って俺を見ていた。

ダメダメな俺だけど、一先ずこの子を安心させることが先決だ。




「あぁ、俺は強い。だからお前が戦う必要はないな」

「・・・ホントに?俺、戦わなくていいの?」

「子供は守られるのが仕事だ」




するとジュニアは顔をくしゃくしゃにして、堰を切ったように泣き出した。

わぁわぁと声を上げて泣く子供に俺は少し安心しながら、抱き上げて背を優しく叩く。




「よく頑張ったな」

「うぁ、ひっく、ず、父さぁん、おれ、おれぇ・・・!」

「あぁ」




これからはこいつは俺が守る。

ただひたすら泣きながら何かを訴える息子を宥めるように揺らしながら俺はしばらくその温もりに浸っていた。


* ひとやすみ *
・いろいろ訳ありですが、ぎこちなくも頑張ってます。笑
 父親業も大変ですが兄様も頑張って父様やってます!笑
 そうなんだよ。うちの兄様実は強いんだよ。本人がポンコツだから分かり難いけど!笑
 子どもには見栄張れる小さい男ですが今後も見守ってやって下さい!                 (18/06/10)